恋に気づく日
書店員の結衣は、毎週水曜日に来る常連客が気になっていた。
いつも青いリュックを背負った青年は、決まって料理本のコーナーに立っている。
真剣な表情で本を選ぶ横顔が、なぜか心に残った。
ある朝、占い好きの同僚が言った。
「今日の水曜日、結衣ちゃんに運命の出会いがあるって」
「タロットで恋人のカードが出たの」
「え、そんなはずないよ」
気づいたら顔が赤くなっていた。
その日の彼はいつもより早めの時間に来店した。
「これ、おすすめですか」
彼は話しかけてきた。それが初めて交わした言葉だった。
「とても分かりやすいですよ。初心者さんにもおすすめの本です」
「何か作る予定なんですか」
「母の誕生日が近々あって、その時作ってあげたいなと思って」
笑顔で話す彼に、結衣の心は跳ねた。これが恋だと、気づいた瞬間だった。
それから二ヶ月が経った。
彼は毎週水曜日に通い続け、結衣は料理本以外の本も勧めるようになった。
ある雨の日、レジの横に置いてある星座占いの本を彼が手に取った。
「占い、信じますか」
「ちょっとだけ。でも行動しないと何も始まらないとも思っています」
「たしかにそうですよね」
そう言って彼が差し出したのは、手作りのクッキーだった。
「いつもおすすめの本や相談乗ってもらって、ありがとうございます。
あの…次は一緒にカフェでも行きたいです」
同僚が後で、囁いた。
「水曜日の予言、当たったでしょ」
窓の外は雨が上がり、虹が架かり始めていた。
占いは背中を押してくれる。でも恋を育てるのは日々の小さな勇気。
「はい、行きたいです」
結衣は笑顔で答えた。
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