第10話 ユリアーナ様。
ユリアーナ様が剣を構える。綺麗だ。無駄がないし。
ユリアーナ様が指名されて、黒板にすらすらと数式を展開していく。すごいね。
ユリアーナ様が上品に食事をとる。完璧。
…勉強になるなあ…。
エルナはノートにユリアーナ様の観察日誌を今日も付けながら…学べるところは学ぼうと思っている。先日は春の校内ダンスパーティーのためのダンスの練習会もあった。Bクラスで、ダンス講師と踊ったのは、ユリアーナ様。
そうか。当たり前ではないんだな。侯爵家のお嬢さまなら当たり前、と思っていたが、この人はそれだけ努力して来たんだ。
汗ひとつかかずに、踊り終えたユリアーナ様を見て、エルナは考えを改める。
そりゃあ、家庭教師も、ダンス講師も一流の人が付いたに違いないが、だからと言って、本人の努力なしではものにならない。イザベラ様がいい例だ。
まあ…私のように、勉強もダンスも、兄に習った娘とは雲泥の差があることは否めないが。
*****
「入るぞ、ユーリ。」
いつものようにもきゅもきゅとお昼ご飯を食べていた。
お昼休みに、ユリアーナ様の控室に入ってきたのは、銀髪眼鏡。
侍女と話をして笑っているところを見ると…昔からの知り合いなのかしらね?
「なによ?」
「あのなあ…イザベラは放校処分になった。泳がせていた甲斐があって、あいつの家も取りつぶしになるだろう。」
「…そうでしょうね。で?私に何か用?」
おいおいおい、ついに個人の控室に来てまで口げんかか?
エルナはうんざりしながら成り行きを見守る。
当たり前のように椅子に座って、侍女が運んできたお茶を飲む。ついでに、ご飯も食べている。この人…なに?
「相変わらず…お前の家のシェフは腕がいいな。」
「まあね。」
(……)
「で、ご飯を食べに来たわけじゃないんでしょう?」
「ああ。今度の学院のダンスパーティーの件なんだけどな。」
「……」
「おまえ…ちゃんと殿下と踊れよ?」
「…そんなこと言いに、わざわざ来たわけね?」
「え?ああ。」
そうだな。王子妃候補は2人になったわけだし。
黙々と食べる二人に負けないようにご飯を食べながら、エルナは思った。
なんだかな。この二人はいとこ同士?とかかな。
銀髪眼鏡はひたすらユリアーナ様の応援をしている、って感じか?
まあ…侯爵家としても王子妃になったら嬉しい?かな。関係のある家門なら、応援もするだろうし。
そして…銀髪眼鏡が心配していた学院のダンスパーティーの当日…ユリアーナ様はお腹が痛くて学院をお休みした。




