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第11話 彼の違う一面

 その日、一日、母は出かけていて、ひまわりもデートで、父は会社で、本当に二人きりだった。あ、しっぽも茶太郎も、私たちの邪魔をすることもなく、勝手にどっかに行っていてくれたし。

 映画を観終わると、2階に行き、聖君の荷物を一緒に片付けた。


 それから、お昼は冷たいお蕎麦を二人で食べて、午後ものんびりと過ごした。聖君は、時々私のことをじっと見て、目が合うと、にっこりと笑った。

「何?」

「えへへ」

 えへへって言っただけで、何も言わないんだけど、どうやら、幸せをかみしめているらしい。そんな顔をしている。


 でも、幸せだって思っているのは私もだ。だけど、なんだか、まだ夢でも見ているかのようで、不思議な気持ちだった。

「まだ、お店、混んでる?」

「ん?」

「あのブログで、たくさんの人が来るようになったでしょ?それってまだ、続いてるの?」

「ああ、そうだな~。最近はそうでもないかな~」


「じゃあ、お店、落ち着いてきた?」

「いや、夏休みだし、けっこう来てるよ」

「そうか…」

「桃子ちゃんは、心配しないでもいいからね」

「え?う、うん」


 聖君は鼻歌を歌いながら、パソコンをいじりだした。

「ねえ、聖君」

「ん?」

「花火…」

「1日の?」

「ひまわり、かんちゃんと見に行くんだって。聖君は…」


「行かないよ。桃子ちゃんといるし」

「お店は?」

「ああ、夜まで開けてると思う。俺が見に行かないって言ったら、母さんが、じゃ、お店開けちゃおうかってさ」

「そっか」

「見に行きたかった?」


「う、うん」

「そうだよね、去年もおととしも見たんだもんね」

「うん」

「来年は、凪も一緒に見れるね」

「…そうだね」

 そうか。3人で見れるんだ。わ、嬉しいな。


 私はリビングにあるSDコンポをつけ、聖君と聖君の好きな曲を聞いた。聖君はたまに、一緒に歌いながら、パソコンをしていた。それをリビングのソファーに座って、私は見ていた。

 聖君って、かっこいいな~~。こうやって、ずっと聖君を見ていられるなんて、最高の贅沢だよな~~。


 パソコンを30分くらいして、聖君はパソコンをやめて、私の横にやってきた。

「編み物とかしないの?」

「うん、もったいないから」

「何が?」

「だって、聖君がいるんだもん。聖君を見ていたくって」


「え?俺を?」

「うん」

「…見惚れてたとか?」

「うん。聖君、かっこいいんだもん」

「それ、言ってて照れない?」

「うん」

「あ、そう…」

 聖君はちょっと顔を赤くして、ぼりって頭を掻いた。


「サークルの活動はないの?」

「あるよ、俺、行ってないけど」

「行かなくていいの?」

「う~~ん、来月は行くかも。一回、近場だけど、潜りに行こうかって話があって。あ、でも日帰りだから、ちゃんと帰ってくるよ」

「そうなんだ」


「行ってもいい?」

「え?もちろん。どうして聞くの?」

「一応、奥さんの許可を得たほうがいいかなって思って」

 奥さんの許可?!わあ。私が一気に真っ赤になると、

「もしや、奥さんって言葉で赤くなった?」

と聖君は聞いてきた。

「うん」


「あはは」

 聖君は笑うと、私にキスをして、またパソコンをしにダイニングに戻った。

「何をしているの?」

「ホームページの更新」

「え?なんのホームページ?」

「店のだよ」


「聖君が作ってるの?!」

「そうだよ。誰が作ってると思った?」

「聖君のお父さん」

「父さんは、本業が忙しいから、うちの店のホームページまで、手が回らないってさ。それで、俺が任せられてる」

 知らなかった。あの、素敵なホームページ、聖君が作ってたんだ。


「更新って?」

「メニュー、毎月ちょっとずつ変えるから、8月のをね、もう載せておこうと思ってさ」

「すごい。そういうのを毎月していたの?」

「うん。季節によっても、変えてるんだよ。オーナーからのメッセージも、季節ごとに変えてるし」


 知らなかった~~。すごいんだ、聖君って。はあ、尊敬してしまう。本当に何でもできちゃうんだね。それに、今もすごく楽しそうに、パソコンをしている。なんでも楽しんじゃうことができるのも、すごいって思う。


「もうちょっとでできるから、桃子ちゃん、待っててね」

「え?いいよ。ゆっくりと時間かけてやっても。私も、編み物でもしてるから」

「ほんと?ごめんね」

「ううん」


 私は2階に行き、編みかけのおくるみと本を持って、一階に下りようとした。だが、ベッドの上に乗っかっていた聖君の携帯のバイブがなり、聖君に渡そうと思い、また部屋の中に入り、それを手にした。

 あ、電話だ。見るつもりはなかったのに、名前の表示が目に入ってきてしまった。

「中里 麦」

 うそ。麦さんから?


 その場に立ち尽くしている間に、電話が切れてしまった。

「あ、いけない」

 このまま、ほっておこうか。それとも、携帯を持って、電話があったよって言ったほうがいい?

 ドスン。ベッドに座った。なんで、麦さんから電話が来るんだろう。そんなことを考えたら、急に不安になった。


 お店のことかもしれない。

 サークルのことかもしれない。

 そうだよ、別に私に隠し事をしていたってわけじゃないんだし、麦さんが携帯に電話をしてきたからって、そんなショックを受けることじゃないんだよ。


 はあ…。ため息が出た。それから、携帯も持って、一階に下りた。

「聖君、電話があったみたいだよ。もう切れちゃったみたいだけど」

 そう言って、携帯を聖君に渡した。

「あ、サンキュー」

 聖君はそう言うと、携帯を開いて見ていた。


 ああ、私、声うわずってなかったよね。顔も、普通の顔していたよね。

「麦ちゃんからだ。何かな」

 聖君がぼそって言った。それからすぐその場で、電話をかけだした。

 あれれ?ここでかけちゃうの?


「もしもし、聖だけど、電話くれた?」

 なんだ。簡単に電話しちゃうんだ。それって、まったくあれだよね。罪の意識、ないよね。あれ?なんだ、その罪の意識って。私ってば、どこかで疑ってたのかな。


「う~~ん、花火は行けないよ。だから、家族で行ったらって言ったじゃん、俺」

 花火?1日の?

「うん。だからさ、勇気を持って誘ってみ?」

 ああ、家族にってこと?


「え?店?開けるよ。夜もやる予定。いいよ、麦ちゃんは手伝いに来なくても、父さんがいるから」

 1日のことかな。

「あ、それに桜さんも来るんだ。来月1日から入ってくれるって。俺、紹介したよね?昨日きた人」

 桜さん?


「そう。去年の夏もバイトしてくれてた、パートさんの娘さん。だから、8月は麦ちゃん、そんなに店出てこなくても大丈夫だよ。せっかくの夏休みなんだから、家族でもっとどっかに出かけたらいいじゃん。妹さんも誘ってさ。仲良くなるチャンスでしょ?」

 そうか。そういうのをもしかして、相談に乗っていたのかな。ああ、バーベキューをした日、話を聞いてって、麦さん、言ってたっけな。


「あ~。桜さんは~、彼氏持ちで…。そう。多分、あのままゴールインしちゃうんじゃないかってほど、仲いい。一緒にもう、暮らしてるし」

 え?そうなんだ!

「そう、同棲してる…」

 っていうか、もしかして麦さん、桜さんのことを気にしてる…とか?


「あ~~~。う~~~ん」

 ?聖君、なんか悩んでるっていうか、困ってる?

「でも、桜さんも、バイト探していたし、パートさんの娘さんだってこともあるし、断れないよ。それに、麦ちゃんだって、バイトばっかりの夏じゃ、つまんないでしょ?もっと、友達と遊びに行ったりしたら?」

 ああ、バイトのこと?


「なんで?高校の頃の友達は?」

「……」

 しばらく、聖君は黙り込んでしまった。

「じゃあさ、こうなったら今年の夏にかけてみるとか」

 夏にかけてみる?何を?


「だから、彼氏でも作って、ばんばんデート…」

 そう言ってから、聖君は携帯を一回、耳からはなした。どうやら、何か麦さんが叫んだらしい。

「あ~~、そんなに怒らないでくれる?」

 怒られたのか。彼氏作ってなんて言ったからかな。

「俺?俺が何?」

 ドキン。何?


「え?そんな暇ないよ、俺。毎日のようにバイト入ってるし」

 何?何?まさか、デートのお誘いとか?

「水曜?定休日は、だって、俺、桃子ちゃんといるもん」

 え?やっぱり、デートの?


「うん。だから、今日も一緒にいるし」

「……」

 聖君はまた、しばらく黙り込むと、

「無理。今日はずっと、桃子ちゃんといるつもり」

と、はっきりと断っていた。


 ホ…。ものすごくほっとしている私がいる。

「ええ?そういう話は、また今度聞くよ。ちゃんと相談には乗るからさ」

 え?

「うん。そうだよ。勇気を持って一歩前に進んでごらんよ。大丈夫だって」

 う、なんか、すごく励ましてる?


「もし、傷つくようなことがあったら、ちゃんと聞くから。でも、絶対に大丈夫だから。ね?」

 …。聖君が優しい…。麦さんに、すごく優しい声をかけてあげてる。もしかして、こうやって時々、電話で相談してきたりしてるの?

 他にも、一緒にいるときも、話を聞いてあげてたの?

 聖君は、じゃあねって言って、電話を切った。


 私は何を言っていいかわからず、黙って編み物を編むのに集中しているふりをした。聖君は携帯を、パソコンの横に置き、またパソコンを始めた。

 ドキドキ…。聖君、相談に乗ってあげてるんだな。それに、優しいんだ、麦さんに。


 ううん、待って、私。ちゃんと今日も会えないって断ってたし、水曜は私といてくれるって、そう言ってくれたんだよ、それもはっきりと。なのに、ただ、相談に乗ってあげてるってくらいで、こんなに動揺しなくたって…。


「げ、間違えた」

 聖君はそう言うと、頭をぼりって掻いて、ため息をついた。

 何かな。なんか、麦さんのことでも、気になるのかな。なんて、思ったりして…。

 聖君は、またパソコンに集中しだした。さっきまで楽しそうにしていたのに、今は顔がしかめっつらをしている。


「あ~~あ。ちょっと休もう。桃子ちゃんも、何か飲む?」

「ううん、私はいい」

「そう?」

 聖君はキッチンに行き、麦茶を入れて、戻ってきた。それをグビッて飲むと、コップをダイニングのテーブルに置いて、またため息をついた。


「俺って、能天気?」

「へ?」

「楽天家過ぎる?もっと、真剣に相談に乗らないと駄目なのかな」

「えっと、麦さんに何か、言われた?」

「うん、ちょっとね」


「…なんて?」

「もっと、しっかりと聞いてってさ。そんなに簡単にうまくいくわけないし、聖君は、なんでも他人事だと思って、適当なことばかり言うって」

「そんな…。聖君、ちゃんと励ましてたよ?」

「うん。だよね?でもな~~。麦ちゃんってさ」

「うん」

「一見、明るいし、前向きっぽいけど、すげえ後ろ向きなんだよね」


「え?」

「どうも、話してても、悪いほうにしか考えないっていうか。たまに、じれったくなる」

「じれったい?」

「あ~~~。とやかく言ってないで、行動すりゃいいじゃん!って感じになる」

「そ、そうなんだ」

 そんな聖君、見ることってあまりなかったな~。


「でも、私が声が小さいとか、麦さん、いっつも注意してたし、もっと積極的で、行動的で、前向きなのかと思ってた」

「うん。日ごろは行動的だよ。さっさと動けるし積極的だし。でも、家族のこととか、ちゃんと向き合わないとならないことには、背を向けたがるんだよね」

「そうなんだ」


「俺、たまにぐるんって前を向かせて、背中をばしってたたきたくなるんだけど、でも、俺の彼女でもなけりゃ、妹でもないし、そんなおせっかいなことできないじゃん?」

「…」

 これまた、びっくりだ。私、ぐるんって前を向かされ、背中をばしってたたかれたことないけどな。


「聖君、私、そんなふうに聖君にされられたことないよ?」

「だって、桃子ちゃん、むっちゃ前向きじゃん。たいがい、自分が向き合わなきゃならないことには、背を向けないで、真正面からぶつかっていくし」

「私が?」

「うん、逃げないでしょ。怖がってることはあってもさ」


「そうなの?私って」

「あはは!でも前にあったか。俺に背を向けようとしていたこと。だけど、そのときに前を向かせて、背中たたいたのは、幹男だったよね。あれ、ショックだったよな~」

 ああ、スイミングスクールに行く前の話…。


「だけどさ、あの意地悪コーチにも、ちくしょうって立ち向かったし、お父さんにだって、俺がちょっと言っただけで、素直に自分の気持ちを伝えたり、桃子ちゃんって、ちゃんとそういうことできるから、俺がぐるんって前を向かせて、背中たたかなくってもいいんだよね」


「そうかな。けっこういじいじ暗いとき、多いと思うんだけどな」

「そう?だけど、立ち直り、早くない?いつも」

「……そうかな」

「ああ、そういえば、母さんや、父さんもいたね」

「え?」

「桃子ちゃんのこと、元気づけたりしてるっけ。蘭ちゃんや、菜摘もいるし、桐太もいるし。桃子ちゃんの場合は、あれだ。俺だけじゃなくって、他にも元気づけてくれる人が、いっぱい周りにいるんだよね」

「うん」


 そうだ。それは本当にそのとおりだ。妊娠したことだって、聖君の両親や、私の両親、それにおじいちゃんだって、私にいっぱい力をくれた。

「そういう人がさ、麦ちゃんにはいないんだよね…。それもでかいかな」

「え?」

「一緒に遊ぶような、友達いないんだって」

「そうなの?友達、多そうなのに」


「きついから、敵のほうが多いって言ってた」

「…敵?」

「なんていうのかな。素直じゃないっていうか、頑固で、意地っ張りで、負けず嫌いで、なかなか友達を自分から、作れないんじゃないの?」


「聖君、ほんとに麦さんのこと、詳しいんだね」

「え?だって、わかるじゃん。話をしてたら」

「う、うん。そうだけど」

「桃子ちゃんとは、ほんと正反対だよ。そんなにあれかな。素直になるのって、勇気いることかな」

「…」


「桃子ちゃんって、素直だもんな~~」

 聖君はそう言うと、腕を組んで悩みだした。

「新しいお父さんと、妹さんに、花火見に行こうって誘うことが、どうしてもできないらしいんだ。でも、それ、そんなに大変なことかな」


「うん、大変なことだよ」

「え?そう?」

「うん。だって、今までそういうことしたことないんでしょ?初めてすることは、勇気いるよ。断られて傷つくのも怖いし、なんか、自分から誘うってだけでも、抵抗あると思うよ?」


「そっか」

「だから、もし言えたとしたら、ものすんごい勇気を振り絞ったってことだよね」

「…そうだね」

 聖君は、今度は足を組み、考え込んだ。

「俺、あまあまだったかな」

「え?」

「もっと、簡単に誘えるだろうって、そんな感じだったかも。これじゃ、麦ちゃんに、ああ言われるのも、無理ないよね」


「……」

 聖君、自分のこと責めちゃってるのかな。

「そっか。桃子ちゃんはすげえな」

「へ?どこが?」

「そういうの、わかるところが」

「だだだって、私も、いろいろと怖いことが多くて、勇気いっぱいいることが、たくさんあるから」


「そうなの?」

「聖君と話をするのも、すんごい勇気のいることだったし」

「え?いつ?」

「最初の頃。何を話していいかもわからなかったし、必死だったんだもん」

「…ああ、そういえば、そうだったよね。いつも一生懸命に話していたよね。それ、わかってたよ」


「そうなの?ばれてたの?」

「うん。いつも、真っ赤になって、必死で、それが可愛いなって思ってたから」

 うわ。そうなのか。聞いてて、顔がほてってしまった。

「今も、赤くなってるけどさ。あはは、本当にそういうところ、変わんないよね」

「…」

 成長しないってことかな…もしや。


「麦ちゃんにもな~~。麦ちゃんの全部を好きになってくれるようなやつが現れたら、いいんだよね。後ろ向きだろうが、なんだろうが、俺みたいに、いらってしないようなやつ」

「え?」

「俺、たまにいらってしちゃうもんな~~」


「信じられない」

「え?どうして?」

「聖君が、いらってするなんて。だって、いつも優しいよ?」

「桃子ちゃんにはでしょ?」

「うん」


「そりゃ、桃子ちゃんにだからだよ。みんなにみんな、そうじゃないよ、俺」

「…」

「桃子ちゃんは、なんでかな。どこをとっても可愛いよな~」

「え?」

「もし、勇気出せないって言って、半べそかいてたら、もしかして俺」

「いらってする?」

「ううん、可愛いって言って、抱きついてるかも」


 ずる…。思わず、ソファーから転げそうになった。

「でも、桃子ちゃんは勇気出すもんね」

「ううん、だから、それは聖君の思い過ごしで、私、後ろ向きだよ?」

「そうかな~~。じゃ、そう思ってるなら、それは昔の桃子ちゃんじゃないの?」

「え?」


「今、思いっきり前向きで、強いと思うけどな~~」

「……」

 もしかすると、聖君がいてくれてるからかな。だから、怖いものがどんどん減ってきてるのかもしれない。学校のことだってそうだ。昔なら、退学なんていわれたら、この先どうしようって思っただろうけど、今は、それはそれで、しょうがないかって、受け入れられると思うもの。簡単に。


「桃子ちゃんが友達になるって手もあるけど」

「え?」

「麦ちゃんの」

「駄目だよ。私、嫌われてそうだもん。いつも、棘のささるようなこと言われてるもん」

「でも、桃子ちゃんなら、俺、仲良くなれちゃうような気がするけどな」


「え~~、そうかな」

「だって、あの桐太と、親友にまでなっちゃったんだよ?」

「あれは、私じゃなくって、勝手に桐太が、心開いてくれちゃったから」

「ああ、そうそう。桃子ちゃん、人の心、開かせるの得意じゃん」


「え?それは聖君でしょ?」

「いや、桃子ちゃんでしょ?桐太もだし、花ちゃんのお姉さんもだし、菜摘だって、ああ、この前は、ひまわりちゃんだって」

「ええ~~?」

 それは全部、聖君でしょう~~?と言いたかったけど、聖君はすでに、またパソコンに向かいだしていて、言えなかった。


 ええ?私?違うよ。聖君だよ。絶対に聖君だってば。そんな言葉が頭の中をぐるぐるとかけめぐっていたけど、麦さんのことは、なんとなく気にならなくなっていた。

 そうか。聖君でも、いらっとしちゃうこともあるし、わかってあげられないこともあるんだな。こんなこと言ったら、麦さんや、聖君に悪いかな。でも、ほっとしている私がいた。


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