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第8話 パパごめんなさい。あなたを裏切ります

 スザンヌの父親フランクは広い土地を持ち、畑作と牧畜を営む農民だ。

 彼はフルーレの村人たちから信頼されていた。

 みんなが困っていると先頭に立って動いてくれるからだ。


 スザンヌのことも、自分のこと以上に気にかけていた。

 だから今なら、スザンヌはわかる。

 前世、大嫌いなミシェルとの婚約を勝手に進めたのは、きっとパパだ。

 金持ちの息子なら将来は困らないだろうと。


 でも今は違う。

 スザンヌはピエールとずっと仲良くしている。

 周囲はそんな2人が、将来はくっついてほしいと願っている雰囲気だ。

 だから父親フランクも、余計な気は回していないはず。

 スザンヌは少し安心している。

 

 そんな父・フランクのことを村人は、


 「男気のある人物」

 

 と呼ぶ。

 だから村人たちに推され、租税徴収係と、自警団の団長も務めている。


 フランクが治めるフルーレ村は昨年、農作物が不作だった。

 そのため今年の農民たちの生活はやや苦しい。


 村人たちのためにフランクは税率ダウンの交渉をすることにした。

 相手はラファエル司令官。

 フルーレ村を含む周辺地域の防衛と管理を広く行う人物だ。

 コワモテの軍人として知られている。

 

 スザンヌは父親に頼み込んで交渉に同行させてもらった。

 なぜなら、お告げの声は、


〈ラファエル司令官が王太子に会わせてくれる〉


 と言っていたからである。

 その人物のことを少しでも知りたかった。


 確かに、スコット王太子に一介の村人が会うのは無理だ。

 相手にもされないだろう。

 仲介者が必要だ。

 この周辺で王太子に接点がある人物といえば、ラファエル司令官しかいないのだ。

 

「ふざけるな、フランク!」


 ラファエル司令官はフランクを怒鳴りつけた。


「税を下げろだと? お前の仕事は金を集めることだろう!」


 ラファエルは、ひたすら怒鳴り散らす。


 フランクは粘り強く、農民の窮状(きゅうじょう)を訴える。


「通常の税では農民たちが餓死(がし)します。せめて10%でも」


「そんなに下げたら俺たちが餓死するだろ。馬鹿かお前は!」


「農民たちを生かさないと、みな死んでしまいます」


「クビだ!クビだ! 帰れ!」


 ひたすら罵倒され続けたフランク。


 だが最後はお情けで数%だけ税率ダウンを約束してもらった。


 帰り道、フランクは抜け殻のように疲れた表情をしていた。

 情けない姿を見られた娘とは、目を合わせることもできない。

 スザンヌは、そんな父親に声をかける。


「パパ、カッコよかったよ」


 フランクは驚いた表情だ。


「そんなわけ……」


とフランク。


「みんなのために頑張る姿、すごくカッコよかった」


 というスザンヌ。


 父フランクの目からはぼろぼろ涙がこぼれてくる。


「馬鹿野郎……」


 てれかくしで強がっている。それくらいスザンヌにもわかる。

 フランクはすっかり幸せそうな笑顔になった。

 スザンヌも幸せな気持ちになる。


 パパもママも私の自慢だ。


 でも、パパ、ごめんなさい。

 私はパパに隠れて旅立ちの準備を始めます。


 スザンヌは前世でのことを思い返す。


***********************************


 前世では、神のお告げのことをみんなに話してしまった。

 だから、フルーレ村の誰もが知っていた。

 スザンヌが王太子の仮王宮・マルカに向かおうとしていることを。


「スザンヌ、この村から出ていかないでおくれ」


 父・フランクは可愛い娘を手元に置いておきたがった。


「スザンヌが兵隊たちと一緒に旅立つ夢を見た」


 という父は、息子3人に、


「妹スザンヌを監視しなさい。もし出ていこうとするなら、私がこの手でスザンヌを殺めてしまうかもしれない」


 と言った。


 スザンヌにとって、まるで檻に入れられたような監視下の日々が続いた。

 ただ一人の協力者が現れるまでは……。


 その協力者が、母・シャルロットだった。

 娘の気持ちを案じて、こっそり有力者に引き合わせてくれた。

 おかげで、村を出ることができた。

 でもいろんな人を騙して裏切る旅立ちだった。

 特に父フランクは怒りと悲しみで嘆き続けた。


**************************************


 父を悩ま続けたことは、今でも後悔している。

 だから今世では、せめて周りをハラハラさせないように静かに旅立ちたい。


今夜はいつもどおり20時過ぎにアップしますね♡

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