第7話 バレたら、また地獄行きなのです
ようやく涙が止まり始めたころ。
母シャルロットが庭にひれ伏して泣いている娘スザンヌの姿を見つけた。
驚いてスザンヌに駆け寄る母シャルロット。
「私の可愛いスザンヌちゃん、いったいどうしたの?」
「神……」
と言いかけたスザンヌ。
はっと気がついて青ざめた。
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前世のスザンヌは、ここで家族にすべてを打ち明けた。
「神のお告げを受けた」
と。
その結果、起こったこと。
まず、家族が大騒ぎとなった。
父と母はスザンヌの気が触れたのではないかと本気で心配した。
兄3人と妹はスザンヌが見た天使・聖女について興味津々で聞いてきた。
ほどなく「神のお告げ」の話はフルーレ村じゅうに広がった。
スザンヌはその後も、
「神のお告げに従って、聖なる戦いに向かいます」
と言い続けた。
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〈それで本当によかったの?〉
あの頃、スザンヌの動向は村人の注目の的になっていた。
〈そのぶん、私にやってくる災いが増えたんじゃないかしら?〉
とスザンヌは思う。
ミシェルと婚約させられたのも、きっとそのせいだ。
父のフランクが金持ちの息子が相手なら、と内緒で話を進めてしまったのだろう。
であれば、ここは機転を利かせるしかない。
「ママ。庭を走ってたら転んじゃって。あまりに痛いから泣いていたの」
とスザンヌはひと芝居打った。
「あら、たいへん。すぐに手当しなくちゃ」
と心配する母シャルロット。
「大丈夫。打ちどころは悪くなかったみたいで、すぐに痛みは引いたから」
と場を収めるスザンヌ。
「よかった」
と安堵の表情になる母シャルロット。
ところが彼女は突然、こう続けた。
「スザンヌちゃん、ところで最近、修道院に行ってるでしょう」
スザンヌは心臓が飛び出すほど驚いた。
学校に通っていることがバレた!
母シャルロットに怒られることを覚悟した。
しかし彼女は怒らなかった。
落ち着いた口調でこう言う。
「パパには言ってないわ。見つかったら大変だから」
「えっ!?」
母の意外な反応に驚くスザンヌ。
「スザンヌちゃんの気持ちはわかるもの。勉強したいのよね。でも無理しないで」
と母シャルロットはスザンヌの手を握る。そして続ける。
「それと、ママへの秘密は作らないでね」
スザンヌは母の手を握り返していう。
「わかったわ、ママ。ありがとう」
少しスザンヌの胸が痛む。
その後も天の声はスザンヌを訪れた。
神からの使いが彼女に使命を語る。
そのたびスザンヌは大きな感激と高ぶりを味わう。
しかし、そのことは、まだ家族にも、まわりの人にも内緒にしている。
誰も知らないままの秘密の使命。
いまだスザンヌの胸の中に眠ったままだ。
のどかな村の中、それを現実にできる日は来るのだろうか?
明日からいよいよ、物語は動き始めます!
14時ごろに投稿するつもりです♪
夜はいつもどおり20時過ぎにアップしますね♡