第13話 愛があれば。
「お相手の身分が格下でも、愛があればいいと思います。」
「なに?どうしたのエルナ?」
ユリアーナ様は本気でアカデミア行きを考えているらしく、ここのところは昼食時にも参考書を見ながら食事している。授業中も、ひたすら自分の勉強をしているし。もう、ぼーっと外を見ている暇もないのだろう。
「先日の舞踏会で分かりました。ユリアーナ様は諦めなくてもいいと思います。」
「え?」
ユリアーナ様が参考書から目を離す。驚いた顔でエルナを見た。
「お相手がプロポーズできないのも理解しました。常識的には難しいでしょうが、ユリアーナ様も好きな人に、好きだと言ってからあきらめるべきだと思います。お相手もその気なら…既成事実を作ってしまうとか?方法はあるはずです!」
「…エルナ?」
「まあ、ユリアーナ様が殿下の婚約者に決まるかどうかもまだわかりませんが、不安要素は除外すべきですね。」
「あ…ありがとう。でもね、あの人にそんな気はないのよ。私が殿下の婚約者候補に挙がったとき、一番喜んでたわ。」
「聞いたんですか?本人に?ユリアーナ様が物分かりが良いふりをなさっているだけではないんですか?」
「だって…」
「だってもなにもありません!いいんですか?このままで、何もかもあきらめて。ユリアーナ様が王子妃になれなかったら、じゃあ、なんて言う奴なんですか?」
「…エルナ…。」
「まず…。」
エルナは骨付き肉にかぶりつきながら言った。
「まず、言いましょう。好きだって。ね?ユリアーナ様?」
「……そうね、そうするわ。」
「ずっと好きだったって、ちゃんと伝えましょう!」
「…そうね。あなたと踊ってた人も、ちゃんと伝えてたものね。いいなぁって思って見てたのよ。」
「え?」
「それでも駄目なら、きれいさっぱり諦めるわ。長い長い片思いだったのよ。」
ああ、そうか…ユリアーナ様も、普通の女の子なんだな…。
たまたま侯爵家に生まれて、侯爵令嬢として生きてきたけど。
「何の話をしているんだ?」
来たな…天敵!
銀髪眼鏡の妨害を防がなくちゃ、と、エルナは毛を逆立てる。




