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第61話 秘密の関係

 アンジェリーナは弟の墓参りに訪れた旅先で病に倒れ亡くなった。


 突然の死だった。


 ジャンヌは一日中、泣き続けた。

 もう会えない優しいアンジェリーナのことを想って。


 と同時にスザンヌは、覚悟を決めていた。

 これからグランド国へ引き渡され、過酷な日々を送ることに。


 アンジェリーナの死はディート城を悲しみに包み込んだ。

 ただ一人を除いて――。


 ジュネ2世は大急ぎで阿闍梨(あじゃり)公に使者を出していた。


〈相続権の件が解決。スザンヌをグランド国に引き渡すことができます〉


 ジュネ2世はアンジェリーナから、きつく言い渡されていた。

 捕虜として捕えたスザンヌをグランド国に売ったら、「領地の相続権は剥奪する」と。

 しかしそのアンジェリーナはもういない。

 スザンヌを売っても領地はそのまま相続することができる。

 ジュネ2世は内心、ホッと胸をなでおろしていた。


______________________________________________________________________


 一方、セーヌ国の騎士たちとの会談を終えたアランシモン。

 その後、敵側のシニョーラ公国に足を運び、領主の阿闍梨公のもとを訪れた。


「ごぶさただな」


 とアランシモン。


「前に会ったのは、あなたがセーヌ国元帥を務めていた時だ。あれ以来ですね」


 と答える阿闍梨公。


************************************


 2人は古くからの付き合いだった。


 両者はかつて少年時代を共に過ごした。

 2人とも、騎士修行をかねて、親元を離れシニョーラ公国の領主に預けられたのだ。

 阿闍梨公は後にシニョーラ公国の領主となり、グランド国と同盟を結んだ。

 一方のアランシモンはグランド国軍で活躍していた。 


 ところがある日、アランシモンに異変が起きた。

 彼は当時のグランド国の総司令官のひと言に激怒した。


「お前は腰抜けの役立たずだな」


 この侮辱に、アランシモンは謝罪を要求した。 

 しかし総司令官は、


「たかが冗談だろう」


 と取り合わない。

 アランシモンの怒りは頂点に達した。

 彼は怒りに任せて怒鳴り散らし暴れ回った。

 そしてグランド国陣営には二度と戻らなかった。 


 その後、アランシモンはセーヌ国軍に迎えられる。

 スザンヌがセーヌ国軍に参加する、ずっとずっと前の話である。

 

 アランシモンは頭角を表して、みるみるうちに高い地位に昇格していく。

 そしてセーヌ国の国王に次ぐNO2の地位である「元帥」となった。


 するとアランシモンは、かつて仲間である阿闍梨公と密かに連絡をとり始めた。

 セーヌ国にとっては敵国の領主である。

 接近したのには訳があった。


〈憎いグランド国軍を潰してやりたい〉


 そのために裏で手を組んでおきたかったのだ。


 一方の阿闍梨公もグランド国軍の高飛車な言動に、うんざりしていた。

 同盟国とはいえ、いつも偉そうに命令してくる。

 セーヌ国が盛り返してきたら手を組むのにやぶさかではなかった。


〈機を見てグランド国軍を一気に叩く〉


 その密約は水面下で進められていた。


 しかし思わぬ罠があった。

 それはセーヌ国の宮廷貴族のシャビネスの存在だった、


 シャビネスは頭のいい男だった。

 アイデアも豊富で仕事も速い。

 アランシモンは彼を見込んだ。

 そして国王に推薦した。


「シャビネスを宮廷の筆頭侍従にしましょう」


 しかしそれがアランシモンの転落のもとになった。

 シャビネスは本性を隠していた。

 邪魔な者は悪知恵で闇に葬り去る、恐ろしい男だったのである。


 アランシモンを利用して、のし上がったシャビネス。

 宮廷を仕切りつつ裏で私腹を肥やしていく。

 やがて正義感の強いアランシモンが邪魔になる。

 するとシャビネスは彼の悪い噂を宮廷や国王筋、騎士にも流し始めた。

 追い詰められていくアランシモン。

 当時の国王にも、あらぬ疑いをかけられ、問い詰められた。


「ふざけるな! 俺を誰だと思っているんだ!!」


 アランシモンは城の大広間で癇癪を起こし、わめきながら暴れまわった。

 その結果、宮廷から追放された。

 

 以来、スザンヌに招き入れられるまで、セーヌ国軍からは離れていたのである。


**********************************


 再開の挨拶を終えた阿闍梨公とアランシモン。

 阿闍梨公はビジネス仕様の顔になり、アランシモンにこう言い放つ。


「あなたは貧乏騎士でしょう。私はお金のない人には用はありませんよ」


今夜も投稿しますね♡

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