第79話 閉ざした思い
「中学のとき、同級生がモデルしてたんだ」
泣くのがおさまってきてから、花ちゃんがぽつりぽつりと話し出した。へえ、うちの中学でモデルしてた子なんていたのか。知らなかった。
「私の仲良かった子が、その子とも仲良かったから、モデルのショー見にこないかって誘われたの」
「…」
「そこで、籐也君を見て、かっこいいなって思ってファンになったの」
「そうだったんだ」
「モデルのショーだけじゃなくって、イベントみたいなのもあったりして、私たち、ちょくちょく行くようになって、帰りに話をしたり、手紙あげたり、プレゼントあげたりしてたんだ。私たちだけじゃなくて、何人かそういう女の子もいたし」
「うん」
「でも、籐也君は、芹香さんのことをねらってて、芹香さんがいると、すぐにそっちに行っちゃうし、まったくこっちなんて向いてくれないこともわかってた。だから、ファンでいいと思ってたの」
「うん」
「でも、芹香さんがモデル友達と、籐也なんて興味ない、いくら言い寄ってきても付き合う気もおきないって言ってたのを聞いちゃって、じゃあ、二人が付き合うことはないのかなって思って」
「うん」
「…それに…」
花ちゃんはしばらく黙った。床を見つめ、何かを思い出してるようだ。
「ホットレモネード持ってきたよ~~。花ちゃんも同じやつ」
聖君がそう言って、リビングに来た。
「はい、あったまるよ」
そう言って私と花ちゃんを見て、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう」
花ちゃんがお礼を言った。
「落ち着いた?」
聖君は花ちゃんの顔を覗き込んで、聞いた。
「え?うん」
花ちゃんは一瞬、赤くなった。
「ちゃんと泣けたんだ」
聖君が、花ちゃんの顔を見てくすって笑った。
「え?」
花ちゃんがさらに赤くなった。
「桃子ちゃんがいてくれて、泣けた?」
「う、うん」
「そっか。良かった。さっきは籐也のために泣くことないよなんて言っちゃったけど、あれは籐也がいたから。泣くのを我慢してるより、泣いちゃったほうが楽になれるよね?」
「うん」
「じゃ、これ、飲んであとはのんびりしてて。夕飯は食べていってね。母さんも花ちゃんの分まで夕飯作るって、張り切ってるからさ」
聖君はそう言うと、お店に戻っていった。
「聖君って、優しいね」
花ちゃんは、鼻をすすりながらそう言った。
「え?うん」
「桃子ちゃんにいつも、あんなふうなの?」
「聖君?うん。あんな感じ」
「は~~~。すごい。びっくりしちゃった。あんな優しい聖君はお初だ」
「は?」
「あ、桃子ちゃんに対しては見たことあるけど、優しさを100パーこっちに、向けられたの初めてだったから、ドキドキしちゃったよ。あ、私、ほら、男の人の免疫ないし、やっぱりあれだけのイケメンに、顔を覗き込まれたら、ドキッてしちゃうよね」
「花ちゃん、赤くなってた」
「ごめん!でも、聖君を好きにはならないから安心して」
「え?うん」
花ちゃんはレモネードをふうふうってしてから、一口飲んで、
「あ、甘いんだ。すっぱいのかと思っちゃった。おいしい」
と、私のほうを見て、にっこりとした。
「それ、落ち着くよね。なんだか体に染みわたるっていうか」
「うん」
「お店には置いてないの。でも、時々お母さんが作ってくれるの。聖君にもたまに、作ってくれてたんだって」
「そうなんだ。聖君のお母さんの愛がこもってるんだね~~」
「うん」
「優しいよね、聖君のお母さん。聖君も優しいし、ここは優しい人でいっぱいだね」
「あ、そういえば、杏樹ちゃん、いなかったな。もう2階に行ったのかな。杏樹ちゃんもかわいいし、優しいんだよ」
「へえ。お父さんも?」
「優しいよ」
「そうだよね。前に会ったことあるけど、若くてかっこいいしね」
花ちゃんは、もう一口ホットレモネードを飲んだ。
「いいよね、そんな優しくてあったかい家族」
「うん」
「桃子ちゃんは本当に、幸せ者だよね」
「うん!」
「は~~~あ。いいな」
「え?」
花ちゃんは、ぼんやりとどこかを見つめている。
「私もね、優しくて大事にしてくれるような、そんな彼氏がほしいんだ」
「うん」
「でも、どっかひねくれてるのよね、私」
「え?」
ひねくれてる?
「コーチを好きになったのは、きっとギャップがあったから」
「ああ、あのコーチは私もびっくりしたもん。冷たいし、笑わない人かと思ったら、そうじゃなかったし」
「うん。そうなの。そういうのに弱いみたい。あ、でも、そういうのってけっこうみんなもあるのかな。聖君ってさ、クールじゃない。あれでもし、一回でもさっきみたいに優しくされたら、一発で好きになっちゃうと思わない?」
「…。私は、冷たくされなくても、一発であの笑顔に惚れてしまったから、なんとも言えない」
「あ、そうか~」
花ちゃんはくすって笑って、
「桃ちゃんは素直でいいな」
とそうつぶやいた。
「花ちゃんもでしょ?コーチを好きだったときも、素直でかわいかったよ?」
「え?私が?」
「あ、私もなんだけどね、話してて赤くなったり、すごく嬉しそうだったり、顔に出るんだよね」
「…ばればれってこと?」
「うん、けっこうね」
「あ~~。じゃあ、さっき籐也君といたときも?」
「顔赤くなってたよ」
「それ、籐也君も気づいてるかな」
「さあ?俺は嫌われてるとか言っていたから、気づいてないんじゃないかな」
「…」
花ちゃんは黙り込んだ。
「なんで嫌われてるなんて、籐也君、言ってるの?」
「もしかすると、私が傷つけちゃったのかもしれない」
「え?でも、籐也君、自分が花ちゃんを傷つけたようなこと言ってなかった?」
「…。優しかったのに、冷たくされちゃったから…かな?」
「どういうこと?」
花ちゃんは、今度は手に持っているグラスをじっと見た。
「私ね」
「うん」
ぽつりと口を開き、花ちゃんは当時のことを振り返りながら、話をしてくれた。
「一回ね、イベントが終わって、二人きりで話す機会があったの」
「うん」
「私、そのときにも花を持っていったんだ」
「うん」
「それを受け取って、籐也君、いつもありがとうって言ってくれて。それから、高校に行くために受験勉強をしてるんだけど、両立って大変なんだって話をしてくれて」
「へえ」
「私たちはエスカレーター式の学校だし、受験勉強ってしなかったじゃない?中学受験っていっても、そんなに大変じゃなかったし」
「うん、まあね」
「籐也君はそれを、羨ましがってたけど、だけど、これからもモデルの仕事を続けられるかどうかとか、普通に高校生もしてみたいとか、そんな話をしてくれたの」
「悩んでたんだ、籐也君」
「私は、何を選ぶのも藤也君しだいなんだよなって思いながらも、モデルの仕事やめてほしくなかったから、がんばって、応援してるって言っちゃったの」
「そしたら?」
「籐也君、ありがとうって笑ってくれた。そうやって、いつも花ちゃんが応援してくれるから、がんばれるって」
「へ~~、なんだかいい雰囲気だったんだね」
「そ、そうなんだよ。そんなこと言われたから、舞い上がっちゃったの。でも、そんなのはさ、どのファンにも言ってたことだったんだよね」
「え?」
「私ね、単なるファンでいるよりも、もっと籐也君のそばにいたいなとか、思いを伝えたいなとか、欲が出てきちゃって」
「うん。そうだよね、やっぱりそういうのって、思うよね」
「桃ちゃんも?」
「うん。見てるだけでいいって思ってたのが、だんだんともっと仲良くなりたいとか思うようになっていったもん」
「そっか、そういうものか」
「うん」
「友達にそれを言ったら、勇気出して告白してみなって言われたの。応援してくれること喜んでくれてるってことは、脈ありかもよって」
「…」
「私、脈はあるかどうかわからなかったけど、自分の思いだけは伝えようかってそう思って、うん、告白してみるって、その友達に話してるところを、芹香さんに聞かれちゃったの」
「あ、さっきの、あれ…」
「うん。芹香さん、籐也に告白するの?へえって笑いながら言って、さっさとそのときはどこかに行っちゃったんだけど、次にショーを見に行ったら、ショーのあとで、二人でべったりくっついてて」
「え?」
まだ中学生だよね…。
「それで、二人が付き合ってるってことも、他の子から聞いて、私告白できなくなっちゃって」
「…。そっか~」
「その日の帰り、籐也君と芹香さんにばったり駅で会っちゃったの。籐也君、すごくよそよそしくって、芹香さんは籐也君にひっついてて、私、籐也と付き合うことにした。だって、籐也、しつこいんだもんとか言ってきて」
なんか、その言葉もムカってくるな~。
「私、ものすごくショックで、何も言わずに、電車に乗って帰ってきた」
「うん」
「…、そのあと、ショーを見に行くのもつらくなっちゃって、でも私、ずっと応援してるって言ったし、やっぱり応援はしていきたいしって思って、友達と見に行ってたんだ」
「うん」
「…だけど、帰りに会っても、籐也君が避けるようになっちゃったの」
「え?」
「ううん。避けてたんじゃないんだろうな。きっと芹香さんと付き合いだしたから、芹香さんといるようにしてたんだと思う」
「そっか~」
「だから、籐也君がモデルやめるっていうのも、知らなかったの」
「いつ知ったの?」
「バレンタインのイベントがあって、それに行ったときに、スタッフの人が言ってたのを偶然聞いた。私、確かめたくて、籐也君に聞きに行ったの」
「うん」
「…ちょうど、イベントが終わって、片付けてる最中で、芹香さんは着替えていたか何かでいなくって、籐也君が一人でいたから、勇気もって話しかけたの」
花ちゃんは、そのときのことを思い出したのか、ちょっと辛そうな顔をした。
「籐也君、モデルやめちゃうって本当?って聞いたら、ああ、本当って、すごく淡々と答えたの」
「…」
「ショックだった。もうモデルやめたら、私ファンでもいられなくなるし、応援もできないし、それどころか、ショーやイベントにも出ないって事は、会うこともなくなっちゃうんだって思って」
「そうだよね」
「泣きそうになった。でも、やめちゃうって決心したんだろうし、ここで泣けないって思って、高校は受かったの?って聞いたの」
「うん」
「発表はこれからだって言ってた。だけど、普通にこれからは高校生するよ、それも楽しみだなって笑ったから、そうだね、彼女もいるし、きっと楽しい高校生活になるねって私も笑ったんだ。どうにか、笑えてそう言えたの」
「うん」
あ、花ちゃん、今も泣きそうな顔してる。きっとそのときも、相当無理して笑ったんだろうな。
「でも、やっぱりつらくなって、私、へんなこと言っちゃったの」
「え?」
「普通の高校生になるんだから、もうファンでいるのはやめるね。モデル続けるなら、ずっと応援しようと思ってたけど、もうそんなのもいらないね。もう、終わりにするねって」
「うん」
「私、それが悲しいことだけど、もう接点もなくなるし、もう藤也君のことは本当にあきらめなくちゃって思ったからそう言ったの」
あ、なんだか、私もそんなことあったっけ。勝手にあきらめること選んで、聖君から離れようとして、怒られた。
「そうしたら、いきなり籐也君、冷たい口調で、すごく怖い顔して、女ってそんなもんだよなって」
「え?」
「モデルしてるときには、ちやほやするくせに、やめたら手のひら返したようになるんだ。それでまた、他のやつ見つけて、追っかけるんだろ?ずっと応援してますなんて、口先だけ、そんなうまいこと言ってさって、そう言われた」
「え~~~。それは違うって、ちゃんと言ったの?」
「言えなかった」
「え?」
「だって、言えないよ。会えなくなるのが悲しいとか、そんなこと」
「ど、どうして?」
「彼女でもないんだよ?私」
「そ、そうだけど」
「それに、籐也君だって、ずっと私を避けてたんだし」
「そうだけど、そんなふうに思われちゃったままで、よかったの?」
「私、そう言われたけど、泣くのだけはやめようって必死に笑顔作って、さよならしたの」
「…」
「多分、もう会えないだろうけど、元気でねって言って」
「うん」
「籐也君、何も言ってくれなかった」
「それっきり?」
「ううん。最後のショーは見に行った。あ、だけど、花と手紙はスタッフの人に渡してもらった。籐也君に会うのはつらいから、会わないで帰ってきた」
「そう…」
「手紙には、お疲れ様。高校生になっても、いろいろとがんばってねってそれだけ書いた」
「それでどうして、籐也君、嫌われたって思っちゃったの?」
「私が、きっとも応援もしないって言ったからじゃないかな。あのとき、すごくショックを受けた顔してたから」
「…」
自分から、花ちゃんのことを避けたのに?なんだか勝手だな。第一、モデルやめたんだから、応援されられるだろうとか、ファンでいてくれるだろうとか思うほうがおかしくない?
「…桃ちゃん」
「え?」
「まだ、私、嫌われてるかな」
「え?なんで花ちゃんが嫌われちゃうの?」
「何かきっと、嫌われるようなことしたんだよね、私」
「してないよ。嫌ってなんていないと思うよ」
「でも、私には手なんて出さないから安心してって、そういうふうにどうして言うのかな」
「さあ?あ、でもファンの子には手を出さないって言ってたじゃない。そういうことなんじゃないの?」
「…」
「花ちゃん?」
また花ちゃんが泣き出した。
「ファンでいるのも、もうつらいかも」
「え?」
「私、期待しちゃうもん。だから、もう近づかない」
「…」
「ライブも行くの迷ったの。でも会いたかった。会って話をしてみて、もしかしたら、単なるファンでいられるかなってそう思ったんだ。だって、籐也君もまるで、私がモデルのショーを見に行き始めたときみたいに接してきてくれたから。久しぶりだねって笑って言ってくれて、私すごく嬉しくなっちゃって」
「あれ?そういえば、籐也君が、私をねらってるとか、友情劇?そういうの嫌いとか言ってたとき、花ちゃん、籐也君に、そういうところ変わらないねって言ってなかった?昔からそうだったの?」
「あ、うん。籐也君、モデル仲間とまだ芹香さんと付き合う前にね、芹香を落としてみせる、いくらかける?とかそんなこと言って、笑ってたことがあって」
「ひどい」
「それから、私と友達がやたらと仲良くしてると、見せかけだけの友情だろ?そういうのってけっこう、うざいよねって冷めた口調で言ってたの」
「そんな人を花ちゃん、好きだったの?」
「そういうところ、嫌いだったの。でも、私には優しい言葉かけてくれたりするから、私いっつも、勘違いしてたんだよね。すごく馬鹿だよね、今思うとさ」
「…」
「女子高で免疫ないからかな~。優しくされて、笑ってくれると、それだけで舞い上がってた」
「そうだよね。優しくされたら嬉しいもんね」
「聖君の桃ちゃんに対する優しさは、本物だったけどね」
「籐也君は違うの?」
「わからない」
「…そうだね。私もあの人、何が本音で本気か、わからないかも」
「桃ちゃんもそう思う?」
「うん。私のこともからかってると思う。それに聖君に対しての対抗意識かもなって、最近は思うんだ」
「対抗意識?」
「聖君、完璧だもん。男の人から見ても嫉妬したりするんじゃない?」
「かもね~」
花ちゃんは泣き止んでいた。
「は~~~。もう、籐也君のことは忘れたと思ってたのにな」
「ほんと?でも、○○君て、籐也君に似てない?」
「あ~~~!桃ちゃんに絶対それ、言われると思った~~」
花ちゃんは顔を真っ赤にさせた。
「○○君がデビューしたとき、籐也君かと思ったんだ。でも、すぐに違うってわかったけど、それこそ、今度は本当のファンどまりにして、楽しもうって思っちゃったのよね」
「なるほど」
「でもだめだ。本物にあったら、こんなにもぐらついちゃった」
「…そっか」
「ううん、大丈夫。きっと昔の思いに浸ってるだけだよ。桃ちゃん、心配しないで。すぐに籐也君のことは忘れるから」
「じゃ、もう応援もしないの?」
「…遠くから、応援する」
「どうやって?」
「CD買ったりとか」
「…それでいいの?」
「だって、近づいたらきっと私、また…」
うわ。また泣きそうだ。もう~~、花ちゃんは、まだまだ籐也君が好きなんじゃないのかな~~。
「馬鹿でしょ。3年もたってるのにね」
花ちゃんはそう言って、鼻をすすった。
「ねえ、花ちゃん、コーチを好きになったとき、身近で好きになった人は初めてって言ってなかったっけ?」
「うん、言った」
「でも、籐也君のこと、好きだったんでしょ?」
「だと思う。でも、自分であれはただのファンってだけだったんだって、そう思い込んでた」
「なんで?」
「だって、そう思ったほうが楽だから」
「え?」
「思い出すとつらかったから」
花ちゃんは、目を潤ませている。
「花ちゃん」
「え?」
「もしかして、思いを告げられなかったこととか、籐也君を傷つけて悪かったとか、そういう思いをずっと心にしまったままでいるんじゃない?」
「私が?」
「それでつらいんじゃない?忘れようとしてもできないんじゃない?」
「そ、そうかも」
「だったら、今がそのチャンスだよ」
「なんの?」
「思いを告げる」
「え?」
「謝れば?そして本当のことを言ったらいいよ」
「本当のこと?」
「離れるのが悲しくて、応援するのはやめるって言ったんだって。本当はずっと思っていたかったって。それが本音でしょ?」
「うん」
「言おう!」
「今さらだよ」
「でも、花ちゃんの心にはまだ、その気持ちがあるんでしょ?」
「うん」
「一回、それを出しちゃおうよ。そうしないと前に進めない気がする」
「桃ちゃん」
「え?」
「強いね」
「そんなことない。でも、経験からだよ」
「え?」
「本音言わないでしまっておくと、つらくなるのは自分だよ?ね?相手がどう思うかとか、そういうのあまり考えないで。ううん、きっと心開いて本音言ったほうが、籐也君だって、すっきりすると思うよ?」
「そ、そうかな」
「そうするためにまた出会ったんだって、そんな気がしない?」
「え?」
「全部必然」
「あ、前に聖君がお姉ちゃんのときに話してた」
「そう!」
「そっか。そうだよね、私もそんな気がしてきた」
「じゃ、行こう。きっとまだ籐也君いるよ」
「え?」
「お店にいるよ」
「今?今言うってこと?」
「今を逃していつ言うの?」
「…」
花ちゃんは目を丸くしている。そんな花ちゃんの腕を私はつかんだ。
花ちゃんが、前の恋とこれで、さよならできる。そしてきっと、新しい世界に一歩踏み出せるんだよ。
そんな思いで私は、花ちゃんの手をとって、お店に向かっていた。