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三題噺もどき5

濡れる

作者: 狐彪
掲載日:2026/08/19

三題噺もどき―きゅうひゃくにじゅういち。

 




 何もかもが溶けるような暑さの中に。

 ほんの少し、冷たい風が吹く。

 数秒前まで雨が降っていたアスファルトは黒く染まっている。

 空は晴れることなく、まだ黒い雲に覆われている。

「……」

 久しぶりに雨が降ったような気がする。

 御盆に入ってからこちら、若干曇って雨の気配はするものの、降ることはなかったのだけど。今日はバケツが限界を超えたのか、パラパラと降り出した。

「……」

 とはいっても、さして強い雨ではない。

 傘をさそうかどうしようか、合羽をきようかどうしようか、と迷う程の些細な雨。

 本格的に降ることもなさそうで、すぐに止みそうなほんとにちょっとこぼれたくらいの、たいしたことのない雨。

 ―だが、それが続くと濡れるのは当たり前で。

「……」

 夏休み中だと言うのに、午前中の授業を受けに行った帰りだ。

 学校を出た時点で雨は降っていたので、鞄は袋に入れている。

 だから、こちらは濡れることなく自転車を漕ぐたびに、ゆらゆらとキーホルダーが揺れていた。

「……」

 今朝、登校した時にあの子にもらったキーホルダーだ。

 よく見る玩具のあひるを小さなフィギュアみたいにしたもの。

 何であひると思ったが、あの子の親戚は温泉が有名なところに住んでいるらしい。それであひるなんだと。よく見ればあひるの頭にタオルみたいなものが乗せられている。

「……」

 おそろいーと言いながら、あの子のリュックにもついている所を見せてくれた。

 思わずにやけそうになるのを我慢するのが大変だった。

 まぁ、多分あの子は気づいたかもしれないけれど……申し訳ないものだ。

「……」

 それでまぁ、貰ったばかりのキーホルダー濡れなかったことはよかったし。

 バックの中に教科書やら筆箱やらが入っているので、その辺が濡れなかったのはよかった。

 ……のだけど。

「……」

 明日も学校があるのに。

 制服が想像以上にぬれて。

 もう、どうしたものかと。

「……」

 あと数分で家に着くと言うタイミングで雨が止んだ。

 家から学校までは自転車で、大体30分くらいかかるのだけど。

 その間中パラパラと小雨が降っていたという事だ。

「……」

 蓄積された雨が、制服をじっとりと濡らしていた。

 風のおかげか若干涼しさはあるし、夏には丁度いいかもしれないが。

 明日学校があるという事を考えると、制服が濡れて良いことなんて一つもない。

 休みだったとしても制服なんて濡らすもんじゃないんだけど。

「……」

 上は予備があるからいいんだけど、下の予備は少し前に冬服と一緒にクリーニングに出された。今のタイミングで出すのかと思ったし、普通に学校あるからと言ったのだけど、気づいたら母が持って行っていた。

 返ってくるのは今週末だ。それまで、このスカートで耐えなければいけない。

「……」

 いいのか悪いのか分からないが。

 とりあえず、帰ったらこのスカートを浴室乾燥にでもかけておこう。

 それでまぁ、ファブリーズでもしておいておけば匂いも大丈夫だろう。

 雨でぬれると制服って独特な匂いしない?嫌いでも好きでもないが、匂いがするのは避けたいものだろう。

「……」

 とりあえず、もう降ることもないだろうし。

 家までの一本道が見えてきたから。

 気持ちスピードを上げて、帰るとしよう。

 さっさと制服をどうにかしないといけない。

「……」

 それに、雨のせいで頭は冷えているが。

 喉が渇いてきた。

 夏場のこの渇きは危ないのだから、さっさと帰って水分補給をしなくては。

「……」

 それに、普通にお腹もすいたし。

 今日は何食べるかなぁ……。











 お題:あひる・溶ける・傘

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