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第7話 大事な瞬間

 ふ…。夜中目が覚めた。目を開けると、目の前に聖君の顔があった。そして聖君の息が、私の頬にかかっていた。

 すう、すう…。今日も、すごく一定したリズムの寝息だな~。


 暑くって、タオルケットを外した。もうエアコン、切れたんだな。聖君は暑くないのかなって思って、見てみると、しっかりとパジャマを脱ぎ捨て、Tシャツとパンツになっていた。

 いつの間に…。でも、パンツは履いていてくれて助かった。


 聖君はまだ、私に抱きついている。腕がちょっと重い。でも、その重さも嬉しい。

 お腹が大きくなってきたら、もう、こんなふうに抱き合っては眠れないのかな。

 赤ちゃんが生まれたら、こんなに静かに寝る夜もなくなっちゃうんだろうか。


 聖君の鼻を指でなぞった。相変わらず、綺麗な線をしている。眉毛も形よくって、まつげも長くって、肌も綺麗で…。

 どこに見惚れるところがあるのかって昨日、そんなこと言ってたっけ。でも、やっぱり全部、全部だよ。聖君。


 おでこにかかる前髪をあげた。可愛いおでこが見えた。そっとキスをした。ものすごく愛しさがこみ上げてくる。

 この、愛しい時間を大切にしたい。こうやって、かみしめて、味わって…。


 また私は目を閉じた。そしていつの間にか、夢の中にいた。

 夢の中で、私は聖君といた。ここは、どこかな。海かな。浜辺かな。

 後ろから、菜摘と葉君が来た。4人で、楽しく話を始めた。


 桐太がそこに突然現れた。聖君と肩を組み、笑っている。聖君も笑っている。すごく幸せな光景だ。

 私も、幸せだなって浸っていると、いきなり、聖君が遠くを見つめ、手を振った。

「麦ちゃん!」

 麦さん?

 聖君は、みんなの輪から離れて、麦さんのところに駆けていった。そして、二人で仲よさそうに笑っている。

 そしてそのまま、二人でどこかへ消えてしまった。


「聖君!待って!」

 ぐにっ!いきなり私の手を誰かが掴んだ。

 え?

 目を覚ますと、聖君が私の顔のまん前で、私を見ている。

「あ、あれ?」

「どんな夢見てたの?」

 聖君が聞いてきた。


「え?」

 私はまだ、ここがどこで、どうなってるのかが把握できない。

「あれ?ここ」

「桃子ちゃんの部屋だよ」

 きょろきょろと見回して、ようやく、ああ、聖君と一緒に住みだしたんだっけと、状況を把握できた。


「で、どんな夢?」

「私、何か言ってた?」

「聖君、待ってって言って、手を伸ばしてた。だから、俺ならここだよって、手を掴んだんだけど」

「…」

「どんな夢?俺がどこかに行く夢?」


「覚えてない」

「ほんと?」

「ぼんやりなら…。浜辺にいたような気がする」

「ふうん」

 うそだ。本当は覚えている。でも言い出しにくい。まさか、聖君が麦さんとどこかに行く夢だなんて。


「おはよう。もう、7時だけど、起きる?」

 聖君が聞いてきた。

「また、起こせなかった」

「え?」

「聖君より先に起きて、おはよう、聖君って起こそうと思ってたのに」


「あはは。そうなんだ。大丈夫だよ。そのうちそんな日も来るから」

 そう言うと、聖君はさっとベッドから降りようとした。でも、後ろから私は抱きついてしまった。

「え?どうしたの?」

「ううん」

 ぎゅ!聖君が去っていく夢を見たからかな。抱きつきたくなった。


 聖君はしばらくそのままでいた。それから、抱きついた私の両腕を握ってきた。そして、その腕を自分から離すと、私の方を向き、ぎゅむって抱きしめてきた。

 抱きしめられて、ものすごく安心している私がいる。


「もしかして、桃子ちゃん、こう思ってる?」

「え?」

「今日はどこにも行かないで、ずっとそばにいて」

「へ?」

「でも、ごめんね。バイト行ってこなくっちゃ。桃子ちゃんのこと、一人置いていくのは、俺も気が引けるんだけど」


「……」

 まだ何も言ってないんだけどな。

「でも、俺もね、このまま桃子ちゃんとずっと、一緒にいたいんだ。本当は」

「う、うん」

「だけど、そうもいかないし」

「う、うん」


 どうしよう。聖君、一人で盛り上がってるよ。

「でも、明日は水曜だから、お店も休みだし、俺、ずっと桃子ちゃんと一緒にいられるよ」

「え?あ、そうか」

「一日、いちゃついていようね?」

「…え?」

「でへへ」

 でへへって…。聖君の顔を見たら、思い切りにやついていた。


 それから私から離れると、聖君は自分の持ってきたバッグからTシャツを出し、着替えを始めて、ジーンズを履こうとして動作がとまり、

「いいな~~。新婚って」

と言って、またにやけていた。

「まさかな~~。桃子ちゃんから、行かないでって、抱きついてくるとは思わなかったな~~」


 行かないでとは言ってないんだけどな。どこから、そうなっちゃったんだろうな。

 聖君はジーンズを履いて、

「あ、俺のパンツ姿、じっと見てた?」

と私の方を見て、聞いてきた。


「え?」

 ドキ~~~!そういえば、直視していたかも。きゃわ~~~。恥ずかしい。

 真っ赤になると、

「あ、桃子ちゃん、真っ赤だ。おもしれ~~」

と笑っていた。

「パンツ見られたの、俺なのに~~」

 ああ、またこれ、面白がってるな…。


 聖君は、

「先に下に下りてるね」

と言って、さっさとドアを開け、一階に下りていった。ああ、相変わらず、朝からテンションが高い。なんて寝起きのよさだ。


 私はいつのもごとく、ベッドの上でしばらくぼ~~ってしてから、着替えをして、一階に下りた。バスルームに行くと、鼻歌交じりで聖君は顔を洗っていた。ああ、超ご機嫌だ。

 そしてこれまた、いつものごとく、私は鏡を見て、ショックを受けていた。

「ああ、髪が爆発してる…」


 口に出して言ってしまうと、それを聞いてた聖君が、

「可愛いよね」

とぼそって言った。

「え?!この頭が?」

「うん」

「……」

 聖君は目を細めて、嬉しそうに見ている。やっぱりこの人は、変態に違いない。


 先に聖君は、ダイニングに行った。私も髪をとかし、顔を洗って、ダイニングに行った。もうすでに母は起きていて、朝食を作っていた。

「桃子、何が食べられる?」

「トマト」

「それだけ?サンドイッチも作ったんだけど、どう?あ、聖君も、サンドイッチでいい?」

「はい」


 聖君はにっこにっこで、席に着いた。

「トマトのサンドイッチと、卵のと、ハムのと…」

 母がそう言いながら、サンドイッチをテーブルに持ってきた。

「じゃ、トマトのだけもらう」

 私も席に着き、いただきますと聖君と一緒に、手を合わせ、食べだした。


「あ、食べれそう」

 私はそのまま、ぺろりとサンドイッチを食べた。聖君もめちゃくちゃ、嬉しそうに目を細め、

「うめ~」

と言いながら食べていた。

「ほんとだ。聖君って、美味しそうに食べるのね」

と母が感心した。


「え?」

「桃子が、聖君はなんだって、美味しそうに食べるから、好物がわからないって言ってたのよ」

「あ、俺の好物ですか?なんでも好きですけど、やっぱ、肉かな」

 あ、そういえば、肉が好きだって言ってたっけね。がっつり食えるのがいいって。


「あら、そうなの?じゃ、今夜は何か肉のお料理」

「店のバイトがある日は、食ってきちゃうからいいです」

「そう?」

「明日は定休日だから、明日の夜ご飯はお願いします」

「あ、そうね。水曜は定休日よね。わかったわ」


 母はそう言うと、聖君にコーヒーを淹れてあげて、自分も席に着き、サンドイッチを食べだした。

「今日は何時から行くの?」

 母が聞いた。

「今日は昼間、朱実ちゃん、来れないし、俺が出ないとならなくって。10時には、ここを出ないと…」

「朱実ちゃんっていうのは、バイトの子?」

「はい」


「いくつ?」

「俺とタメです」

「可愛い?」

「お母さん!」

 また始まった。


「あはは。大丈夫です。朱実ちゃん、もうすっかり俺のことはあきらめてるし。なんか、好きな人ができたって言ってたし」

「っていうことは、聖君が好きだったの?」

「あ、前は。でも、桃子ちゃんがいるからって、あきらめてくれたから」

「そう」


 母はもう一切れ、サンドイッチを食べると、

「バイトの子はその子だけ?」

と聖君に聞いた。

「はい。でも今は、サークルの仲間が、手伝ってくれてて」

「ああ、副部長さんだっけ」

「はい。それともう一人いて、交互に来てくれてます」


「今日はもう一人の方?」

「はい、11時から出れるって言ってました」

「…どんな子?」

「え?えっと、どんな子って言われても、やっぱりタメで」

「可愛い?」

「う~~ん?」

 聖君は首をかしげた。


「可愛くないの?」

「どうかな~~?すみません、俺、その辺がよくわかんなくって」

「よくわかんないって?」

 母が不思議そうに聞いた。

「高校の頃、学校で1番可愛いだろうって子、可愛いってわからなかったから。基樹にすげえ、驚かれて」

「え?そうなの?何、聖君って女の子が可愛いとか、わからないわけ?」

「はい」


「可愛いって思ったことないの?!」

 母はかなり驚いていた。

「いや、そういうわけじゃ…」

 聖君はたじろいでいたが、頭をぼりって掻くと、

「あの、どうやら、桃子ちゃんと付き合うようになったら、他の子がみんな、どうでもいいように見えるようになっちゃったみたいで…」

とぼそって言った。


「あら、まあ!」

 母はちょっと顔を赤らめた。

「やっぱり聖君って」

と、母が言いかけてちょっと間をあけた。

「変態ですか?」

 聖君がそう聞くと、

「いいえ、桃子一筋なのねって思って」

 母はそう答えた。それを聞き、聖君は顔を赤くしていた。


「じゃ、今日来る子も、どうでもいいわけね?」

「あ、はい。なんか元気のいい子で、話しやすいですけど。あ、ひまわりちゃんとか、杏樹とか、菜摘っぽいかな、どっちかって言うと」

「じゃ、まったく桃子と正反対?」


「ああ、そうですね。まったく逆かも。アウトドア派だし、やたら元気だし、背も高くって、まっくろで、スポーツもがんがんにできて、強気で、負けず嫌いですね」

「へ~~。よく性格わかってるのね」

「え?ああ。なんか合宿で年中、一緒だったし、今も年中店で会ってるから」

 麦さんのことだよね。そこまで、仲良くなっちゃったんだ。


「そうなの。仲はいいのね」

 母もなんとなく、それを感じたのか、そんなことをつぶやいた。

「はい。あ、でも、まじで友達感覚ですから」

 聖君はそう言ってから、私をちらっと見た。

 やばい。私は、仲がいいってのに動揺して、顔が暗くなってる。聖君にそれ、きっとばれてる。


「聖君の好みの子だったりしないの?」

 母がいきなりそう聞いた。

「は?!」

 聖君が慌てて、母を見た。

「違うの?」

「違いますよ。だって、俺の好みって、桃子ちゃん…」

 聖君はそう言いかけて、顔を赤くした。それ、前にも言ってたな。だけど、その前は、きっと麦さんみたいな子が好みだったんじゃないのかな。


「桃子がタイプ?そうなの?」

 母が念を押すように聞いた。

「そうです。だから、好みとまったく逆なんで、大丈夫です」

「じゃ、桃子に似てる子がいたら?気になっちゃうの?」

「え?いいえ。まったく同じ子なんていないし。っていうか、だから、俺は…その」

 聖君は、しばらく黙り込んで、

「ほんと、桃子ちゃんだけなんで、大丈夫です」

とかなり照れまくりながら、そう言った。


 言ってから頭を掻き、それから顔を手であおいでいた。きっと、熱くなっちゃったんだろうな~。

「そう、良かった。桃子、安心ね」

「え?」

「心配だったでしょ?」

「う、うん」  

 なんでわかったんだ。


 聖君は、手伝いますと言って、洗い物をし始めた。

「お父さんは、まだですか?」

 聖君が聞くと、

「もう会社に行ったわよ。今日は朝早くから出張ですって。6時半には出て行ったわね」

と母が、聖君が洗ったお皿を布きんで拭きながら答えた。

「え?そうなんですか?早いですね」

「こんなことざらよ、ざら」

「そうか~~」

 聖君は、本気で驚いていた。


「ひまわりちゃんは?」

「あの子はまだ寝てるわよ。昨日も遅くまで、ゲームしていたし。でも、聖君がいるから、そろそろ起きてくるんじゃない?いつもなら昼近くまで寝てるけどね」

「え?昼?」

「そうよ~~。今度なんか言ってやって」

 聖君は、また本気で驚いていた。


「じゃ、家族がそろうのって」

「そうそうないわね」

「そうなんすか」

「聖君のところはいつも、夕飯とか一緒に食べてるの?」

「う~~ん、ばらばらのときもあります。たいていが、父さんと杏樹が先に食べて、あとから、俺と母さんですね。夜、パートさんがいて、店がすいていたら、みんなで食べられるんですけど」


「ああ、そうよね。お店してるんだものねえ」

「でも、父さんは基本、家で仕事してるし、母さんも一日店にいるから、家にいるのと一緒だし、だから、まったく顔をあわせないとか、そんなの絶対にないですね」

「そうか~。じゃ、うちみたいなのは、聖君から見たら、異常なのね」

「い、異常とは思いませんけど、ちょっとびっくり」


「ひまわりが聖君の家を、羨ましがるわけだ。あ、起きてきた」

「え?」

 ドタドタドタ!けたたましい音とともに、ひまわりが起きてきた。

「いた!お兄ちゃん、良かった」

 おはようも言わず、いきなりそれ?


「おはよう、ひまわりちゃん」

 聖君が、さわやかに挨拶をすると、

「おはよう、お兄ちゃん、まだいるよね?まだだよね?行くの」

と焦って聞いた。

「うん、10時までいる」

「良かった~~」


 ひまわりは安心して、顔を洗いに行った。なんで、そんなに聖君にいてほしがるのかな~~。

 聖君はね、私の旦那様なんだからね!ああ、言いたい。言ってみたい。いっそ、言ってみようかしら。でも、恥ずかしい!


 聖君は、洗い物を終わらせた。

「ありがとう、聖君、助かった。ほんと、ひまわりに聖君の爪の垢でも煎じて飲ませたいわ。ほんと、手伝いもしないで、寝てばっかりなんだから」 

 母は、ぶつくさ言いながら、最後に残ったコーヒーカップを戸棚に閉まった。


「ちょっと、庭に出てみていいですか?」

と聖君は、母に聞いた。

「いいわよ~」

 そう言われ、聖君は靴を履き、庭に行った。私もあとからくっついていった。

「あ、茶太郎だ」

 茶太郎が、庭のポーチで、寝転がっていた。


「しっぽは?」

「多分、車の下」

 聖君が車を見に行くと、車の下にやっぱりしっぽがいた。

「本当だ~~。しっぽ~~。俺のこと覚えてる?」

 聖君は嬉しそうに目を細めた。


「そういえば、もう1台、ここに車置けるから、この辺の、自転車や、物置を週末にでもどけるって、お父さんが言ってたよ。それで、ここに聖君の車を置いたらいいって」

「まじで?」

「それか、お父さん、あまり車乗らないし、この車を使ったらどうかって」

「え?それ、すげえ助かるかも。父さん、俺が乗ってきちゃうと、車使えなくなるからさ」


「じゃ、そうしたら?」

「まじで、いいのかな」

「うん。お父さん、本当に乗らないもん。車って、ある程度乗っていたほうがいいんでしょ?」

「うん、そうだね」


 聖君はそう言うと、空を見上げて、

「今日も暑くなりそうだな~~」

と、伸びをした。

「ね。調子どう?散歩行かない?桃子ちゃん」

「ひまわりが、聖君がいなくなったら怒りそう」

「あはは、ちょっとだけだよ。ほら、駅までの道に公園あるじゃん、あそこに行きたい」

「いいよ」

 聖君とそのまま、公園に向かった。


「手、つなぐ?」

「うん」

 私は手をつなごうとして、腕を組んだ。

「あ、あれ?」

 聖君はちょっと、驚いてから、手をジーンズのポッケに入れた。


「もう聖君と会って、3年目だね」

「うん、そうだね。2年前の夏、江ノ島の海で会ったんだもんね」

「うん。海の家で一目惚れして。まさか、そのときは、結婚しちゃうなんて思ってもみなかった」

「あはは、そうだね」


 聖君は、ゆっくりと歩いてくれた。

「あれから、なんやかんやと、いろいろとあったよね」

「うん」

「俺も、人生最大のピンチを、桃子ちゃんのおかげで、乗り越えられたし」

「え~~?おおげさだよ」


「おおげさじゃないよ。実の父親と思ってたのに、違ってたって、けっこう衝撃的でしょ?ドラマになりそうだよ。それも、血のつながった妹を好きになっちゃうんだよ?下手すりゃ、どろどろの昼メロものだよ?」

「そうか。そうだね」

「あはは、自分で言ってても、なんか受ける!」

「え?」


「そんなシリアスもの、俺の人生には向いてないね」

「ええ?そう?」

「お気楽で、楽天家で、ハッピーなやつだから、俺って」

 そうかも…。それは、うなづける。


「でもさ。それって、まあ父さんの影響も大なんだけど、桃子ちゃんの影響も大なんだよね」

「え?」

「俺の人生を、ハッピーにしてくれてる」

「……。それは、聖君だって」

「うん。だよね?俺と出会ってから、思いっきりハッピーでしょ?」

「うん」

 

「あははは。自分で言うかって感じだよね?」

「くす」

 面白いな、聖君って。でもそういうところが好き。

「ベンチ座ろう」

「うん」

 私たちは、ベンチに座った。


 聖君は空を見上げた。そこは大きな木があって、木漏れ日が差し込んでいた。

「日陰、気持ちいいね」

「うん」

「あ、いい風も吹いてきた」

「うん、気持ちいい」


「桃子ちゃん、匂いは?大丈夫?」

「うん。この時間帯はあまり、食べ物の匂いがしないから」

「そっか」

「うん。すごく気持ちいいよ」


 聖君は私の手を取って、ぎゅって握り締めた。そして、

「凪が生まれたら、いっぱい公園来ようね」

と優しくそう言った。

「うん」

「それと、動物園でしょ。水族館でしょ。海でしょ。花火でしょ」

 そう言う聖君がすごく嬉しそうで、私もすごく嬉しくなった。


「楽しみだね」

「うん!」

 聖君のきらきらした目を見ていると、本当に瞬間瞬間が輝いて、楽しくなってくる。この魅力にみんな、まいっちゃうんだろうな。そして、一緒にいると楽しくなるの。父も、母も、ひまわりも、きっとそうなんだろうな。

 少し、二人で、風を感じたり、緑を見て喜んで、味わって、私たちは家に帰った。


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