第5話 相関図。
アルフレート第一王子殿下の王子妃候補は3人いるらしい。前に新聞で読んだ気がしたが、あまりに自分に関係のないことだったのでよく覚えていない。
デリアが事細かく教えてくれた。ほとんどの生徒が中等部からの持ち上がりで、私のような高等部からの入学生は一握りなので、事情を知らないからよけい同情を買ったのかもしれない。
ヘルミーナ公爵令嬢。高等部2年生。Aクラス。
イザベラ伯爵令嬢。高等部1年生。Aクラス。この方は殿下と同級生になるべく、中等部を1年スキップしたらしい。努力家だな。
そして、私の隣人、ユリアーナ侯爵令嬢。高等部1年生。Bクラス。
ユリアーナ様以外のお二人は、我こそは!と前のめりの姿勢で、3人いてちょうどパワーバランスが取れているらしい。まあ…そう言う噂。
ちなみに…思った通り、Aクラスには、そう言ったキラキラした人たちがたくさんいて、その人たちの取り巻き達もいて…うっかりAクラスにならないように、普通の方々は気を使っているらしい。変に権力闘争に巻き込まれないように。賢明である。
かといって、Cクラスに至っては、ボンボンの放蕩息子や放蕩娘が、卒業できればいい、と親に言い含められてとりあえず出席しているらしく…。
(あ、Bクラスでよかった!)
と、エルナは胸をなでおろした。
「あの二人は犬猿の仲でねぇ…」
(ああ、銀髪眼鏡ね?)
「寄ると口げんかよ。中等部のダンスの練習のときなんか、あの二人が喧嘩して、エーミール様の靴に踏まれた跡が付いていたわ。」
「……」
「そーでも妙に、息ぴったりなのよね?」
(そこはそれ…似た者同士?)
ふむふむ、と感心しながらデリアの話を聞いて、相関図を完成させる。
エーミール様、伯爵令息。宰相の息子で殿下の側近。
デニス様、子爵令息。騎士団長の息子で、殿下の護衛係。
「あ、ほら見て、あれが噂の二人よ?」
デリアが指さす方を見ると、学院の中庭のガゼボに向かっているらしい、殿下をはさんで2人の婚約者候補が歩いている。
お一方はウエーブのかかった金髪を揺らし、もう一方は、赤みがかった特徴的な髪をツインテールに結んでいる。
その後ろを3歩ほど離れて、お付きの二人が歩いている。
当のユリアーナ様は…相変わらずぼーっと外を見ている。
「まあ、これもあと少しよ。今年の冬の舞踏会で、殿下が婚約者をお決めになるわ!」
デリアが耳元でこそっと教えてくれた。
ほお。




