第46話 落ち込み
私は漫画を買いに、花ちゃんたちと一緒にコンビ二までいくことにした。
会計を聖君が済ませ、私と花ちゃんたちを、ドアまで見送ってくれた。
「桃子ちゃん、気をつけて帰って来るんだよ」
「う、うん」
聖君、ほんと、過保護のお父さんになってるよ。
私たちは、一緒に駅のほうに歩き出した。
「聖君、すごい桃ちゃんのこと大事にしてるんだね」
花ちゃんがそう言った。
「うん」
「いいな~~」
メグちゃんが羨ましがった。
「あんなにかっこいい人が彼氏って、どんな気分?」
咲ちゃんにそう聞かれた。
「え?えっと…。なかなか私が彼女なんだってこと、信じられなかったし、いまだに、片思いしてるみたいな気分にもなっちゃうし、いまだに、見とれちゃうし」
「へ~~。そうなんだ」
「なんだか、わかるな~~。私なんて、きっと話しかけられるたびにドキドキしちゃいそう」
メグちゃんの言葉に、私はうんうんとうなづいた。
「そっか~~。ああ、なんだか、創作意欲がわくな~~」
咲ちゃんは、目を輝かせた。
「ね、桃ちゃん、メアド教えて。いろいろと話が聞きたいな」
「え?な、なんの?」
「聖君のことや、付き合ってどんな心の変化があったとか、片思いの気持ちとか」
「私の?!」
「うん。参考にしたいの」
どひゃ~。それ、かなり恥ずかしい。
「聖君から告白してきたの?」
咲ちゃんに聞かれた。
「え?ううん」
「じゃ、桃ちゃんから?」
「ううん。友達に私が聖君のことを好きだって、ばらされちゃって」
「え~~!それでそれで?」
「え?」
咲ちゃんが、興味津々の目で聞いてきた。花ちゃんや、メグちゃんも聞きたそうにしている。
「えっと。それから、聖君が私のことを、意識して見るようになったらしくって」
「それで?」
「…それで、私は話すと真っ赤になっていたり、声も小さかったりして、聖君が好きだっていうのが、まるわかりだったみたいで」
「聖君、それでどうしたの?桃ちゃんが自分のこと好きだって知って」
咲ちゃんは、すっかり立ち止まり、私の真正面に立ち、聞いてきた。
「ね、道の真ん中だし、ちょっとそこの公園のベンチに座って話さない?」
花ちゃんがそう言った。
「そうだね!」
咲ちゃんはそう言って、公園に入っていった。
えええ?そんなにばっちり、聞く体制に入っちゃうの?
「桃ちゃん、早く早く」
3人はもう真ん中を空けて、座っている。
「…うん」
私は咲ちゃんとメグちゃんの間に座った。
「それで、聖君はどうしたの?」
咲ちゃんがまた、聞いてきた。
「えっと、私って、ふわってしてるらしくて、それに癒されたらしくって」
「あ、そんな感じするもんね、桃ちゃん」
メグちゃんがそう言った。
「それで、一緒にいるとあったかかったらしくって、それで、付き合いだして」
「え?じゃ、特にどっちかが告白したとかないの?」
「うん」
「そうか~~。癒しの存在なんだね、聖君にとって。う~~ん、いいかも!それ」
咲ちゃんはいつの間にか、メモを出して書いていた。
「ね、聖君って、メールとか電話とか、よくくれるの?」
「え?う、うん。くれるほうなのかな?他の人がどうかわからないから、比較できないけど」
私は、恥ずかしくなってきて、うつむいて話した。
「たとえば、毎日くれるとか、1日に何回もくれるとか」
「毎日くれてたけど、一日に何回もはないよ」
「くれてたってことは、今は?」
「今?今は…」
「桃ちゃん、聖君の家に泊まってるんだもん。わざわざ、メールしあったりしないよねえ」
花ちゃんがそう言うと、咲ちゃんとメグちゃんが、目を丸くさせた。
「と、泊まってるの?」
「うん」
「そうなんだ。じゃ、家族にも受け入れられてんだね」
咲ちゃんは、そう言うと、またメモを取り出した。
「何を書いてるの?」
メモを見ると、聖一の家族って書いてある。
「聖君って、兄弟は?」
「妹がいるよ」
「仲いい?」
「うん、すごく可愛がってる」
「いいな~~、私、妹でもいい」
メグちゃんが、また羨ましがった。
「家族の仲はいいの?あ、お母さんはお店のオーナーだよね?きれいな人だよね」
「お父さんも私見たことある。お店の手伝いしてて、聖君が父さんって呼んでたの。若くてかっこいいんだよね」
メグちゃんが、そう言った。
「うん、聖君、お父さんとすごく仲いいんだ。友達みたいで、いろんな話もしてるんだよ」
「へえ!聖君くらいの年齢だと、お父さんと話さなかったり、仲悪くなったりもするのに、家族仲いいんだ~~」
咲ちゃんはそう言うと、またメモをしている。
「いいね。私が思い描いてる聖一も、そんな感じなの。優しくて、あったかくて、誰に対しても、変わらない」
「それは、聖君と違うかな」
「え?」
「聖君、お店ではお客さんにいつも笑顔だけど、高校の頃は硬派で、女の子にすごくクールだったから」
「ええ~~!」
メグちゃんも、咲ちゃんもまた目を丸くした。
「信じられない。お店でいっつも、優しいさわやかな笑顔でいるよ?あれって、作り物?」
メグちゃんがそう聞いてきた。
「ううん、あれは、仕事に徹してるっいうか、お客さんをしっかりと、もてなしているっていうか」
「へ~~~~」
咲ちゃんは、そう感心してから、またメモを取っている。
「なんだか、聖一とはイメージが違うな」
「あ、でもね、本当に咲ちゃんがイメージする男の子でいいと思うよ?」
私がそう言うと、咲ちゃんは、またメモ帳にさらさらと書き、
「うん。だけど、参考にしたいから、聞いてもいい?桃ちゃんって、聖君のどこが好きなの?クールなところ?」
と聞いてきた。
「え、えっと。どこって、全部が好きだから」
「え?!」
咲ちゃんのメモを取る手が止まった。
「全部?」
メグちゃんも聞いてきた。
「桃ちゃんは、本当に聖君にべった惚れなんだよね」
花ちゃんが、にこにこしながらそう言った。
「それに聖君も、桃ちゃんにベタ惚れで、この二人は、あつあつのカップルなんだよね~」
きゃ~。花ちゃんの言葉に、思わず、顔が熱くなる~~。
「ひゃ~~、そうなんだ。聖君のほうも、べた惚れなんだ。あ、でもそうだよね、じゃなきゃ、気をつけて帰って来るんだよなんて、言わないよね」
あれはきっと、妊娠もしているし、いろいろと注意してねってことだと思うんだけどな。
「他の子にはクールなのに、彼女にはめちゃ優しいんだ。あ~~、そういうのも、いいかも!」
また咲ちゃんは、目を輝かせた。
ああ、いったい、咲ちゃんの漫画はこれからどんな展開になっていくのかな。
「そろそろ行こうか」
花ちゃんがベンチを立った。
「あ~~~、わくわくしてきた。やっぱり桃ちゃん、いろいろとまた話を聞かせてね」
咲ちゃんが、私の手をとりぶんぶんと振った。
「う、うん」
4人で駅まで歩き出した。
「クールな聖君も見てみたいな」
メグちゃんが言った。
「クールな表情もかっこいいだろうね」
咲ちゃんが言った。
「他は?どんなところがかっこいいと思う?桃ちゃん」
メグちゃんが聞いた。
「え、かっこいいところ?えっと。前髪をかきあげる仕草とか」
「あ、見たことある。かっこいいよね~~」
メグちゃんが、いちオクターブくらい高い声をあげた。
「私一回、聖君が、クロちゃんのことを、なでまわしてるの見たことあるよ。すごく可愛い笑顔だったんだよね」
咲ちゃんがそう言った。
「聖君って、時々可愛いよね。オーダーしたものを違うテーブルに持って行っちゃった時、あ!間違ったって言って、ぺろって舌を出したの。あれ、可愛かったよ~~」
メグちゃんは、両手を握り締めながら、顔を赤らめている。
「見た見た。可愛かった~~」
咲ちゃんも、その場をぴょんぴょんと飛んでいる。
「わかる!聖君、可愛いもん」
思わず、私も二人の間に入り、声を高くしていた。
「可愛いって桃ちゃんも思う?」
「思う~~」
私たちはそのあと、聖君のどんなところが可愛いかで盛り上がり、きゃいきゃいしながら駅まで行った。
「じゃあね、桃ちゃん。また学校で」
花ちゃんとメグちゃんがそう言った。
「また、いろいろと話を聞かせてね」
咲ちゃんがそう言って、改札をとおり、手を振った。私も3人に手を振った。
「学校で…、か~」
3人がホームの奥まで行ってしまい、見えなくなってから私はぽつりとつぶやいた。なんだか、いきなり寂しさに襲われた。
ああ、久々だったな。友達ときゃっきゃって、恋の話をして盛り上がったの。花ちゃんとも会ったの、久しぶりだった。
もし、高校行けなくなったら、やっぱり寂しいな。
「はあ…」
ため息が思わず出た。ああ、でも聖君言ってたっけ。行けたとしても、やめるとしても、どっちになってもうまくいくって。
そうだよね、聖君はぞばにしてくれるんだし、友達とだってこうやって、いつでも会えるよね。
私は気を取り直し、コンビ二により、恋するカフェが載っている、漫画の週刊誌を買った。それから、お店までぶらぶらと歩いた。
江ノ島の海が、きらきらと夕日を浴び、輝いている。綺麗だな。
江ノ島の駅には、たくさんの海から帰る人がいた。家族連れ、カップル、友達同士。私はその波に逆流して歩いていた。
みんな笑顔だった。なんだかいいな。みんな、幸せそうだな。
私は買った漫画をわくわくしながら持って、お店に帰った。
お店の前に来ると、窓から聖君が見えた。お客さんが帰った後かな。テーブルを片付けている。そして、ふと視線をこっちに向けた。
あ、目が合った。と、そのとたん、聖君はものすごい勢いで、お店から出てきた。
「桃子ちゃん!」
「え?」
顔が怒ってる?
「遅いじゃん!何してたんだよ」
「ごめんなさい。みんなで話をしてたら遅くなっちゃった」
心配してたんだ。
「ふう…」
聖君はうつむき、ため息をついた。そして、私の背中に手を回し、一緒にお店に入った。
「ごめんね…」
聖君のため息が、聖君の心配してた気持ちや、安心した思いを物語っていた。
「…それ、何買ってきたの?」
聖君は、やわらかい表情で聞いてきた。
「あ、さっきの週刊誌」
「さっきの漫画が載ってた?」
「うん」
「そっか。あとで俺にも読ませて」
「うん」
聖君はまた、さっきのテーブルに戻り、片付けをしてキッチンに行った。
私は、家に上がろうとしたけど、立ち止まり、聖君を見た。聖君は私の視線に気がつき、私を見て、
「ちゃんと休んでるんだよ」
と言い、ちょっとおっかない顔をしてみせた。
私はこくんとうなづき、家にあがった。
そうだよな。私、今日はお店の手伝いもしないで、休ませてもらってたんだよな。それなのに、ふらふら駅まで行っちゃって、長いこと話し込んじゃって、それじゃ、聖君だって心配しちゃうの当たり前だよね。
あ~~。自己嫌悪だ。
しばらくテーブルに、顔を伏せ、私は落ち込んでいた。それを察したクロが、くうんって鳴いて、私の腕をぺろって舐めた。
「なぐさめてるの?クロ…。は~~~あ。私、聖君に心配かけさせちゃったよ」
クロはまた、くうんって鳴いた。
ぎゅ。クロに抱きついた。犬のにおいも、ぬくもりも、なんだか私を癒してくれるな~~。
でも、やっぱり、聖君にぎゅってしてもらうのが一番だな~。
しばらく私は、クロに抱きつきながらぼ~ってしていた。それから、さっき買った漫画を袋から出し、めくってみた。
一回目は、一目惚れをするというところまで。そして今回の内容は、借りた傘をお店に返しに行き、ちょっとだけ、自分がなんで海を見に来たかを、主人公の子が話をするところが描かれていた。
主人公、野乃ちゃんは、聖一君と話す時、真っ赤になりながら、話をする。でも、この聖一君は、優しくその話を聞いてあげている。その辺も似てるかも。
「野乃ちゃん、話ならいつでも聞くよ。またおいで」
そんな言葉を聖一君は、野乃ちゃんにかけている。ああ、こんなこと言われたら、もっと惚れちゃうって…。
ただ、どうもこの聖一君は、誰にでも優しいみたいで、今回の最後には、野乃ちゃんが、聖一君の優しさに触れながらも、ああ、自分は特別な存在になってるわけじゃないんだなって、ちょっと落ち込んでしまうってところで終わっている。
これまた、同じ気持ちを味わったことあるな~~。花火大会で、聖君が探してくれたり、鼻緒ですりむけたのを心配してくれたりした時、きっと誰にでも優しいんだ。私にだけじゃないんだ。そんな気持ちに勝手になって、落ち込んでたんだよね。
今、思うとひどいな、私。だって、特別とかそうじゃないとか関係なく、あの瞬間は聖君は、本気で私を心配して探したり、肩を貸してくれたりしたんだもん。そのことに、感謝することなんだよね。
今日だって、心配しただろうに、聖君、ちょっと怒っただけで、もういつもの優しい聖君に戻ってた。
今までだって、どれだけ、大事に思ってくれたことか。それ、私はちゃんと聖君にありがとうって言ってきただろうか。
「は~~。クロ、聖君って優しいよね。それにずっと、私は甘えてたよね。思い切り甘えてたよ。なのに、ありがとうも言ってなかった。なのにね、聖君はもっと甘えていいよって言うの」
クロにまた抱きつき、そう話すと、クロはまた、くうんって鳴いた。
「クロも聖君が優しいの、知ってるよね」
「くうん」
「だよね…」
「いじらしいな~」
後ろから声がした。うわ!聖君のお父さんだ。なんでこうも、いつも、タイミングよく、いや悪く現れてくれるんだろう。
「桃子ちゃん、それ聖に言ってみ?聖、感動して泣いちゃうかもよ?」
「え?」
「うん、泣いちゃうね。俺も泣きそうになったもん」
聖君のお父さんはそう言うと、
「ちょっと仕事もひと段落ついたし、日もかげってきたし、散歩行ってくるね。クロ、一緒に行く?」
と言って、リールを持ってきた。
「ワン!」
クロは、思い切り尻尾を振りまくり、お父さんと一緒に玄関のほうから出て行った。
「あ~、クロ行っちゃった」
リビングに取り残され、一気に寂しくなった。するとそこに、
「桃子ちゃん、いる?」
と麦さんが、お店のほうからやってきた。
「あ、麦さん」
「聞いて~~。聞いて~~」
麦さんは顔を赤くして、私の隣に来ると、私の手を両手で取って、
「桐太に思い切って、言ったの」
と、興奮しながらそう言った。
「サーフィン、一緒にしたいってですか?」
「ううん。一緒に明日の朝、行こうって誘ったの」
「そ、そしたら桐太、なんて?」
「それが、あっさりといいよって言ったの。まだ、店長もサーフィンできないだろうし、行って、俺が教えてやってもいいよって」
「え~~、良かったですね」
「うん」
麦さんはそれから、少しうつむいて、
「でもね、そのあと私がみょうに喜んじゃったから、桐太、すごく不思議がって」
「え?」
「サーフィンできるのが、嬉しいんだって言っちゃったの。本当は桐太と会えるのが嬉しいのに」
「…、でも、それはこれから、徐々に言っていけばいいんじゃないですか?それとか、態度で示していくとか」
「桃子ちゃん、羨ましい」
突然そう言われて、びっくりした。
「なんで?」
あ、桐太と仲いいから、とか?
「桃子ちゃんってだって、見るからに、聖君を好きだってわかるじゃない?態度ですぐに現れるから、相手に伝わりやすいだろうなって思って」
あ、そういうことか…。
「大丈夫ですよ。きっと、麦さんの思いも伝わりますよ」
私はなんの確証があるのかわからないけど、そう言っていた。
「そうだったらいいけど。でも、桐太って本当に、桃子ちゃんのことが好きなんじゃないのかな」
「違います。友達です」
「でも…、好きな人いるんじゃないかな」
「え?どうしてそう思うんですか?」
「今日、お店に来てた女の子、桐太のことが好きみたいで、それをアピールするんだけど、桐太、好きな人がいるからっていうのを、その子に言ってたんだよね」
「え?好きな人がいるって、はっきりと?」
「ううん、はっきりとじゃない。ただ、俺の場合は、好きな人を見守る立場だから、なんだかんだって、そういうようなニュアンスのこと言ってたの」
聖君のことだな、それ。そうか、見守る立場だって言ってたのか。
「やっぱり、いるんだよね。でもその言い方からすると、片思いだよね?それでもしや、桃子ちゃんかなとも思ったんだけど」
「違います」
「桃子ちゃん、もしかして桐太の好きな相手知ってたりする?」
「え?」
ドキ~~。
「し、知らないです」
「でも今、ちょっと間があったよね?」
「え、えっと、元カノのことだったら、知ってるから、それで…」
「そうなの?知ってるの?どんな子?」
「友達のお姉さんです。でも、お互いそんなに本気じゃなかったみたいだけど」
「え?そうだったの?」
「はい」
あ~~、心臓によくない。ばくばくしてるよ。聖君のことが好きだなんて、ばれたら大変だよ。
「そっか。は~~、じゃ、誰なのかな。う~、気になる」
「…」
「でも、彼女じゃないみたいだし、私にもチャンスはあるのかな」
「思いが伝わるといいですね」
私は、本気でそう思って、麦さんにそう言った。
「ありがとう。うん、まだ今は伝えられないけど、きっといつか、ちゃんと伝えるよ」
「はい、あ、私も応援してます」
「ありがとうね、桃子ちゃん」
また、麦さんに抱きつかれた。麦さんってそうか。聖君の腕とかにも触っていたけど、けっこう人に触れたり、こうやって抱きつくことができる人なんだな。
不思議。でも、人に素直に自分を見せることはできないのか。だけど、ちゃんと心開くことができるようになったら、こんなふうに抱きつかれるのも嬉しいし、桐太も喜ぶんじゃないかな。
あ、でもでも、聖君に抱きつくのは、もうしてほしくないけど…。
じゃ、桐太も、どうかな。麦さんのことが好きなら嬉しいだろうけど、そうじゃなかったら、嫌かな。
ああ、わからない。桐太とは仲良くさせてもらってるけど、どうなんだろうか。だいいち、女の子のこと、好きになったりするのかな。
それすらわからないのに、応援しますなんて無責任すぎたかな。
そんな私の気持ちもよそに、麦さんはにこにこしながら、じゃあねって言って、帰っていった。
はあ。私って、無責任?
私って、私って…。やばいことに今、落ち込んでるかも。
ああ、聖君のお父さんが言ってたっけ。桃子ちゃん、いじらしい。それ、聖に言ってみ?って。
そうか。こうやってぐるぐるしてることも、悩んでることも、みんな、聖君に言ってみたらいいのか。
うん。思い切り甘えるのとはちょっと違うかもしれないけど、心のままに、聖君に話してみようと、私は決意して、そしてまた、テーブルにうつっぷせていた。決意を固めても、落ちてるものは、落ちている…。