表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

第九話 3月20日14時 ~前編

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・三ツ谷 華 (みつたにはな)

蓮太と同じく乙名学科を専攻、卒業し、沙汰人として、周囲からは女史と称える人格者。監査人といわれる権力に打ち克つ役職として、活動を開始した。前髪パッツンのボブスタイル、青いタータンチェックのベレー帽を被り、服装も気品漂うお嬢様スタイルに変貌。


・羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)

乙名専攻学科卒業後、官人を束ねる官人所役となって活躍。黒の燕尾服に白のウィングシャツに黒のリボンにシューズを履いて如何にも紳士的な服装。


・美咲 園 (みさきその)

若くして蓮次と藤香の側近となり、一揆でも大きな活躍と信頼を得たことで、置田村の乙名として村設立に関わった一人。非常に平和的で、革新的。男尊女卑と古い掟から真っ向から異を唱える。


・奉日本 灯 (たかもとあかり)

通称・夢占いの巫女。日輪の貧民の出自だが、神器による夢占いで一躍大金持ちになる。現在は女性を道具にすることを反対する美咲に保護され、家族で優雅な旅館生活を送る。ちょっとした不思議ちゃんの気質がある。


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。赤島会たる野蛮組織を束ねる会長の顔を持つ。


・祖母屋 宇禰 (そもやうね)

美咲に仕える女中頭で金庫番。元は寺院で守役をする知恵と人望の持ち主。今は秘八上の美咲に流れる金を管理している。人の良さそうな笑顔を振りまく老婆。


■ ▢ ■ ▢

奴隷市場に違法宝石が闇市場にて取引されているという、ここ日輪。

都に一番近い故、表向きは商業特区とされながらも、日輪の闇を知った華と宗助。

闇市場を運営する者を、黒の仲介人と呼び、まずはその人物らを特定する事を考える華。


「美咲さんの事も気になるし、豊倉さんとは一度、夢占いの件で話をしてる…」

華が俯きながら話す。

「でも、万が一、彼らが元締めなら、調べが入ったと知った途端、隠れられてしまう、だろ?」

宗助の答えに頷く華。

「諸悪の根元は、もしかしたら美咲さんかもしれない。ううん、それぞれを任される豊倉さんや、福本さん、石井さんらが勝手にやってるだけかもしれない。全く違う誰かかもしれない。でも、それを暴くのは末端をまず現行犯で捕まえて、事実を押さえてからよね。」

華の話に、今度は宗助が頷く。

「俺も一度、本部に戻らないと。華はどう調べるつもりだ?」

「そうね、違法宝石。まずは客を装って取り入ってみるわ。」

「無理するなよ?」

「大丈夫。他の細かい案件も片付けないといけないし、しばらく時間がかかるわ。」

「急ぐ案件ではないらしいから、手堅くな。」

そう言って宗助と別れる華。


・和都歴451年 5月15日 14時 置田村・秘八上 旅館・泡沫 姫の間


「灯ちゃん、こちらへ。」

美咲が自分の部屋へ奉日本灯を案内する。

「灯ちゃん、夢占いで、私の事を少し占ってほしいの。」

「は、はい。」

「お昼寝しながら…出来るよね?」

「…はい。でも何故です?」

「うん?どうかした?」

「美咲さんの許可が降りないと夢占いはしてはいけないので、どうしてなのかなって…」

「灯ちゃんを守るためよ。」

美咲が灯の頭に手を添える。

「守る?」

「灯ちゃんの占いに大きな価値がある事を知れば、それは結果的には灯ちゃんを取り合う事にもなり兼ねない。そうなる前に、事実上、占いは無いものとした方が灯ちゃんの為…私を信用して欲しい。」

「そ…そっか…わかった、ありがとうございます、美咲さん。」

そういって美咲と灯は床に就く。

「…夢、見ないと良いですね。」

「…そうだね。」

(…私が検証した事が正しければ、夢は自分が『避けたいと思う事』以上の、自分にとって最悪なケースが夢となる…つまり、死ぬ夢を見なければ必然的にそこから1年間は死なない。フィルターをどこにかけるか…これが肝要。だからと言って、秘八上、私の国造りの行く末など、占えることでもない。とするならば、私の過去(スキャンダル)がバレる事…それは総じて国造りにも支障が出る。私の過去を知る者が、私に強迫を…有り得ない事のハズ…だが…)

そう念じて、美咲は眠りに就く。


~~~


>ここは…私の部屋?…姫の間…まさに今のこの場所?私の悲劇は…ここで起きることなの?


「美咲様、赤島さんがお出でですが?」

女中頭の祖母屋が話す。

「赤島?1人で来るとは何の用?」

「何でも交渉したいことがあるから、是非2人でと…」

「…交渉…わかった、通せ。」

美咲がそう言うと、祖母屋が玄関へ向かう。


しばらくして、赤島が入ってくる。

「久々だな。聞けば野崎には良いように使い捨てにされたとか?」

美咲が書き物をしながら話す。その姿を舐め回すように見る赤島。

「で?交渉と聞いたが?…まさか捨て石にされたことを恨み内政派に寝返る気になったのか?」

美咲が顔を上げる。

「…変わらず傲慢な女よ。交渉と言っても美咲、お前に断ることはできぬ交渉だ。」

「何?」

「ここ、秘八上を、まるで自分の王国のように治めるキサマを、俺の妃とし、俺がここに君臨する。変わることはそれだけだがな。」

「捨て石にされ、頭がおかしくなったのか?そんな交渉、応じるわけなかろう。」

美咲がそう答えると、赤島は刀を抜く。


ーギラ!


「…ならば死んで貰うまでだ。」

次回2025/10/13(月) 18:00~「第十話 3月20日14時 ~後編」を配信予定です。

   

※10/10(金)~10/31(金)は1周年記念・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
赤島がとうとう現れましたね。美咲は灯のことを守るために本当にやってるのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ