17:ルカスの師匠
「めしいておる。姿は見えぬが。ルカスじゃな?」
「はい。幾久しく存じます」
――視力を失っていてさえ、この波動。さすが『剣の古強者』だわ。たった独りで森の中を歩いて来られるなんて。これだったら確かに、災厄が訪れる前に、避難出来たに違い無い。
「リムノ、キッポ。大丈夫だ、出て来ても」
ルカスが言った。この力の前では、わたしの魔道もキッポの魔法も、とてもじゃないけど敵わない。ひれ伏すしか無いだろうな。
「ドルイドの力を持ったキツネの坊やと、魔道を操る女子様の波動を感じる。ルカスと共にしておられるのかな?」
わたしとキッポは、『樹の内側』からルカスの師匠の前に出た。
「初めまして。旅を共にさせて頂いております。初級魔道士、リムノと申します」
「フォクスリングのドルイド、キッポです。初めまして」
キッポと共にご挨拶。
師匠は確かに年老いていたけど、それでも年齢が分からないくらい、すっくとしている。わたしたちが敵対するものとは違うと分かってもらえたのか、強かった波動が弱まり、大きな保護者の中にいるような、安堵感に包まれた。
「丁寧なご挨拶、痛み入りますぞ。ルカスとはずっと共に?」
わたしは、ルカスと出会ってからのことを、端的に伝えた。今では『家族以上の家族』であることも。つっかえつっかえだったけど、それでも納得してくれたみたい。これだけの力があるなら、『心理吸収』何て使わなくても、ココロの中までお見通しだろうな。もしかしたら魔道も、ドルイド魔法も使えるのかもしれない。わたしたちの波動をしっかりと読み取っている。
「小屋にまだ、集落のみなを避難させておる。先にわしだけ、高原へ戻る中途じゃ。来るか? ルカス」
「リムノ、キッポ。いいか?」
ルカスのい問いに、わたしとキッポはうなずいた。
とりあえずは、師匠の生存も確認できたし、滅んでしまったとは言え、高原で話すことが大切だと思った。ティアリアさんのことも、ちゃんと相談しないと。
わたしたちは今後のことをそれぞれ考えながら、高原へ戻った。




