第2話 隣の席のご令嬢。
教室に入ると、くじ引きで席が決まるらしい。
ラッキーなことに、一番後ろの席。目立たないこと、この上ない。
そう思って、机に教科書をしまい込んでいると…ざわざわと教室中が騒がしい。
…なに?
なんと…Bクラスという名にはおよそふさわしくない、金髪立てロールのお嬢さまがくじ引きした席札を手に、私の隣の窓際の席にお座りになった。クラス中の視線が…私ではなく、そのお嬢さまに集中する。
そのお嬢さまはつまらなそうにカバンを机にあげると、思い切り窓の外を見ている。
クラスメイトの皆さんは、席についても、ちらちらと私、の隣の席を見ているし。
担任の、今ほど席順のカードの入った箱を持っていた先生が、この学院の高等部での心得などを話し出す。
ふむふむ、と言いながら、必要そうなところだけメモを取っていた私。他の方々は、中等部から入ってこられた方が多いと見えて、いまさらなんだろう。
ちらっ、とお隣のご令嬢を見る。
キラキラ煌めく金髪。立てロールができるということは、侍女が沢山いるんだろうなあ。制服も靴も、学院指定の物のはずなのに、私の身に着けている物とは質まで違って見える。
あ、そうか。従姉さまが言っていた。高貴な方になると、制服もオートクチュール?
いや、まあ、それにしても…つまらなそうに外を見ていらっしゃる。
あ、そうか。不本意ながらBクラスに来てしまったに違いない。
Aクラスにはこの国の王太子や、隣国から留学して来た第二王子だの…キラキラ煌めきを放つ方がたくさんいるらしい、と、玄関先の張り紙を見ながら他の子たちが騒いでいるのを聞いたから。
…あ、爪も綺麗だなあ…色白い…瞳は…綺麗すぎるブルー!
本の中だけでしか読んだことがないけど、本当に王都にはこんなきれいな方もいるんだなあ…。
エルナは広げてメモを取っていたノートに…お隣のご令嬢の似顔絵を書き込む。
”憂い顔も美しい”
似顔絵にコメントを入れてみた。
担任の先生に資料を取りに来るよう言われて、一番前の席の子と一緒にご指名を頂いて職員室に向かう。
「あなた…高等部からね?」
「あ、はい。エルナです。よろしくお願いします。」
「私はデリア、中等部から持ち上がり組よ。あなたのお隣のユリアーナ様はね…なんだか中等部から評判が悪いから、気を付けな?中等部ではずっとAクラスのトップクラスの成績だったから、まさかBクラス落ちしてくるとは思わなくて、びっくりよ!」
「え?」
「Aクラスの女の子たちの間ではね…なんでも、お高く留まって他の子を無視したり、男の子にちやほやされていい気になってる、って。まあ、噂だけどね。あの方は王子の婚約者候補だから…まあそんなものなのかもだけど。」
「はあ。」
長い廊下は情報収集にはなかなか便利だ。
それにしても…王子様の婚約者候補かあ。なるほどな。美しいはずだ。




