現在・栞編−今生の別れ−
沈み行く夕陽の中、私たちはただ 黙って 海をみていた。
私は 海を 見ていると 何度か その中に 引き込まれそうになった。
めまいがしそうになる。
尊は ぎゅっと 私の 手を握っていてくれた。
『私 たとえ このまま 死んでしまっても 悔いはないわ』
どこからか 声が聞こえる。
『お前は この先どんなことがあっても 生きていなきゃだめだ。 』
きっと 学思さんと 桜子伯母さんの 声だ。
なぜか わたしの 耳元で ささやく ように 聞こえる。
自然と 涙が 流れた。
「前沢くん、 二人とも 結ばれなくても きっと幸せだったのよね。」
「ああ、きっと。」
「私たちも きっと 幸せな人生を 送れるよね。離れていても・・・」
尊は 私を見つめた。
私は それを 横目で 感じながら 夜の暗い海に目をやる。
「来世って ほんとにあるんだな。だとしたら オレは また お前と 出会いたいよ。」
今まで 『美月さん』とあの頃のように 呼んでいた尊が 初めて 私を 『お前』と 呼んだ。
胸が キュンとなった。
「来世で めぐり逢ったら、 私のこと わかってくれる?」
「ああ、きっと わかる。オレたちが 出会ったように」
「うん。そんな気がしてきた。」
「その時は 今度こそ 一緒になろうな。」
私は 涙で 声にならなかった。
そして 私たちは 、学思と 桜子のように 浜辺でキスをした。
それは 二人よりも 少し大人の キスだった・・
私たちは おでこをくっつけ、 誓いあった。
「また 来世で」
「来世でね」
それが 私たちの 二度目の別れだった。
なぜか 淋しさを 感じない。
彼の背中が 遠く 小さくなって行くのに、
今生の別れをしたのに、
淋しくは なかった。
なぜか 私は 永遠に あの人を 得た 気がした。




