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第6話 魂を震わす天からのお告げ

 スザンヌが読み書きを身につけた頃、それは起きた。

 前世でも経験した、大切な出来事だ。

 

 夏の真昼のまぶしい光がマルク家の庭を包んでいた。

 花に水をあげようと庭に降りた時。

 スザンヌが右手に持つ上呂(じょうろ)の方から、強い光が向かってきた。

 夏の光よりもっと強力な白い光だ。

 光は教会がある方向から差していた。


 光とともに、神々しい声が聞こえてきた。


「セーヌ国軍へ向かいましょう」


「グランド国を打ち破りなさい」


「王太子を国王に即位させるのです」


 その声を聞いたとき、スザンヌは恐怖を感じた。


 スザンヌが強い光の中心を見ると、3つの人影があった。

 それは、このうえなく美しい姿だった。


 背中に羽根が生えた男性の大天使・ボードル。

 戦いのリーダーで手には剣を持つ。

 力強く勇ましく、凛々しい姿だ。


 若々しく綺麗な顔立ちなのは乙女聖人・エリース。

 足元には竜を従えている。

 彼女はかつて竜の悪魔に飲まれた。

 しかし十字架で竜の腹を裂き脱出したといわれる。

 出産や労働などの守護聖人である。


 そして聖女・ランシーヌ。

 長い髪に色白の肌。

 整った目鼻立ち。

 神の教えを擁護して拷問を受け、殉死した過去を持つ。

 学問と知恵の守護聖人として知られる。


 神々しく輝く3人がスザンヌに語りかける。


 まずは大天使ボードルが力強く語りかける。


「いま、セーヌ国は最大の危機にあります」


 続いて乙女聖人・エリースの愛らしい声。


「侵略国家・グランド国を駆逐しなさい」


 これを受けて、聖女・ランシーヌが清らかな声で告げる。


「そして王太子・スコット7世を国王継承の地・クレバに連れて行き、即位させるのです」


 そう言い残すと、3人の姿は次第に消えていく。


 スザンヌは今まで感じたことのない高ぶりを感じていた。


〈ずっとこのままでいて。帰らないで〉


 しかし無情にも願いはかなえられず、その姿は夏の光の中に完全に消えてしまった。


 スザンヌは膝から崩れて泣きじゃくった。

 あまりの喪失感、押し寄せるさみしさは抑えることができなかった。


 これまでスザンヌは、ずっと自問自答していた。

 2度目の人生をやり直すにあたって、

 セーヌ国を救うための戦いに立ち上がるべきか否かを。


 戦場に行かなければ、このフルーレ村で普通の女性として暮らせる。

 もしミシェルとの婚約騒動が起きても、今度はもう少しうまく処理できるだろう。

 そして愛する男性を見つけて、ささやかだけど穏やかな家庭を作って暮らすのも悪くない。

 火あぶりで殺されるよりは、よほどいい選択肢だ。


 ……と考えていたのだけど。

 スザンヌは、もう出会ってしまった。

 3人の光のお告げに。

 魂が震える感動に。

 

〈神様のお告げにしたがいます〉


 スザンヌの心はもう決まっていた。

今夜も、20時過ぎに投稿しますね♡

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