11:「剣の古強者」
聖堂に集まったフォクスリングたちが、大きく息を吐いた。
ムリも無いわね。異形生物に襲われることはあっても、高原に火を付けられるとは、誰しも予想出来なかったことだろうから。わたしたちの知らせは、そこまでショッキングなことだったんだもの。
「老師。アルプラチノ高原には、一体何があったのですか?」
キッポが静寂を破った。老師はやっとのことと言う感じで、
「森林と『光る一本樹』。その周囲に小さな集落がありました。そこにルカス様の師匠も暮らしていらっしゃったのでしょう。他には何も無く、静かな高原でした」
そう返事をくれた。でも、何か理由が無ければ、火の手が起こるはずは無いわ。そんなわたしのココロを読んだように、ルカスが、
「リムノ。キッポも、皆様も。師匠は『剣の古強者』の称号を持つ、偉大な人物です。アルプラチノ高原にいらっしゃることは、知る者のみ知っている、秘匿情報でした。それを快く思わない人物もいたと思います。もしかしたら、今回の件はそのことが原因かもしれません。飽くまで想像の域を出ませんが……」
どよめきが広がる。老師も初めて知ったようだ。
「『剣の古強者』の存在は知っておりましたが。――そうですか。高原に」
「はい」
沈黙が訪れた。しばしのち老師が、
「まずは。消火を確認して、高原の様子を調べましょう。避難出来ていれば良いのですが、こればかりは行ってみないと分かりませんね。この部落のドルイドと共に、向かって頂けますか?」
「是非」
ルカスがわたしとキッポを見た。2人でうなずく。ここまで来たら、徹底的に調査してルカスの師匠の無事を確かめたい。もちろん、山火事が起こる前に、高原にいてくれていることが第一条件だけど。でも、ルカスの予想を信じたいわ。察知して避難してくれていると言うことを。




