夏の始まり
「ミーンミンミンミンミンミン・・・」
「・・・暑い・・・」
夏、夏だ。この茹だるような暑さ。紛れも無い夏だ。目がかすむ。七月初旬、この男は夏の暑さにうんざりしていた。暑さだけではない。
「ちくしょう、また咬まれた」
そう、蚊だ。暑い上に蚊が大量発生する夏をこの男は大嫌いだった。
「つーか俺はワキガなんだよ・・・」
切実だ。夏は特に汗をかき易くなるため、嫌な臭いを抑えるための切り札である制汗剤は欠かせない。
だがアレは学生にとってはなかなか高価な代物だ。懐にも大きな痛手を負うのは免れないだろう。
しかし、嫌なことばかりではない。
「早く夏休み始まらないかなぁ・・・」
そう、夏休みである。延べ40日にもなる大型連休だ。男女の距離がグッと縮まる季節でもある。それにしてもこの男、異常なほど独り言が多い。
「嗚呼、でも俺ワキガだしなぁ・・・るみちゃんと御近づきになりたいけど無理だろうなぁ・・・」
しかもネガティブだ。
「今年はどうしようかなぁ、何しようかなぁ。どっかいこうかなぁ。でも・・・外出たくないなぁ・・・汗かいちゃうし・・・みんな嫌な顔するだろうなぁ・・・」
なんだか少しかわいそうになるほどネガティブである。家で一人で体育座りをする18歳の後ろ姿は余りにも惨めだ。
スッ
と突然立ち上がる男。
「でもせっかくの夏休みだし楽しめるだけ楽しもう、やれるだけやろう!よーし・・・」
電話へと走る。ピポペポピ・・・プルルルルルルル・・・
「あー、もしもし?るみちゃん?俺だけど・・・」
夏は始まったばかりである。
投稿するために文字数増やしてたら初めよりテンポが悪くなってしまいました・・・。感想お待ちしています。明らかに投稿するには時期おかしいだろっていうのはご愛嬌ってことで・・・