現在・栞編−罪−
その後、私たちは ホテルに戻った。
私は 明かりを暗くした部屋で ひとり 小倉の夜景を眺めていた。
しっかり 今夜の 思い出を 目に焼き付けようと・・・・
彼は ベッドに横たわり、自分の携帯を見ていた。
奥さんから メールでも着ているのかな?
なぜか 悲しくは なかった。
「美月さん、見て、再結成だって!」
突然
彼は自分の携帯の記事を 私に 見せて 嬉しそうに言った。
それは 昔 付き合ってたころ、二人が 大好きだった バンドの 20年ぶりの 一夜限りの 再結成を知らせる 記事だった。
私たちは二人で喜んだ。
「あれから、20年 経つのね。」
「オレ チケット取るよ。でもさ、オレらも 似たようなもんだよな。」
「ほんとね。・・でも 彼らの再結成には きちんとした 意味もあるし、 私たちみたいに 喜ぶファンも いるじゃない。 私たちに例えるのは きっと違うよ。・・私たちは 単なるエゴ。」
「後悔してるの? ここに来たこと。」
「前沢くんは?」
「・・・」
「そうよね。私みたいな最低な人間は きっとこれから 幸せになんて なれないんだよ。」
そう言って、また 窓の外を見た。
夜景が 涙で にじむ。
「それは オレも 同罪だよ。」
彼は 私を 背中から ぎゅっと 抱きしめた。
そして ・・・
初めて彼と そうなってしまった 瞬間、一瞬 私が生まれた町のあの海が 頭に浮かんだ。
このまま 死んでしまってもいい とさえ 思った。
私の 中に 桜子伯母さんが生きているのかもしれないと 悟った。
皮肉な運命を感じながらも、尊と 離れたくなかった。
家族に背いた 私たちに どんな罰が下るのか・・・
罪悪感で 涙が止まらなかった。
幸せを感じないと言ったら それも 嘘だ。
尊は 泣いて背中を向けようとする私を 無理矢理自分のほうに 向けた。
彼もまた 苦しんでいるのかもしれない。
幸せになれる薬だと言われて 喉の奥が焼け付きそうなくらい 強いお酒を飲まされたような そんな感じがした。
こんなことは 続けていてはいけない。
これが 最初で 最後・・・。




