18:師匠のことば
焼け焦げた高原が、痛々しかった。さすがにもう、煙は立っていなかったけど。師匠は先に立って、お住まいだった場所へ歩みを進める。わたしたちもそれにならった。
「察知して難を逃れた。ルカス。ティアリアが何かを企んでおる」
――やっぱり。ティアリアさんだったんだ。
「ティアリアでしたか」
ルカスがつぶやいた。痛みを感じている表情で。
「少し話す。ルカスにもティアリアにも、魔道と剣技を交えた奥義は授けていないが、ティアリアはそれを狙っておるようじゃ。おそらくは。わしを無傷のまま捕まえて、探り出す腹じゃろう。この魔道は、その前哨戦。力を見せつけるつもりであろうよ。わしから首を垂れるようにと、な」
力を見せつける、か。確かに普通だったら。これほどの力があると分かったら、無条件で降参するだろう。でも。
「師匠。ティアリアはどこにいるか、お分かりになりますか?」
ルカスの問いかけに、
「この近く。波動を消しておるので、正確には分からんが。高原のそばにおる。それは間違い無い」
「――キッポ。分かるか?」
ルカスはキッポに訊いた。
「ごめん。ボクにも分からない。『アルプラチノ』に訊いてみる」
ポケットから宝珠を出して、
「――場所までは分からないって。ただ、『気を付けて』って言ってる。森が焼かれて哀しい、痛いって言ってるよ」
守のものすら分からないのね。そんな力を持っているティアリアさん。思わず震えが走った。そこまでして、師匠とルカスに対したいのかしら。
「わしは、この程度なら屈することは無い。どうしてもわしと接したければ、裏で魔道など使わず、正面から来い」
威圧感のこもったことば。重たい静寂が満ちる。




