表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

15:見ていたもの

「そっか……。そこを見て回るしかないかしら?」

 わたしがそう言うのとほぼ同時に、キッポが、

「ちょっと待って。――『アルプラチノ』が話してる。ボクに向かって話してる」

「――!?」

「はい。はい。宝珠ですね?」

 キッポはどこか遠くを見て、1人話しながら、ポケットから宝珠を出した。

「ドルイドとしてお願いします。『あなた』が見た、本当の出来事、光景を私に教えてください……。了!」

 白い光がスパークした。眩しくて目を開けていられない。光は輝き続けて……。

「ドルイドとして。私を選んでくださり、ありがとうございました」

 キッポがお礼を言った。目をゆっくりと開ける。何とも信じがたいことに、キッポが手にしている宝珠から光が出ていて、家屋の壁に鮮明な景色が映し出されていた。わたしは一目で分かった。これは高原が滅ぼされる前の光景だ。わたしが実際に見たのは焼け崩れた景色だけど、あらゆる部分に見覚えがあるもの。

「キッポ。――これって、高原の様子よね?」

「うん。『アルプラチノ』が見ていた景色だよ。先輩のドルイドじゃなくて、どうしてかボクを選んでくれたみたい。本当の光景を知らせること。――見ててね。続きがあるから」

 言われるまま、幻想的なドルイド魔法をわたしたちは見た。

 1人の老人が家屋から出て来て、集落の住人全員を集めた。これは……。

「師匠だ。間違いない」

 ルカスの言う通りだろう。師匠と思われる男性の老人が、背中に長剣を斜めに下げている。全員で7、8名だろうか。集落の人々が高原からいなくなる様子が映っている。その直後。炎の波が高原を飲み込んだ。おそらく。闇魔道の『豪炎(ブレイズ)』だろう。一瞬で高原が焦土と化した。火の手があちこちから上がり、煙が満ち、何も見えなくなった時点で映像は終わっていた。でも。肝心な魔道を使った人物、おそらくはティアリアさん、が映っていない。誰が高原を滅ぼしたのかは、分からないままだった。

「ドルイド魔法じゃないよ。きっと、魔道。リムノなら分かる?」

 キッポが言った。わたしはうなずく。

「たぶんだけどね。闇魔道の『豪炎』だと思うわ。今のわたしには、とてもじゃないけど扱えない魔道」

「魔道か。ティアリアかは分からないが、おそらくは」

「これだけの魔道を使えるなんて。もしティアリアさんだとしたら、ものすごい力の持ち主ね。わたしには、まだまだ使えない。そんなハイレベルの魔道だから」

 だって、ほんの数秒間で、高原を火の海にしたんだもの。信じられないレベルだわ。ルカスは、

『滅びの魔道に秀でていた』

って言うけど、ここまでの力だ。どんな魔道でも自在に操れるだろう。――そう。異形生物を召喚し、部落や村を襲わせることさえも。それにどんな意図があるのか、わたしにはまだ、分からないけどね。もしかしたら、暴走してしまっている復讐心から来ているのかもしれないし。――思わず、震えが走った。こんな力を持ったティアリアさん(おそらく、だけど)と、ルカスは戦おうとしているのね。お互いに愛し合ったのに。ルカスに宝石まで残したのに。それでも、今度会ったら戦うことしか残っていないなんて……。どうにかして、他の方法を探したいわ。

「ルカス。師匠をまずは探して。そして話しましょう。ティアリアさんとルカスが戦うなんて、あるべきことじゃないと思うの。――違っていたらごめんなさい。でも、師匠ならティアリアさんを説得してくれるんじゃないかって……。そんなことを考えちゃうわ」

 キッポも、

「師匠と会いたいんでしょ? ティアリアさんの前に、師匠を探してみた方がいいんじゃないかなあ」

と、同意した。ルカスはまた無精髭を抜くと、

「そうとも思うが……。師匠には、迷惑をかけたく、無いんだ。オレの勝手な考えとは分かっているがな。しかし、そうか。――師匠と会うことを、最優先にしても、いい、か」

考えながら話した。続けて、

「師匠なら、ティアリアのことも良くご存知だ。戦いを避けられるかもしれないな。もしかしたら、だが。――甘くは考えられないからな」

 それであっても。可能性を考えるのは、決してムダなことじゃないだろう。少なくとも、破滅の道に進むことだけは避けられると思う。ルカスが諦めてしまうこと。それは何とかしてでも止めて欲しい。もし。

 ――もし、ティアリアさんと戦うことになったら、わたしだって(おそらくはキッポもね)力を貸したい。レベルが全然違っても。だけど、ルカスのことだ。キッポがチップルと対峙したように、力を借りることを否むかもしれないけどね。

「師匠を探しましょ。とりあえずご健在なことは分かったんだから、そこから考え始めても遅く無いと思うの。ルカス?」

「そうだな。キッポがくれた薬草で疲れも癒えたし、心当たりを探してみるか。いいか、それで?」

「ボクもそれがいいと思う」

 わたしたちはうなずいた。ルカスのため。わたしたちのため。今こそ力を合わせましょ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ