表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

第6話 普通、の定義。

「それで…なんで王子妃になるのがそんなに嫌なんですか?」


あの次の日から、エルナはお昼はユリアーナ様の控室に呼ばれた。サンドウィッチのお礼らしい。それからだらだらと、もう2か月以上になる。その間、当然この人はカフェテリアに行っていない。


何度か、エーミール様が教室にやってきて、説得していたが、口げんかに発展して、決裂するのがもはや日常。隣の席の人間のことも、ほんの少し配慮いただけると嬉しいが…なかなかに興味深い。高位貴族は大変だな。


侯爵家のお屋敷から運び込んだご馳走。田舎の子爵家のエルナにしたら、クリスマスと誕生日が一緒に来たようなメニュー。控えている侍女がお茶も出してくれる。(下手をしたら私より身分が高い方かも。)それをありがたくいただきながら、まあ、単刀直入に聞いてみた。なんだかんだと2か月も付き合ったしね。


「…ずいぶん、ストレートに聞くのね?」


「え?ああ。私にはまったく関係のないような、雲の上の話ですしね。他の人みたいに陰で噂話してるよりいいかと思いました。」

「…そうね。」

「普通の女の子にしたら…名誉でもあるし、王子はカッコいいし良い人っぽいですし、憧れですよねえ。」

「…へえ…。じゃあ、貴女に譲るわよ?」


「え?いえいえ。私は田舎の子爵家の出ですし、王室とか、入った後面倒そうですし、王妃教育とか大変そうですし…あこがれませんね。強いて言えば…そうですね、伯爵家ぐらいのご子息を捕まえて、今よりほんのちょっといい生活ができればいいかな、ぐらいの思いはあります。」


エルナが小皿のテリーヌを食べながらそう言うと…


「エーミールはやめた方がいいわよ?」

「は?」

「え、ああ…あんな男だと苦労するから。」

「ああ。将来の宰相殿など、望みませんよ!安心してください。私は、普通に生きていければいいですから。」


「ねえ…貴女の言う、普通、って、何?」


「え?」

「その基準はどこ?貴女だって貴族でしょう?庶民の普通ではないわよね?」

「ええ。まあ。」

「髪色だって、可愛らしいこげ茶だわ。それが普通?」

「…まあ、」

「クラスはBクラスだけど、貴族用の学院なんて入れるのは一握りよね。それが普通?」

「…」

「誰でも彼でも…お姫様を夢見るわけじゃないと思うのよ?でも、それを目指している人をどうこう言うつもりもないのよ。」

「……」


まあ、なんとなくわかった。

要は、ユリアーナ様は何かやりたいことがあるか、他に好きな人がいるか。

目指しているところがそこじゃないのに、レールに乗せられてしまった、という感じか?


「では、そのようにはっきり、お断りになればいいのでは?」


「断ったわよ。父にも言ってもらったし。でも、合理的な根拠がないとダメなんですって。」

「…合理的な、ねえ…どなたかとさっさと婚約してしまうとか?」

「その手は…もう、遅いわね。」


そうか…。わかっていて、王子殿下の婚約者候補にプロポーズする奴はいないか。


「私ね、スキップしてアカデミアに行きたいの。だから今度の試験は手を抜かない。でもね、王室関係者は学院生活を社会勉強だと思っていて、スキップできないのよ。」


「ユリアーナ様は…勉強したいんですね?」

「……どうかな?逃げたいだけなのかもね。」

「……」


大変だなあ。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ