第37話 惚れ過ぎ
聖君とお店に戻った。
「お帰り。夕飯の準備できてるから、カウンターで食べちゃう?」
「うん」
聖君の母さんが、二人分のお料理をカウンターに持ってきてくれた。
「紗枝ちゃん、元気に帰っていった?」
「…。母さん、紗枝ちゃんに桃子ちゃんが俺の彼女だって、紹介しなかったの?」
聖君がお母さんに聞いた。
「うん。聖から言わなかったの?」
「母さんが言ったと思って、言わなかったよ。今、帰りがけに桃子ちゃんは俺の彼女だよって言ったら、真っ青になっちゃって。バイトしてくれるかどうか、あれじゃわかんないよ」
「え~~、本当に?せっかく今日がんばって、仕事覚えたのに」
聖君のお母さんはがっかりしながら、キッチンに戻った。
私と聖君は、夕飯をカウンターで食べた。それから、お風呂に一緒に入った。
聖君はまた、
「洗ってあげようか?」
と聞いてきた。
「いい」
そう断ると、
「じゃ、背中だけでも」
とさっさとタオルに石鹸をつけ、私の背中を洗い出した。
いつも聞いてくるけど、なんでかな~。
「聖君」
「うん?」
「背中だけじゃなくて、なんで首も洗ってるの?」
「え?そりゃ、背中からつながってるから」
どういう理由?
聖君はそれから私の右腕も持ち、洗い出した。
「ひ、聖君、腕まで?」
「だって、肩からつながってるし」
肩洗っていたから、そのまま腕もってこと?でも、右手がすむと、左手まで持って洗い出したよ?
「桃子ちゃんの腕、細いね。ほら、手首なんて軽く握れちゃうよ?俺」
「うん」
聖君はそう言うと、私の手首を握り、それから今度は、私の手の甲まで洗っている。え~~と、どうしたらいいんだろう、私。かなりくすぐったいんだけど。
「聖君!」
「え?」
「前は自分で洗う。もういい、ありがとう」
聖君が胸まで洗おうとして、私は胸を両手で隠し、そう言った。
「…洗ってあげるのに」
聖君はぼそって言った。
「い、いいから。くすぐったいし、自分で洗うから」
私は聖君がもっているタオルを、取ろうとしたけど、聖君は渡してくれない。
あ~~~。もしかして、だだっこモード?聖君、たまに強引というか、自分のしたいことを押し切ってしまうというか…。一緒にお風呂に入るのだって、お母さんを言い含めて、入るようにしちゃったし。
「聖君、タオル」
「え?」
「タオル貸して」
私が手を出しても、聖君はまったく無視。あ~~、もう~~。
「桃子ちゅわん」
「え?」
「洗ってあげるね?」
「……」
私はかたくなに胸を隠した。
「手、どけてね?洗えないから」
「自分で洗うってば」
「桃子ちゅわわん」
「自分でできるってば」
「しょうがないな~」
聖君はそう言うと、私のお腹のほうを洗い出した。
「聖君?」
「凪がいるお腹。まだまだ、目立たないね」
あ~~、駄目だ、こりゃ。自分で洗うって言っても、聞かないな。
でも、聖君は凪がいるからか、すごく優しくお腹を洗ってくれる。
「もっともっと大きくなるんだね」
「うん」
聖君は私のお腹に手を当てた。
「凪、聞こえてるかな」
「どうかな~」
私も一緒に手を当てた。
「大きくなったら、動くんだよね?」
「うん」
「俺が触っても、動いたのってわかるかな」
「お母さんが、足の裏の形がわかるって言ってたよね?」
「あ、そうだ。言ってた。すげえ、楽しみだな」
「うん」
私がお腹に手を当ててるすきに、聖君が胸を触ってきた。
「聖君?」
きゃ~~、なんで手で洗ってるのよ~~!
「桃子ちゃんの胸、可愛いよね」
「いい、いい!自分で洗うってば!」
「でももう、洗っちゃった」
あ~~~、まったくもう~~~~。恥ずかしいよ~~~~。
顔がほてりまくった。きっと真っ赤だ、私。
聖君はシャワーで、石鹸を流すと、
「じゃ、足」
と言ってきた。
「絶対、絶対、自分で洗う!」
「なんだよ。そんなにかたくなに断らなくてもいいじゃん」
「聖君はもう、バスタブつかってていいから」
「ちぇ」
聖君はようやく私にタオルを渡すと、バスタブにドボンとつかった。
ああ、危なかった。足なんて洗ってもらったら、お尻まで洗うって言って、きかないところだよ、きっと。
聖君をちらりと見ると、こっちをじ~~って見ていた。
「聖君、恥ずかしいから、あっち向いて」
「ねえ、なんで?」
「え?何が?」
「なんで恥ずかしいの?」
「恥ずかしいものは、恥ずかしいもん」
「裸見られるのが?でももう、何回も見てるけど」
「でもまだ、恥ずかしいの!」
「夫婦なのに?」
「それでも恥ずかしいの!」
「もう、何回も愛し合ってるのに?」
「それでも!」
聖君はまだこっちを向いている。なんなんだ、今日の聖君は~~!まったく私の言うことをきいてくれない。
「うちの風呂ならでかいから、凪と3人で入れると思わない?」
聖君はまだ私を見て、にこにこしながらそう言ってきた。
「え?うん、入れるかも」
「楽しみだな~」
あ、本当に嬉しそうな顔してる。
ああ、そうか。なんだかわかった。聖君にとって、一緒にお風呂に入るのって、家族として当たり前とか、夫婦として当たり前の、日常のことなんだ。
恥ずかしいこととか、いやらしいこととか、そういうのまったくないんだな。だから、裸を見るのも見られるのも抵抗がないし、体を洗うことも、私が思ってるほど、恥ずかしいことだったりしないのかもしれない。
「桃子ちゃんのお尻も可愛い」
「え?!」
なに?突然…。
「可愛いな~~、明日はお尻も洗ってあげ…」
「いい!自分で洗えるから!」
私は聖君が最後まで言う前に、思い切り断った。
「ちぇ~~~~」
聖君は口を尖らせ、そっぽを向いた。
う~、やっぱりただのスケベ親父?
聖君は体を洗い終えると、また髪を洗ってくれた。ああ、これはちょっとやばい。聖君に髪を洗ってもらうのは、すごく気持ちがいいんだよね。癖になってるかもしれない。
「桃子ちゃんが行ってる美容院って、男が髪洗ったりする?」
「ううん。女の人しかスタッフにいないよ」
「良かった」
「え?」
「もし男だったら、俺、すんげえ嫌かも」
「…私が男の人に髪を洗ってもらうのが?」
「うん。桃子ちゃんの髪にも、肌にも触れてほしくないよ」
「…」
「産婦人科はしょうがないとしてもさ」
「男の先生?」
「うん。本当は嫌だけど、でも、凪や桃子ちゃんの命に関わることだもんね。男の医者だから嫌とか、そんなこと言ってられない。大事な人たちの命を、任せるわけだから」
「…」
「でも、やっぱり」
聖君は私に後ろから抱きつき、
「他の男が、桃子ちゃんに触れるの、嫌だ~~。それも桃子ちゃんの、桃子ちゃんの…」
聖君はその先は言わず、う~~~ってうなっていた。
「私も嫌だ。聖君以外の男の人に触られるの…」
私がそう言うと、聖君は小さな声で、
「だよね」
とつぶやいた。
「それに、聖君に他の人が触れてるのも、嫌だな」
「え?」
「お客さんでもいるでしょ?聖君の腕や、肩とかに触ってる人。きゃ~~っ、やめて~~って心の中で叫んでるもん」
「そうだったの?」
「うん」
聖君はまた、後ろから抱きしめてきた。
「もう、桃子ちゃんってば」
それから聖君は私の髪を洗い終えると、自分の髪を豪快に洗いだした。私はバスタブに入って、それを眺めていた。
「聖君の、腕、筋肉あるよね。いつ鍛えてるの?」
私が聞くと、聖君は洗ってる手を止め、こっちを見た。
「知らなかった?うち、筋トレグッズ、けっこうあるんだよ」
「え?そうなの?」
「父さんも使ってるよ」
「知らなかった。でもいつやってるの?」
「休憩時間とか、朝、店出る前とか」
「見たことなかったよ?」
「そうだっけ。桃子ちゃんといると、桃子ちゃんといちゃついていたいからさ、筋トレなんてしてる場合じゃなくなっちゃって」
え~~~。
聖君はまた、髪を洗い、シャワーでシャンプーを洗い流した。それから、前髪を手であげる。あ、それだ。色っぽい。
「聖君って、肌、きれいだね」
「俺?そうかな」
「にきびもあまり、できないよね?」
「たまにできるよ。おでことか」
「…聖君って、毛深くないよね」
「うん」
「うちのお父さん、足もじゃもじゃなの。ちょっと気持ち悪くて」
「そうなんだ」
「聖君が毛深くなくてよかった」
「そう?じゃ、胸毛とか生えてたらどう?」
「う、嫌かも~~~」
「あはは、そうなんだ」
聖君は笑いながら、バスタブに入ってきて、私を後ろから抱きしめた。
「あんなに自分のこと見られるのは恥ずかしがるくせに、なんで俺の裸は平気で見てるわけ?」
「え?」
「今、ずっと見てたじゃん」
「あ…」
私は思い切り、恥ずかしくなった。でも、つい見とれちゃうんだもん。しょうがないじゃない…。
「もう、桃子ちゃん、ずっこいよ」
う~~。そんなこと言われても~~。
聖君に抱きしめられ、私はうっとりとした。なんでこうも、聖君の腕の中は気持ちがいいんだろう。でも、心臓はドキドキしている。
「聖君の腕の中にいるの、好き」
「え?」
「こうやって抱きしめられるのが、好き」
「俺も、桃子ちゃんのこと抱きしめるの好きだよ」
聖君はそう言って、私の首筋にキスをしてくる。それも、優しいキスで、私はとろけそうになる。
「聖君…」
「ん?」
「む、胸は駄目」
聖君が胸を触ってきたからそう言うと、
「なんで?」
と聞いてきた。
「だ、だって」
聖君は駄目って言ってるのに、やめてくれない。
「なんで?」
ああ、まだ聞いてくる。どうしよう。
「い、言えないよ」
うずうずしちゃうんだもん。なんて、こんなこと言えないよ。
「言えないの?なんで?言ってくれないとわかんないから、やめないよ?俺」
ずるい。言っても、やめてくれないんじゃないの~~?
「言ったらやめてくれるよね?」
「うん」
「絶対だよね?」
「うん」
ああ、恥ずかしいけど、でも、言ってみる?
「う、うずうずしてきちゃうから、だから駄目」
ああ、言っちゃった。恥ずかしい。顔が熱い。
聖君は胸から手を離し、後ろからまたぎゅって抱きしめてきて、そして、
「桃子ちゃんってば。もう~~、スケベ」
と言ってきた。
「なな、なんで?」
「でも俺も、うずうずしてるんだけど。ここで、いい?」
「え?!」
え?何が?
「ここでしてもいい?」
「駄目駄目駄目!お母さんとお父さんも、このあとにお風呂入るの、待ってるんだよ?もう出なくっちゃ」
「すぐにすむ」
「駄目!」
「ちぇ」
「ちぇじゃないよ~~。もう~~、聖君、今日変だよ」
「だって、桃子ちゃんのこと抱きたいんだもん」
わ~~、そんなこと、はっきりといわないで!恥ずかしいよ~~。
「じゃ、部屋行ってからね?」
きゃ~~~~。
「ね?」
私は、小さくうなづいた。
「じゃ、もう出よう!」
聖君はそう言うと、ザバってバスタブから出て、私のことも注意深くバスタブから出し、一緒にお風呂場から出た。
「桃子ちゃん、拭いてあげ…」
「自分で拭ける」
私はバスタオルを手にして、さっさと体を拭き出した。
「桃子ちゃん、今日冷たい」
「え?」
「なんか、俺のこと避けてる?」
「ううん、避けてないけど」
「でも、ずっとなんだか、俺、断られ続けてる気がするんだけど」
だって~~、だって~~~!
「恥ずかしいこといっぱい、言ってくるから」
「背中とかだよ?拭いてあげるって言ってるの」
「…」
仕方ないって私は、バスタオルを聖君に渡した。聖君は私の背中や腕を拭くと、そのままお尻や足まで拭き出した。
「そこは自分で拭くからいい」
「桃子ちゃん、また、いいって断る」
あ、聖君がすねた声を出してる。
「で、でも」
聖君はくるりと私を自分の方に向かせると、じっと私を見て、それからチュッてキスをしてきた。そして、バスタオルでまた、私の体を拭いてくる。首とか、胸とか、お腹とか。
「聖君」
あ~~、恥ずかしいんだってば。私、どうしたらいいんだ。それに今日、私が冷たいんじゃなくって、聖君が変なんだよ~。
私は真っ赤になりながら、うつむいてたけど、なんだか、こうなったら反撃!とか思ってしまい、聖君のバスタオルを手にして、
「じゃ、聖君の背中は、私が拭いてあげる」
と言って、拭き出した。聖君は、恥ずかしがるかと思ったのに、
「サンキュー」
ってさわやかに笑って言ってきた。
あれ?これじゃ反撃にならないじゃない。まったく動じていないよ?聖君は。
背中を拭いてると、聖君の背中って広いなって思ってしまった。それに、やっぱり肩甲骨がきれいだ。
腕も拭いてあげた。聖君の肌に水滴がついているのすら、なんだか、色っぽく見えてしまう。それから、聖君の腕の筋肉、きれいだな。
横から見る首や、鎖骨もきれいだし、肩の骨までがきれいに見える。
あ、やばい。今、私見とれてたかも。っていうか、私肩や、鎖骨のあたりまで拭いてた…。それから、胸。胸板、前よりも厚い。
「背中だけ拭くんじゃなかったの?まさか、全身拭いてくれちゃうの?」
聖君が聞いてきた。
私はぐるぐるって首を横に振り、バスタオルを聖君に渡した。それから、急いで自分の下着をつけ、パジャマを着た。
ああ、顔が熱い。聖君の体、思い切り見とれてた自分が、恥ずかしい。
「先に出てるね」
私はそう言うと、ドライヤーを持って、リビングに行った。
リビングには、杏樹ちゃんと、聖君のお母さんがテレビを観ていた。お父さんは部屋で仕事の最中みたいだ。
「あ、あがった?じゃ、爽太と入ってきちゃおうかな」
「はい」
私の後ろから、聖君がバスタオルで髪をゴシゴシ拭きながらやってきた。
「俺、父さん呼んでくるよ」
聖君がそう言って、2階にあがっていった。私もそのあとに続いた。
聖君っていつも思うんだけど、いちゃついてたのに、次の瞬間にはすごく平静で、クールな顔つきにさっと変えることができるんだよね。たまにお母さんやお父さんに、からかわれたり、ひやかされると、照れたり困ったりすることはあるけど、お風呂から上がってきても、平然とした顔で、お母さんやお父さんと話せるところが、すごいって思うよ。
私は、まだ顔がほてっている。お風呂上りだから、顔が赤いのだろうと、そう思っててくれてたらいいんだけど、顔をあわあせるのすら、恥ずかしくなってしまう。だからいつも、さっさと2階にあがるようにしてるんだけど。
そして、もう一つ、いつもながら感心するのが、部屋に入ったとたん、がらりと変わる聖君だ。
「桃子ちゅわわん」
さっきのクールな顔は、どこへ一気に消えるんだろうか。
「ぎゅ~~」
聖君は一回抱きついてから、
「髪、乾かしてあげるね」
と言って、乾かしてくれた。
それから私も聖君の髪を乾かした。いつもながら、二つのつむじが可愛い。それから、私に任せっきりで、ぼ~~ってしている顔も可愛い。思わず、むぎゅって抱きしめたくなる。
聖君の髪が乾き、私はドライヤーを止め、聖君に抱きついた。
「桃子ちゃん、はやる気持ちはわかるけど、ちょっと待ってね」
「え?」
「日記、先に書いちゃうから、それからにしようね」
それからにしようねって…?私が抱きつくことかな。
「あとで、思い切り、桃子ちゃんのこと愛しちゃうから。あ、凪がいるから、思い切りは駄目か」
う、そういうことか。私は顔が思い切り、ほてってしまった。
聖君は、ノートを広げ、凪に日記を書きだした。
「桃子ちゃん」
「え?」
「似てるかも…」
?
聖君はちらって私を見たけど、またすぐに日記に目をやり、ちょっとにやけている。
「なあに?」
「これ、桃子ちゃん」
日記には女の子の絵が描かれていた。
「…これ、私?」
顔も丸く、目も丸い。ポニーテールにしてる女の子なんだけど、目の中には星が描いてあり、顔を赤く染めてるようだ。
それから、女の子にふきだしをつけ、「パパって素敵」と書いて、ハートのマークまで聖君は書いた。
「なに、これ…」
「今日の桃子ちゃん」
「え?」
「カウンターに座って、ずっと俺のことこうやって見てた」
あ!聖君にばれてた。
「あれ、見とれてたんでしょ?目、ハートになってた」
「やっぱり?わかった?」
「うん」
「聖君、ずるい」
「わかってたのに、言わなかったから?」
「違う」
聖君は私の横にやってきて、後ろから抱きついた。
「じゃ、何がずるいの?」
「かっこいいから」
「へ?」
「かっこよすぎて、ずるい」
「何それ~~」
「だって、私いっつも、見とれちゃうし、何やってもかっこいいし」
「もしかして、お風呂でも見とれてた?」
「う、うん」
「やっぱり?俺にはあっち向いてって言うくせにさ。俺だってお風呂でいつも、桃子ちゃんに見とれてるのにな」
「え?」
か~~。顔が熱くなった。
「桃子ちゃんも、どこをとっても可愛いの。俺、まいっちゃってるの、知らなかった?」
「知らなかった。ただのスケベ心かと思ってた」
「なんだよ?それ~~」
聖君はぐるって私を自分の方に向かせると、キスをしてきた。それから、布団に押し倒し、
「どうせね、俺はすけべ親父だよ」
と、すねた口調で言った。
「でもね、まじで桃子ちゃんの全部が可愛いんだよ?可愛いからつい、体とか髪とか洗ってあげたくなったり、拭いてあげたくなったりするの」
え?そうだったの?
あ、もしかして、私が聖君の体拭いてたら、見とれちゃって、嬉しくなってたのと同じ感覚?
「すっげ~、可愛いんだもん」
聖君はそう言うと、私のパジャマを脱がしだし、胸に顔をうずめた。
きゅわ~~。胸がうずいてしまう。つい、聖君の髪をなでちゃったり、抱きしめてるよ、私。
「俺のこと好き?」
聖君が聞いてきた。
「うん、もちろん」
なんでいまさら、そんなこと聞いてくるの?って思ってしまう。
「すんげえ、好き?」
「うん、大好き」
「今でも、惚れ過ぎるくらい、好き?」
「うん、惚れ過ぎちゃってる」
聖君が私の顔をじっと見た。すごく優しい熱い目で。
「俺も惚れまくっちゃってる」
きゃ~~。聖君の言葉に、心臓がばくばくってした。そして、抵抗できなくなる。ノックダウンだ。
聖君、ずるい。そんな目で見つめられ、そんなこと言われたら、絶対に私、射抜かれちゃうのに。
私は聖君のことを、きっとトロンってした目で見ていた。聖君はそんな私の目に気づき、
「桃子ちゃん、色っぽすぎ」
とつぶやいて、長いとろけるキスをした。