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第六話 茶談

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・三ツ谷 華 (みつたにはな)

蓮太と同じく乙名学科を専攻、卒業し、沙汰人として、周囲からは女史と称える人格者。監査人といわれる権力に打ち克つ役職として、活動を開始した。前髪パッツンのボブスタイル、青いタータンチェックのベレー帽を被り、服装も気品漂うお嬢様スタイルに変貌。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

乙名専攻学科卒業。学童会長の座も無事終え、その後、守役として学童の育成を行う。ただし、その実、九狼党としての暗躍も健在で、光と闇を使い分け、その利益を得る。髪は二つに分けて結び、カチューシャを着けて、黒と白の配色の服装が、可愛いながらも大人の雰囲気と共に、千毬の二つの顔を暗示させる。


・豊倉 完以 (とよのくらかんい)

置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。


■ ▢ ■ ▢

千毬は、奉日本灯の夢占いの効果を、危険予知夢と予想する。

そしてそれは、どんな危険を避けたいのか意識すれば、その危険予知を任意に出来るのでは?と仮説を立てた。

その効果なら、金も動くだろうし、現状、奉日本灯の人権を守るためと、彼女を匿う美咲園も、実はその効果を独り占めするつもりでは?と予想する。

しかし、現状は小さな事件を解決していこうと華は寺院を発とうとする。


「華?私はついていけないけど、大丈夫?」

「うん、ありがとう。」

華を見送りに千毬が寺院の門まで来る。

「ちなみに、次はどこ行くつもり?」

「日輪。」

華がポツリと答える。

「日輪?まさか…」

「小さな事件は何処にでもきっとある。解決していくけど、ついでに奉日本さんの事、調べてみたいの。」

「元々は日輪の豊倉の稼ぎになっていた…そこを探るつもり?」

「うん。そして美咲さんに引き抜かれたことも面白く思っていないと思う。きっと知っていることは話すと思うの。」

「そうね。」

そう言って華と千毬は別れた。


・和都歴451年 1月12日 10時 置田村・日輪 豊倉の庄屋


日輪に入り、一週間経つ華は、2つの小さな事件を解決しつつ、豊倉と会う約束を執りつけた。

「御免下さい。三ツ谷華です。」

「おお、噂の監査人のコですね。どうぞ、奥へ。」

「失礼します。」

豊倉が華を客間へ通す。

「まぁ、お掛け下さい。」

豊倉が座り、華も腰を掛ける。

「で、御用件は一体?」

豊倉はお茶を点てながら話す。

「今日は、監査人という立場とは少し違いますので、気を楽にして頂いて大丈夫です。」

「はっはっは。これは一本取られましたな。そもそも悪いことなどしておりませんよ。」

豊倉が茶釜にお湯を淹れる。

「フフ、そうでした。失礼なことを。」

「いえいえ。で、どういたしましたか?何か私に聞きたいことでも?どうぞ、粗茶ですが。」

豊倉が茶器に淹れたお茶を、華に差し出す。

「御点前、頂戴いたします。」

そういって茶を頂く華。

「…これは…結構な御点前ですね。」

「ありがとうございます。大陸から取り寄せた茶釜に今凝っていましてね。」

「確かに、良い色を出しておりますね。少し拝借しても?」

「どうぞどうぞ。」

茶釜を手に取り、嗜む華。

「これはもしや青磁でしょうか?」

「流石だ、わかりますか。そうなんです。この色、青美豊かな感じが好きでしてね。」

「素晴らしい茶器と豊倉さんの御点前、これは恐悦至極でございます。」

自慢げに話し始める豊倉に対し、一礼する華。


「ところで…」

「あ、何か質問でしたか。すみません、茶談のようになってしまいましたか。何なりとどうぞ。」

「いえ、茶談としてで構いませんよ。実は、前までこの地で夢占いをしていた奉日本さんのことで伺いたいのです。」

「た…か…も…? と…あかり! ああ、あの夢占いの巫女か。」

豊倉が思い出したように言う。

「夢占いの巫女?」

「まぁ、単純にあの娘と同じ枕で寝れば、未来の不幸を回避できるんじゃないかって、口コミになってね。」

「実際、そうなんですよね?」

「さぁ?私は彼女の活躍の場を提供し、仲介料を得ていただけ。」

「なるほど。」

「そうそう、それにあの平和主義者が文句つけに来て、夢占いの巫女を連れ去っていってね。」

「平和主義者?美咲さん?」

「ああ。少女を色んな大人と寝かせるなんて卑猥だとか言ってね。そんな商売じゃねえ!って言ってもムダでね。」

豊倉が茶釜の湯を掻き混ぜながら言う。

「多額のお金と住む所も用意されて、巫女は美咲について行っちまった。正式には親がその金に呑み込まれたようなもんだったがな。」

「親…」

「でも何でこんな話を?監査人としてじゃないって言ってたが、華さんも占いで回避したい悪い事でもしたの?」

豊倉が薄ら笑いを浮かべる。

「え?いえ…」

「はっはっは。隠さなくったって。人間何かしら、悪い所業なんてしてるもんだ。それを回避できるなら、確かにあの巫女にはもっと値がついたろう。失敗したな。」

「でも今じゃ美咲さんが占いを止めるようにと、だから占えないでしょう?」

「あ~…華さん、知らないの?」

豊倉がケダモノのような顔をして、身を乗り出してそう言った。

次回2025/8/18(月) 18:00~「第七話 日輪の闇」を配信予定です。

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