表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/175

第83話 甘い夜

 花ちゃんを送り届け、それからうちに帰った。

 家に帰ると、母が元気に出迎えてくれて、

「もうお風呂に入っちゃう?」

と聞いてきた。

「あ、はい!」

 聖君は元気に返事をして、私を引きつれ、お風呂に入った。


 聖君は私の背中を、鼻歌交じりで洗ってくれている。

「花ちゃん、よかったよね」

 私がそう言うと、

「え?な~に?」

と聞いてきた。鼻歌が大きくて、聞こえなかったようだ。


「桃子ちゃんさ~~」

「え?」

 私の腕まで洗いながら、聖君は話しかけてきた。

「俺からのメール、本当にそんなに嬉しかったの?」

「うん」

 ああ、さっき、聞かれてたんだもんね。うわ、なんだか恥ずかしい。


「そっか~。俺にメールするときも、毎回悩んでたの?」

「え?うん。送ろうかどうしようか悩んで、やっぱり、送るのやめようとして、送信押しちゃって、慌てたことも何回もあるよ」

「え?なんで送るのやめようとしたの?」

 聖君は顔を覗き込んで聞いてきた。


「だって、すごく恥ずかしいこと、書いちゃったなって思って」

「あはは。そうだったんだ。桃子ちゃん、たまに、こっちが恥ずかしくなるくらいの、メールくれてたもんね」

「え?」

「俺、嬉しくて部屋でじたばたして、なかなか返せなかったり」


 ああ。そういえば、10分も20分も返信がなかったんだっけ。あきれてるのかなとかいろいろと、心配してたけど、聖君は照れて、ジタバタしてただけだったんだよね。

「桃子ちゃんからのメール、俺、いつも嬉しかったよ」

「ほんと?」

「うん。いっつもにやけながら、読んでた。だから、人のいるところでは、あまり読めなかったんだよね」


「やっぱり?合宿にいったとき、あまりメールくれなかったもんね」

「ああ。だって、部屋にそういうのに目ざとそうな、ルームメイトいたしさ」

「え?目ざとそうなって?」

「俺がにやけてメールなんかしてたら、思い切りひやかしたり、あれこれ聞いてきたりしそうなうるさそうなやつだよ」

「そうだったんだ」


「あまりメール来ないからって、寂しがってた?桃子ちゃん」

 聖君は私を後ろから抱きしめながら、聞いてきた。

「うん。寂しかったよ…」

 私がそう答えると、

「なんだよっ。寂しいってメールしてくれたらよかったのに」

と、もっとぎゅって力をいれて、抱きしめてきた。


「したよ。ライセンス取りに行ってたとき」

「あ、そういえば、くれたよね。あれも、めちゃ、嬉しかったな~~」

「そうだったの?」

「もちろんだよ。桃子ちゃんってば!今すぐいって、抱きしめたい!って俺思ってたもん」

 聖君はそう言うと、勝手に私の胸を洗い出した。


「なんだ、そうだったんだ。じゃあ、もっとそういうメール、すればよかったんだね、私」

「うん。そうだよ。遠慮なんていらなかったのに。だから、これからも、寂しいときにはメールしてね」

「え?うん」

「それから、いつもこうやって、俺に体預けててくれると、洗いやすくてありがたいな」


「え?」

 あ。胸?

「ちょ、ちょっと待って、聖君」

「え?何が?」

「洗い終わってるんだから、それ以上触ってこないで」

「…」


「聖君ってば、もうだめだってば」

「大きくなったかどうか、確かめてたのに」

「いいってば、そんなのしてくれなくても」

「ちぇ。桃子ちゃんの胸、やわらかくて、気持ちいいのに」

「○△×■!」

「何?今、なんて言った?」


 ああ、言葉にならなかった。あまりにも、恥ずかしいこと言ってくるから。

「ひ、聖君のスケベ親父!」

「うん、そうだよ。でも、桃子ちゃん、言ったじゃん。私にだけ、エッチでいてねって」

「そう言ったけど…」

「言ったよね?他の子には、絶対俺、しないから」

 当たり前だ~~。こんなこと…。


「…」

 私は胸を隠しながら、ふと思い出した。そうだった。藤井さんの胸、聖君、触っちゃったんだっけ。あれ、わざとじゃないにしろ、私はちょっと複雑だったな。


「聖君」

「ん?なに?」

 聖君は、私の背中の石鹸を流しながら、聞いてきた。

「私、今は胸大きいけど、また小さくなっちゃうよ」

「え?」


「そうしたら、もう、そんなにやわらかくなくなっちゃうよ」

「へ?」

「やっぱり、聖君も、大きい胸のほうがいいの?」

「ええ?!」

 聖君が慌てている。


「聖君もって何?誰か他にもそんなやついたの?」

「ううん。一般論。男の人って、やっぱりグラマーな女の子がいいんでしょ?」

「そ、それはどうかな?いろいろじゃないの?」

「聖君は?」

「俺?!」

 聖君の声が裏返った。


「俺は、その…」

 ちらっと聖君の顔を見た。あ、真っ赤だ。

「俺は、大きさとか、あんまりこだわらないっていうか」

「そうなの?」

 だって、今さっき、やわらかいから、気持ちいいって言ってたよね。とはさすがに、聞けないけど、そうなの?


「俺は、その…。も、桃子ちゃんの胸なら、大きくても、小さくても、どれもかわいいって言うか」

「え?」

 何それ!きゃ~~。あ、私もきっと、真っ赤だ。

「あ~~、何を言わせるんだよっ。もう!」

 聖君は真っ赤になったまま、バスタブに入りに行った。


 私は黙って、足とか、聖君が洗わなかった箇所を、自分で洗った。聖君は、まだ、何かぶつぶつ言っている。

 何かな?ちらっと聖君を見ると、まだ赤くなりながら、私を見て、

「俺、そんなにスケベだと思われてるのかな。俺、桃子ちゃんにしか興味ないのにな」

とそんなことを言っていた。


「私も、聖君にしか興味ないよ」

 私は思わず、そう言い返していた。

「え?何?」

 聖君は、ちょっとびっくりしながら、聞き返してきた。

「私も、聖君にしか興味ないの。かっこいいって思うのも、ハート射抜かれちゃうのも、聖君にだけなんだよね」


「う、うん」

 聖君はまた、赤くなった。

「それに、きっと……のも、それから、…のも」

「え?何?今、なんて言ったの?桃子ちゃん」

「なんでもない」


「え?なんだよ。ずるいよ。内緒ごとは無しだよ!」

「言わない」

「え?桃子ちゃん?!」

 聖君は、ものすごく聞きたそうにしている。そしてバシャッって、バスタブから出てきて、私の後ろから抱きしめてきて、

「何?今すぐに白状しなさい」

と言ってきた。


「白状しない。だって、恥ずかしいし」

「何、何、何。ますます俺、気になっちゃうでしょ?」

「聖君、髪の毛洗って」

「え?」

「髪の毛」


「嫌だ。言わないと洗わないよ」

「じゃ、自分で洗う」

「え?」

 聖君は、ぱっとシャワーを手に取り、私の髪を濡らしだした。

「髪洗ったら、絶対に教えてね」


 そう言うと、私の髪を洗い出した。

 私は何も答えなかった。教える気もなかったし。

 髪を洗い終え、私はさっさとバスタブに入りにいった。聖君は、自分の髪を豪快に洗うと、さっさとバスタブに入ってきて、私を後ろから抱きしめた。


「さて、白状してもらおうかな」

 くるくるっと私が首を横に振ると、

「約束が違うんじゃない?」

と聖君が言ってきた。


「私、約束してないもん」

「え?」

「さっき、何も返事してないもん」

「なんだよ~~。桃子ちゃんのいけず!」

 いけず?もう。ちびまるこちゃんか、聖君は…。


「ぎゅ~~~」

 聖君は私を抱きしめると、そのまま私の胸を触ってきた。

「だめだってば。聖君」

「…」

「だめ!」

「なんで?うずくから?」


「そうだよ~~」

「やめてあげない」

「もしかして、私が言わないから?」

「そう」

「…聖君のほうが意地悪だよ」


 あ、うなじにキスもしてくるし。きゃ~~。耳にまで。

「耳もだめ」

「感じちゃうから?」

「そう」

「じゃ、やめてあげない」


「もう~~。わかったよ~~。そういうことされて、感じるのも絶対に聖君にだけって言おうとしてたの」

「え?」

「でも、恥ずかしいから言うのやめたのに」

「…俺にだけ、感じるってこと?」

「そう」


「他の誰かに、こんなことされたこと…」

「ないっ!だから、きっとそうだろうって思っただけで」

「…ああ、びっくりした」

「それから」

「え?」


「あ、やっぱり、やめた」

「なんだよ!じゃ、また、キスしちゃうよ、俺」

「あ、だからね」

 しちゃうよ、じゃないよ。もう耳にキスしてるじゃない。うきゃ~~。

「こんなこと言ったら、きっと聖君、ひいちゃうもん」


「言ってみないとわからないよ、言ってみ?」

 聖君が耳元でそう言った。

「でも、きっと、びっくりする」

「いいよ、言ってみ?」

「…」

 うわ~~。言う前から恥ずかしくて、顔がほてる。


「あ、あのね」

「うん」

「私、男の人の体見て、セクシーだとか、きれいだって思って、うっとりしちゃうの、聖君にだけ」

「…」

 聖君がいきなり、黙り込んだ。


「それに、だ、抱かれたいって思っちゃうのも、聖君だけ」

「…。そんなのほかのやつ見て、そんなふうに思われたら、大変だよ」

 聖君はそんなことを言って、それから、ぎゅうって抱きしめてきた。

「桃子ちゃん」

「え?」

「俺に抱かれたいって思ったことあるの?」


「そ、そんな露骨に聞いてこないで!」

「え?だって、今、桃子ちゃんが言ったんだよ?抱かれたいって」

「そ、そ、そうだけど」

「あ、でも、前にも言ったことあったね」


「私、そんなこと言ったことないよ」

「うそ。だって、早くに俺に抱かれたいって前、言ったじゃん」

「そんなこと言ってない」

「言った」

「私は、早くに聖君のものになっちゃいたいって言ったの」


「同じだよ」

「同じじゃない」

「同じでしょ?結局俺に、抱かれたいってことでしょ?」

 うきゃ~。もう~~。それ、何度も言わないで~~。

「あ、すげ、真っ赤だ。うなじまで、真っ赤」


「もう、だから、言わないって言ったのに」

「なんで?俺、すげえ嬉しかったけど?」

「…」

「俺も桃子ちゃんしか、抱きたくないから」

 きゃ~~~。だから、そういうこと平気で口にしないでっ!

 私は、恥ずかしくて両手で顔を隠した。


「いまさら、そんな恥ずかしがらなくても」

 聖君は、また私の胸に触ってくる。

「胸、だめだってば」

「ちぇ」

 ちぇ、じゃないよ~~。


「今は?」

 聖君が耳元で聞いてきた。

「え?」

「今は俺に、抱かれたいって思ってないの?」

「…」

 きゃ~~。また露骨に聞いてきた。


「思ってないの?」

「今は思ってない」

「え?そうなの?」

「お風呂ではだめ」

「え?」


「ここではだめ。部屋に行ってからじゃないとだめ」

「…。部屋に行ったら、俺に抱かれたいの?」

「聖君、それ、抵抗ある」

「え?」

「その言葉」


「じゃ、なんて言ったらいい?」

「わ、わかんないけど」

「俺とエッチ…」

「それも、嫌だ~~」

「じゃあ、なんて言ったらいいのさ。俺と結ばれちゃう?とか?」


「それも、なんだか恥ずかしい」

「なんだよ~~。ああ、もういいや。とにかく風呂、さっさと出よう」

 聖君は、まず私を注意深くバスタブからだし、自分も出て、さっさと私を連れて、お風呂場を出た。そして、さっさと私の体を拭いている。


「桃子ちゃん、やっぱり、お腹出てきたね」

「うん」

「今度の検診では、どれだけ、大きくなってるんだろ、すげえ楽しみだよね」

「うん」

「ああ、凪の写真、早く見たい」

「…」

 聖君、本当に嬉しそうだ。


 ぎゅむ!思わず、聖君に抱きついた。

「何?桃子ちゃん」

「聖君、かわいいんだもん」

「へ?」

「聖君、大好き」

「うん、でも、裸で抱きしめられると、俺、ここでその気になっちゃうけど、いいの?」


「よくない!」

 思わず、私はぱっと聖君から離れた。そして、

「自分で体も拭くからいい」

とバスタオルを聖君から取り上げ、体を拭いた。

 ああ、危なかった。


 聖君は、リビングに髪をバスタオルで拭きながら出て行き、母と父に、

「お先に、すみませんでした」

とそう爽やかに言った。私はまだ、顔がほてっていて、さっさと2階にあがっていった。

 聖君は少し、父や母に何か話しかけられ、リビングで話をしてから、2階にあがってきた。


「桃子ちゅわ~~ん」

 部屋のドアを閉めると、突然、豹変。にやけた顔で、私に抱きついてくる。

 これ、なんでできるの?なんで、こうも切り替わりが早いの?

 ドライヤーで、私の髪をいつもの倍のスピードで乾かし、自分の髪も、豪快に乾かすと、ドライヤーをそのへんにほっぽり、聖君は私をベッドに押し倒した。


「ま、待って」

「え?」

「凪の日記は?」

「ああ、あとで書く」

「でも…、まだ、聖君の髪、半乾き」

「いいよ、別に」


「でも」

「じゃあ、やめちゃうよ?俺」

「え?」

「そんなに、あれこれ言ってくるなら、もう抱いてあげないよ?」

 だから~~。その言い方やめてってば。


「いいの?」

「…」

 聖君は私が黙っていると、ぱっと私から離れて、

「じゃ、今夜はよそう。俺、下でお父さんと話でもしてこようかな」

「え?」

「あ、そういえば、ひまわりちゃんが勉強教えてって言ってたんだっけ。今からでも、いいかな」

「え?」


 聖君はベッドから、降りようとして、また私をちらっと見た。

「まじで、俺、行っちゃうよ?」

「…」

 ああ、聖君の目、意地悪な目だ。そうやって、私が行かないでって言うのを、待ってる。

「いいんだよね?」

 ああ、そうやって、じらしてる。


「や、やだ」

「え?」

「聖君のほうが、絶対に意地悪だ」

「そんなこと言っていいの?俺、今夜は下の客間に寝ようかな」

「え?」

「そんで、しっぽと茶太郎を抱きながら寝るとしようかな~~」


 もう~~~。私は、今にもベッドから降りようとしている聖君に抱きついて、そのまま、押し倒した。

「あ、あれ?」

 聖君がびっくりしている。でも、そんなのおかまいなしに、聖君の上に乗っかり、思い切り抱きついた。


「俺、犯されちゃう?」

 もう~~。そんなこと言ってるし!

「でも、激しいのはだめだよ?凪のことも考えなくっちゃ、桃子ちゃん」

「もう!」

「え?」

「聖君のあほ!」


「あほって…」

 私は聖君の顔をじっと見た。聖君も黙り込み、私のことをじっと見た。

「桃子ちゃん…」

 聖君は私のことを、熱い視線で見ると、

「優しくしてね」

と、わざとはにかんでそう言った。


「もう~~~。聖君のあほ~~」

「あははは」 

 聖君は思い切り、かわいい笑顔で笑うと、ぐるっと私のことをベッドに寝かせて、私の上に覆いかぶさり、

「抱いていい?」

って聞いてきた。


「…」

 なんだか、今までずっと、からかわれて悔しい。こうなったら、嫌だって言ってみる?反撃してみる?でも…。

 聖君の顔を見た。聖君の熱い目を見てるだけで、とろけそうになっている、私…。

「聖君…」

「ん?」

「優しくしてね」

 私がそう言うと、聖君は、一瞬赤くなった。


「優しくするよ」

 聖君はそう、ものすごく優しい声で耳元でささやき、優しいキスをしてきた。

 わあ。耳、弱いのに、そんな優しい声で、そんなこと言われたら、とろけるなんてもんじゃないよ。溶けちゃうよ~~。


 聖君は、その夜、ずっと、優しく、好きだよ、愛してるよ、桃子ちゃんだけだよって、ささやいていてくれた。

 明日起きたら、私溶けてたらどうしようかな。

「聖君」

「ん?」

「私も、愛してるよ。聖君だけだよ」

「知ってるよ」

 聖君は、そう言ってまた、ものすごい優しいキスをしてくれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ