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猫と私  作者: 桜妃梨華
猫が私で私が猫で
2/2

 酷く混乱しながら、段々明るくなってくる視界に目を細める(気分)。 ・・・そう言えば猫って夜目利くんじゃなかったっけ?

 さっきは何気なく異世界と断定したけども、それは確かなのか。だけどこういうのってお約束な展開過ぎるような気も・・・


『りっちゃん、何事も経験だって』


 にっこりほわほわと笑う義母の顔が思い浮かび、思わず内心で溜め息。


  そうでしたね紗紀さん。


 やたら子供の頃から大人びていた私に、義母はそう言ってあちこち連れ回し様々な経験をさせてくれた。自分のこととなると異常なまでに面倒くさがりになる癖に。

 おかげで私は器用貧乏ということがわかった。つまり、大抵のことは難なく出来るが中々上達せず、最終的に三日坊主になる。前半は兎も角、後半は義母と同じ。 ただ、私はそれっきりになることが多いけど義母は一ヵ月後とか半年後とか、時間を空けてから再び始めることがあった。ちなみに義母はやたら凝り性の手先が中途半端に器用な人である。


 そんな義母は、日本列島を九つに分けた場合の地区内でそこそこ有名な国立教育大を卒業後三年間の講師生活を経て教師になるかと思えば何故か念願の司書になった。 いや、念願なので不思議ではないと言えばその通りなのだが、せっかく教師(しかも母校で)になれたのに彼女は敢えて司書の道を選んだのだ。まあそれでも就職先は学校図書館のほうだったけども。

 そんな彼女の読書の趣味は主にファンタジー。自分でも創作するくらいには大好きで、私もよく読ませてもらったりした。


 ドリームだの二次創作だのトリップだのSFだのベーコンレタスだの萌えだのツンデレだのポニテだの、夜な夜な(というか夜に限らず)語り尽くしたものである。


 それに、身の回りに完全に趣味が一致する友人がいないとのことで(少しずつしか一致しないらしい)、私は義母の良い話し相手だった。あまり自分から語る方ではない ―― というか、基本口下手な ―― 義母は、私に対してだけはよく喋る。ただ単に私が聞いているようで聞き流しているところがあるのも確かだけど。

 そんな義母と人生の半分以上を過ごし、おかげで妙にマニアっぽい知識も身についちゃったりしているが、まぁそんな語り合いのおかげで今現在、割と冷静になれていると言える。


  絶対、夢にしろ紗紀さんに教えてあげたら喜ぶもんなぁ・・・


 可能な限り、覚えておこう。と、主様、の腕の中から、だいぶ物が見えるようになった視界を見渡す。

 どうやら石造りの建物のようで、所々灰色の石壁が剥き出し。タペストリーとか、そういうもので覆われていて、イメージとしては洋風のお城の中って感じ。床にはたぶん、絨緞。しかも赤い。


  何かお金持ちっぽい感じ。・・・偏見かなぁ


   がちゃ


 身体を支えていた腕が片方離れ、扉が開かれた。 ・・・わぁ、ここも床がまっかっか。


「さて、ティナル。 もうすぐ食事の時間だから、少し待っていなさい」

「にゃぁ」


 返事をすると、くすりと笑う気配がして、床におろされる。 ひらひらしていてついつい追いたくなる白いローブの端を、衝動を堪えながら目で追った。

 男は部屋を出て行き、扉が閉まった。はあ、と息を吐く。


  ・・・どうしよう・・・


 とにかく、元に戻る方法。そして、帰る方法。 ・・・夢で寝て目覚めたりとか、しないかなぁ


 そうだったらいいのにな、といつかの童謡のフレーズが浮かび、現実逃避してる場合じゃないぞ自分、と内心叱咤する。

 取り敢えず、おろされた位置から動いてうろうろしてみた。部屋自体はそんなに広くない、と思うけど、猫の姿だからか何だか広そう、な気がする。

 部屋の様子は至ってシンプルで、よく見れば淡く赤・橙・黄系の明るい色が白とのストライプになっている壁紙、扉に背を向けて立って、左右の壁際にはオフホワイトの三人ぐらい座れそうなソファが一つずつ。正面には大きな窓が一つあって、今はどうやら夜らしい。閉められたカーテンの隙間から、明らかに昼間でない様子が見て取れる。 そして、部屋の中央には大きな丸テーブル。


  ・・・食事するための部屋・・・・とか?


 まさかな、と思いつつ更にうろうろ、うろうろ。

 そしたら、ノックもなしに突然扉が開いた。

余談:学校図書館(小中高、大学等に付属している図書館)と、公・私立図書館(国立や市立、私営(確かあったはず・・・←)の図書館)とでは必要な司書資格が違っています。ちゃんと知ってます。知ったのはここ数年の割と俄か知識ですが。

なんとなく誤解を受けるかなと思ったので余談。

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