表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/175

第37話 惚れ過ぎ

 聖君とお店に戻った。

「お帰り。夕飯の準備できてるから、カウンターで食べちゃう?」

「うん」

 聖君の母さんが、二人分のお料理をカウンターに持ってきてくれた。

「紗枝ちゃん、元気に帰っていった?」

「…。母さん、紗枝ちゃんに桃子ちゃんが俺の彼女だって、紹介しなかったの?」

 聖君がお母さんに聞いた。


「うん。聖から言わなかったの?」

「母さんが言ったと思って、言わなかったよ。今、帰りがけに桃子ちゃんは俺の彼女だよって言ったら、真っ青になっちゃって。バイトしてくれるかどうか、あれじゃわかんないよ」

「え~~、本当に?せっかく今日がんばって、仕事覚えたのに」

 聖君のお母さんはがっかりしながら、キッチンに戻った。


 私と聖君は、夕飯をカウンターで食べた。それから、お風呂に一緒に入った。

 聖君はまた、

「洗ってあげようか?」

と聞いてきた。

「いい」

 そう断ると、

「じゃ、背中だけでも」

とさっさとタオルに石鹸をつけ、私の背中を洗い出した。


 いつも聞いてくるけど、なんでかな~。

「聖君」

「うん?」

「背中だけじゃなくて、なんで首も洗ってるの?」

「え?そりゃ、背中からつながってるから」

 どういう理由?


 聖君はそれから私の右腕も持ち、洗い出した。

「ひ、聖君、腕まで?」

「だって、肩からつながってるし」

 肩洗っていたから、そのまま腕もってこと?でも、右手がすむと、左手まで持って洗い出したよ?

「桃子ちゃんの腕、細いね。ほら、手首なんて軽く握れちゃうよ?俺」

「うん」


 聖君はそう言うと、私の手首を握り、それから今度は、私の手の甲まで洗っている。え~~と、どうしたらいいんだろう、私。かなりくすぐったいんだけど。

「聖君!」

「え?」

「前は自分で洗う。もういい、ありがとう」


 聖君が胸まで洗おうとして、私は胸を両手で隠し、そう言った。

「…洗ってあげるのに」

 聖君はぼそって言った。

「い、いいから。くすぐったいし、自分で洗うから」

 私は聖君がもっているタオルを、取ろうとしたけど、聖君は渡してくれない。


 あ~~~。もしかして、だだっこモード?聖君、たまに強引というか、自分のしたいことを押し切ってしまうというか…。一緒にお風呂に入るのだって、お母さんを言い含めて、入るようにしちゃったし。

「聖君、タオル」

「え?」

「タオル貸して」


 私が手を出しても、聖君はまったく無視。あ~~、もう~~。

「桃子ちゅわん」

「え?」

「洗ってあげるね?」

「……」

 私はかたくなに胸を隠した。


「手、どけてね?洗えないから」

「自分で洗うってば」

「桃子ちゅわわん」

「自分でできるってば」

「しょうがないな~」


 聖君はそう言うと、私のお腹のほうを洗い出した。

「聖君?」

「凪がいるお腹。まだまだ、目立たないね」

 あ~~、駄目だ、こりゃ。自分で洗うって言っても、聞かないな。

 でも、聖君は凪がいるからか、すごく優しくお腹を洗ってくれる。

 

「もっともっと大きくなるんだね」

「うん」

 聖君は私のお腹に手を当てた。

「凪、聞こえてるかな」

「どうかな~」 

 私も一緒に手を当てた。


「大きくなったら、動くんだよね?」

「うん」

「俺が触っても、動いたのってわかるかな」

「お母さんが、足の裏の形がわかるって言ってたよね?」

「あ、そうだ。言ってた。すげえ、楽しみだな」

「うん」

 

 私がお腹に手を当ててるすきに、聖君が胸を触ってきた。

「聖君?」

 きゃ~~、なんで手で洗ってるのよ~~!

「桃子ちゃんの胸、可愛いよね」

「いい、いい!自分で洗うってば!」

「でももう、洗っちゃった」


 あ~~~、まったくもう~~~~。恥ずかしいよ~~~~。

 顔がほてりまくった。きっと真っ赤だ、私。

 聖君はシャワーで、石鹸を流すと、

「じゃ、足」

と言ってきた。


「絶対、絶対、自分で洗う!」

「なんだよ。そんなにかたくなに断らなくてもいいじゃん」

「聖君はもう、バスタブつかってていいから」

「ちぇ」


 聖君はようやく私にタオルを渡すと、バスタブにドボンとつかった。

 ああ、危なかった。足なんて洗ってもらったら、お尻まで洗うって言って、きかないところだよ、きっと。


 聖君をちらりと見ると、こっちをじ~~って見ていた。

「聖君、恥ずかしいから、あっち向いて」

「ねえ、なんで?」

「え?何が?」

「なんで恥ずかしいの?」


「恥ずかしいものは、恥ずかしいもん」

「裸見られるのが?でももう、何回も見てるけど」

「でもまだ、恥ずかしいの!」

「夫婦なのに?」

「それでも恥ずかしいの!」


「もう、何回も愛し合ってるのに?」

「それでも!」

 聖君はまだこっちを向いている。なんなんだ、今日の聖君は~~!まったく私の言うことをきいてくれない。


「うちの風呂ならでかいから、凪と3人で入れると思わない?」

 聖君はまだ私を見て、にこにこしながらそう言ってきた。

「え?うん、入れるかも」

「楽しみだな~」

 あ、本当に嬉しそうな顔してる。


 ああ、そうか。なんだかわかった。聖君にとって、一緒にお風呂に入るのって、家族として当たり前とか、夫婦として当たり前の、日常のことなんだ。

 恥ずかしいこととか、いやらしいこととか、そういうのまったくないんだな。だから、裸を見るのも見られるのも抵抗がないし、体を洗うことも、私が思ってるほど、恥ずかしいことだったりしないのかもしれない。


「桃子ちゃんのお尻も可愛い」

「え?!」 

 なに?突然…。

「可愛いな~~、明日はお尻も洗ってあげ…」

「いい!自分で洗えるから!」

 私は聖君が最後まで言う前に、思い切り断った。

「ちぇ~~~~」

 聖君は口を尖らせ、そっぽを向いた。

 う~、やっぱりただのスケベ親父?


 聖君は体を洗い終えると、また髪を洗ってくれた。ああ、これはちょっとやばい。聖君に髪を洗ってもらうのは、すごく気持ちがいいんだよね。癖になってるかもしれない。

「桃子ちゃんが行ってる美容院って、男が髪洗ったりする?」

「ううん。女の人しかスタッフにいないよ」

「良かった」

「え?」

「もし男だったら、俺、すんげえ嫌かも」

「…私が男の人に髪を洗ってもらうのが?」

「うん。桃子ちゃんの髪にも、肌にも触れてほしくないよ」

「…」


「産婦人科はしょうがないとしてもさ」

「男の先生?」

「うん。本当は嫌だけど、でも、凪や桃子ちゃんの命に関わることだもんね。男の医者だから嫌とか、そんなこと言ってられない。大事な人たちの命を、任せるわけだから」

「…」


「でも、やっぱり」

 聖君は私に後ろから抱きつき、

「他の男が、桃子ちゃんに触れるの、嫌だ~~。それも桃子ちゃんの、桃子ちゃんの…」

 聖君はその先は言わず、う~~~ってうなっていた。


「私も嫌だ。聖君以外の男の人に触られるの…」

 私がそう言うと、聖君は小さな声で、

「だよね」

とつぶやいた。


「それに、聖君に他の人が触れてるのも、嫌だな」

「え?」

「お客さんでもいるでしょ?聖君の腕や、肩とかに触ってる人。きゃ~~っ、やめて~~って心の中で叫んでるもん」

「そうだったの?」

「うん」

 聖君はまた、後ろから抱きしめてきた。

「もう、桃子ちゃんってば」


 それから聖君は私の髪を洗い終えると、自分の髪を豪快に洗いだした。私はバスタブに入って、それを眺めていた。

「聖君の、腕、筋肉あるよね。いつ鍛えてるの?」

 私が聞くと、聖君は洗ってる手を止め、こっちを見た。

「知らなかった?うち、筋トレグッズ、けっこうあるんだよ」

「え?そうなの?」


「父さんも使ってるよ」

「知らなかった。でもいつやってるの?」

「休憩時間とか、朝、店出る前とか」

「見たことなかったよ?」

「そうだっけ。桃子ちゃんといると、桃子ちゃんといちゃついていたいからさ、筋トレなんてしてる場合じゃなくなっちゃって」


 え~~~。

 聖君はまた、髪を洗い、シャワーでシャンプーを洗い流した。それから、前髪を手であげる。あ、それだ。色っぽい。

「聖君って、肌、きれいだね」

「俺?そうかな」


「にきびもあまり、できないよね?」

「たまにできるよ。おでことか」

「…聖君って、毛深くないよね」

「うん」

「うちのお父さん、足もじゃもじゃなの。ちょっと気持ち悪くて」


「そうなんだ」

「聖君が毛深くなくてよかった」

「そう?じゃ、胸毛とか生えてたらどう?」

「う、嫌かも~~~」

「あはは、そうなんだ」


 聖君は笑いながら、バスタブに入ってきて、私を後ろから抱きしめた。

「あんなに自分のこと見られるのは恥ずかしがるくせに、なんで俺の裸は平気で見てるわけ?」

「え?」

「今、ずっと見てたじゃん」

「あ…」

 私は思い切り、恥ずかしくなった。でも、つい見とれちゃうんだもん。しょうがないじゃない…。

「もう、桃子ちゃん、ずっこいよ」

 う~~。そんなこと言われても~~。


 聖君に抱きしめられ、私はうっとりとした。なんでこうも、聖君の腕の中は気持ちがいいんだろう。でも、心臓はドキドキしている。

「聖君の腕の中にいるの、好き」

「え?」

「こうやって抱きしめられるのが、好き」

「俺も、桃子ちゃんのこと抱きしめるの好きだよ」


 聖君はそう言って、私の首筋にキスをしてくる。それも、優しいキスで、私はとろけそうになる。

「聖君…」

「ん?」

「む、胸は駄目」

 聖君が胸を触ってきたからそう言うと、

「なんで?」

と聞いてきた。


「だ、だって」

 聖君は駄目って言ってるのに、やめてくれない。

「なんで?」

 ああ、まだ聞いてくる。どうしよう。

「い、言えないよ」

 うずうずしちゃうんだもん。なんて、こんなこと言えないよ。


「言えないの?なんで?言ってくれないとわかんないから、やめないよ?俺」

 ずるい。言っても、やめてくれないんじゃないの~~?

「言ったらやめてくれるよね?」

「うん」

「絶対だよね?」

「うん」


 ああ、恥ずかしいけど、でも、言ってみる?

「う、うずうずしてきちゃうから、だから駄目」

 ああ、言っちゃった。恥ずかしい。顔が熱い。

 聖君は胸から手を離し、後ろからまたぎゅって抱きしめてきて、そして、

「桃子ちゃんってば。もう~~、スケベ」

と言ってきた。


「なな、なんで?」

「でも俺も、うずうずしてるんだけど。ここで、いい?」

「え?!」

 え?何が?

「ここでしてもいい?」


「駄目駄目駄目!お母さんとお父さんも、このあとにお風呂入るの、待ってるんだよ?もう出なくっちゃ」

「すぐにすむ」

「駄目!」

「ちぇ」

「ちぇじゃないよ~~。もう~~、聖君、今日変だよ」


「だって、桃子ちゃんのこと抱きたいんだもん」

 わ~~、そんなこと、はっきりといわないで!恥ずかしいよ~~。

「じゃ、部屋行ってからね?」

 きゃ~~~~。

「ね?」

 私は、小さくうなづいた。

「じゃ、もう出よう!」

 聖君はそう言うと、ザバってバスタブから出て、私のことも注意深くバスタブから出し、一緒にお風呂場から出た。


「桃子ちゃん、拭いてあげ…」

「自分で拭ける」

 私はバスタオルを手にして、さっさと体を拭き出した。

「桃子ちゃん、今日冷たい」

「え?」

「なんか、俺のこと避けてる?」


「ううん、避けてないけど」

「でも、ずっとなんだか、俺、断られ続けてる気がするんだけど」

 だって~~、だって~~~!

「恥ずかしいこといっぱい、言ってくるから」

「背中とかだよ?拭いてあげるって言ってるの」

「…」

 

 仕方ないって私は、バスタオルを聖君に渡した。聖君は私の背中や腕を拭くと、そのままお尻や足まで拭き出した。

「そこは自分で拭くからいい」

「桃子ちゃん、また、いいって断る」

 あ、聖君がすねた声を出してる。


「で、でも」

 聖君はくるりと私を自分の方に向かせると、じっと私を見て、それからチュッてキスをしてきた。そして、バスタオルでまた、私の体を拭いてくる。首とか、胸とか、お腹とか。

「聖君」

 あ~~、恥ずかしいんだってば。私、どうしたらいいんだ。それに今日、私が冷たいんじゃなくって、聖君が変なんだよ~。


 私は真っ赤になりながら、うつむいてたけど、なんだか、こうなったら反撃!とか思ってしまい、聖君のバスタオルを手にして、

「じゃ、聖君の背中は、私が拭いてあげる」

と言って、拭き出した。聖君は、恥ずかしがるかと思ったのに、

「サンキュー」

ってさわやかに笑って言ってきた。


 あれ?これじゃ反撃にならないじゃない。まったく動じていないよ?聖君は。

 背中を拭いてると、聖君の背中って広いなって思ってしまった。それに、やっぱり肩甲骨がきれいだ。

 腕も拭いてあげた。聖君の肌に水滴がついているのすら、なんだか、色っぽく見えてしまう。それから、聖君の腕の筋肉、きれいだな。


 横から見る首や、鎖骨もきれいだし、肩の骨までがきれいに見える。

 あ、やばい。今、私見とれてたかも。っていうか、私肩や、鎖骨のあたりまで拭いてた…。それから、胸。胸板、前よりも厚い。

「背中だけ拭くんじゃなかったの?まさか、全身拭いてくれちゃうの?」

 聖君が聞いてきた。


 私はぐるぐるって首を横に振り、バスタオルを聖君に渡した。それから、急いで自分の下着をつけ、パジャマを着た。

 ああ、顔が熱い。聖君の体、思い切り見とれてた自分が、恥ずかしい。

「先に出てるね」

 私はそう言うと、ドライヤーを持って、リビングに行った。


 リビングには、杏樹ちゃんと、聖君のお母さんがテレビを観ていた。お父さんは部屋で仕事の最中みたいだ。

「あ、あがった?じゃ、爽太と入ってきちゃおうかな」

「はい」

 私の後ろから、聖君がバスタオルで髪をゴシゴシ拭きながらやってきた。

「俺、父さん呼んでくるよ」

 聖君がそう言って、2階にあがっていった。私もそのあとに続いた。


 聖君っていつも思うんだけど、いちゃついてたのに、次の瞬間にはすごく平静で、クールな顔つきにさっと変えることができるんだよね。たまにお母さんやお父さんに、からかわれたり、ひやかされると、照れたり困ったりすることはあるけど、お風呂から上がってきても、平然とした顔で、お母さんやお父さんと話せるところが、すごいって思うよ。


 私は、まだ顔がほてっている。お風呂上りだから、顔が赤いのだろうと、そう思っててくれてたらいいんだけど、顔をあわあせるのすら、恥ずかしくなってしまう。だからいつも、さっさと2階にあがるようにしてるんだけど。


 そして、もう一つ、いつもながら感心するのが、部屋に入ったとたん、がらりと変わる聖君だ。

「桃子ちゅわわん」

 さっきのクールな顔は、どこへ一気に消えるんだろうか。

「ぎゅ~~」

 聖君は一回抱きついてから、

「髪、乾かしてあげるね」

と言って、乾かしてくれた。


 それから私も聖君の髪を乾かした。いつもながら、二つのつむじが可愛い。それから、私に任せっきりで、ぼ~~ってしている顔も可愛い。思わず、むぎゅって抱きしめたくなる。

 聖君の髪が乾き、私はドライヤーを止め、聖君に抱きついた。

「桃子ちゃん、はやる気持ちはわかるけど、ちょっと待ってね」

「え?」

「日記、先に書いちゃうから、それからにしようね」


 それからにしようねって…?私が抱きつくことかな。

「あとで、思い切り、桃子ちゃんのこと愛しちゃうから。あ、凪がいるから、思い切りは駄目か」

 う、そういうことか。私は顔が思い切り、ほてってしまった。


 聖君は、ノートを広げ、凪に日記を書きだした。

「桃子ちゃん」

「え?」

「似てるかも…」

 ?


 聖君はちらって私を見たけど、またすぐに日記に目をやり、ちょっとにやけている。

「なあに?」

「これ、桃子ちゃん」

 日記には女の子の絵が描かれていた。

「…これ、私?」

 顔も丸く、目も丸い。ポニーテールにしてる女の子なんだけど、目の中には星が描いてあり、顔を赤く染めてるようだ。


 それから、女の子にふきだしをつけ、「パパって素敵」と書いて、ハートのマークまで聖君は書いた。

「なに、これ…」

「今日の桃子ちゃん」

「え?」

「カウンターに座って、ずっと俺のことこうやって見てた」

 あ!聖君にばれてた。


「あれ、見とれてたんでしょ?目、ハートになってた」

「やっぱり?わかった?」

「うん」

「聖君、ずるい」

「わかってたのに、言わなかったから?」

「違う」


 聖君は私の横にやってきて、後ろから抱きついた。

「じゃ、何がずるいの?」

「かっこいいから」

「へ?」

「かっこよすぎて、ずるい」


「何それ~~」

「だって、私いっつも、見とれちゃうし、何やってもかっこいいし」

「もしかして、お風呂でも見とれてた?」

「う、うん」

「やっぱり?俺にはあっち向いてって言うくせにさ。俺だってお風呂でいつも、桃子ちゃんに見とれてるのにな」


「え?」

 か~~。顔が熱くなった。

「桃子ちゃんも、どこをとっても可愛いの。俺、まいっちゃってるの、知らなかった?」

「知らなかった。ただのスケベ心かと思ってた」

「なんだよ?それ~~」


 聖君はぐるって私を自分の方に向かせると、キスをしてきた。それから、布団に押し倒し、

「どうせね、俺はすけべ親父だよ」

と、すねた口調で言った。

「でもね、まじで桃子ちゃんの全部が可愛いんだよ?可愛いからつい、体とか髪とか洗ってあげたくなったり、拭いてあげたくなったりするの」

 

 え?そうだったの?

 あ、もしかして、私が聖君の体拭いてたら、見とれちゃって、嬉しくなってたのと同じ感覚?

「すっげ~、可愛いんだもん」

 聖君はそう言うと、私のパジャマを脱がしだし、胸に顔をうずめた。


 きゅわ~~。胸がうずいてしまう。つい、聖君の髪をなでちゃったり、抱きしめてるよ、私。

「俺のこと好き?」

 聖君が聞いてきた。

「うん、もちろん」

 なんでいまさら、そんなこと聞いてくるの?って思ってしまう。


「すんげえ、好き?」

「うん、大好き」

「今でも、惚れ過ぎるくらい、好き?」

「うん、惚れ過ぎちゃってる」

 聖君が私の顔をじっと見た。すごく優しい熱い目で。


「俺も惚れまくっちゃってる」

 きゃ~~。聖君の言葉に、心臓がばくばくってした。そして、抵抗できなくなる。ノックダウンだ。

 聖君、ずるい。そんな目で見つめられ、そんなこと言われたら、絶対に私、射抜かれちゃうのに。

 私は聖君のことを、きっとトロンってした目で見ていた。聖君はそんな私の目に気づき、

「桃子ちゃん、色っぽすぎ」

とつぶやいて、長いとろけるキスをした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ