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4:光る一本樹

 ふふ。いい買い物♪

「リムノ、嬉しそうだね」

 キッポが言った。自分でも顔がにまついちゃうのを抑えられない。

「だって。白魔道・灰魔道・黒魔道、全部揃ってて、充分に買えるお値段だったんだもん。少しずつ勉強して、師匠の弟子だったことに恥じない魔道士を目指すわ」

 ホントに。シワタネで見た魔道書とは比べ物にならないくらい、お手頃価格だったんだもの。全部初級レベルだけど、偏って覚えている魔道を補うに余りあるわ。今までの冒険から、黒魔道も覚えないといけないって分かってるし。今のわたしには、最高の魔道書。

「じゃあ、キッポも腹をすかしてるみたいだから、食って必要品を整えよう。いいか?」

「うん!」

「わたしも賛成」

 早く魔道書を開きたいけど、おなかが減ってるのも事実。山歩きの旅なんだから、しっかり食べて体力を付けておかないと。またルカスに先導してもらって、簡単な定食屋さんに入った。玄関も窓も、ガラスが無い。みんな開けっ放し。独特の香辛料と思われる匂いが、キツく店内に広がっている。奥の方の席にわたしたちは座った。

「どれ。じゃあ、オレがオススメを注文する。リムノもキッポも、初めてだから分からんだろ?」

「任せたわ」

「食べられるなら何でもいい。リムノ、食べる? ボク、食べたい」

「はいはい」

 キッポらしいやり取り。

 運ばれて来た食べ物は、初めて口にするものばかりだ。ピザのような生地に、香辛料たっぷりのソースを付けて食べるのが流儀らしい。辛かったけど、美味しい。キッポも大満足だったみたいね。

 食後のコーヒーを飲みながら、

「ねえルカス。『アルプラチノ』って、どういう意味なの?」

キッポが訊いた。わたしも知りたい。南の大陸独自の地名だから、込められている意味までは分からない。

「『アル』は『1つの』。『プラ』は『光る』。『チノ』は『大きな樹』。簡単に言うと、『光る一本樹』ってこった」

「樹の名前だったのね」

 本当に、異国・別の大陸に来ているって言う感慨が湧く。

「樹がある場所だったら、部落だってあるかもしれない。フォクスリングは樹に頼って生きてる感じだから」

 今までの旅を振り返る。確かにキッポたち、フォクスリングは林や森の中に部落を作っていたっけ。『森の民』だものね。キッポの生まれ育った部落が思い返される。暖かいご両親だったなあ……。

「今回は、っても、本当に久々だから分からんが、高原へ行くまでの途中、部落探しをしてみよう」

「うん!」

「よし。腹も膨れたし、いよいよ行くか?」

「そうね。出発しましょ」

 わたしたちは席を立ち、まだ見ぬ南の大陸に分け入っていくことにした。キッポが喜んでいるサイン、耳を縦にぴくぴくさせてる。今度の旅こそ、平和に終わらせたいなあ。出来れば、だけどね。


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