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第4話 運命を変えるための決意

 なぜ、前世では、あんなことが起きてしまったのか。

 大嫌いなミシェルとの婚約……。

 それはスザンヌにもわからない。

 自分の知らないところで、誰かが勝手に結婚話を進めてしまったのだ。

 スザンヌも防ぎようがない。

 

 前世のスザンヌは当然、これを拒否した。

 するとミシェルは「婚約不履行(ふりこう)」でスザンヌを訴えた。

 裁判が始まってしまった。

 ここでスザンヌはとんでもない苦労をすることになる。

 スザンヌは文字が読めない。

 文字じたいを学んでいないからだ。


 同じ年頃の少年少女の中には、勉強熱心な子もいた。

 しかしスザンヌは学ぶことに興味を持てなかった。

 それよりはママが教えてくれることのほうが大事。

 お仕事や家事を覚えたほうが役に立つし、楽しい。

 スザンヌはそう思って、勉強を放棄していた。


 しかし前世での裁判で待っていたのは山のような書類。

 それらを、ひとつひとつ代読してもらうしかない。

 そして提出する書類も、人に書いてもらうしかない。

 それでは、自分の思いが伝えられない。

 いろんなことが抜け落ちたりする。

 納得いかないまま、いろんなことが進んでしまう。

 叫びたくなるほどイヤな思いを何度もした。


 あんな気持ちはもう味わいたくない、とスザンヌは思う。


「ママ、わたし、文字を教えてもらいたい」


 と、ある朝、スザンヌは母シャルロットに言った。

 母シャルロットは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。


「えっ!? どうしちゃったの? スザンヌちゃん。あなたが勉強だなんて……」


 そんなふうに思われていたなんて、とスザンヌは少し傷つく。

 だけど、気を取り直して、


「わたし、いまのままじゃ、いろんなことができない」


「できなくてもいいんじゃない?」


 と母シャルロット。こう続ける。


「家事もお仕事もできるスザンヌは家族を幸せにしてあげられる。それで十分よ」


〈そう、私もそう思っていた、これまでは〉


 とスザンヌは思う。


〈でも、ここでママの言うことに納得してしまったら、何も変わらない〉


 スザンヌはあらためて決意する。


「それじゃダメなの」


 とスザンヌ。こう続ける。


「いまのままじゃ、私はなにもわからないまま大きくなっていく」


 母シャルロットは、スザンヌの変化に不安そうな表情をしている。

 しかしスザンヌは続ける。


「文字が読めないと、たとえば旅ひとつできないわ。自分のことが自分でできるよう、読み書きできるようになりたいの」


 それを聞いた母シャルロットは黙ったまま考え込んでしまった。

 複雑な表情だ。

 しばらくして母シャルロットが口を開いた。


「そんなことをパパに言ってはダメよ」


〈ああ、やっぱりダメか〉


 とスザンヌは失望する。

 母シャルロットが続ける。


「パパはスザンヌのことが可愛いから、早く幸せな結婚をしてほしいと思ってる。だから勉強してほしいなんて思ってないの」


〈やはりそうだ。この村のほとんどの人は、女に勉強は必要ないと思っている〉


 スザンヌは心の中でため息をつく。


〈みんなのその考え方が、私をしばりつけていた……〉


 そして前世では、その弱みが、スザンヌを地獄へと導いた。


**********************************


 セーヌ国の危機に現れて救世主となったスザンヌ。

「男装の聖女」として勇敢に敵と戦った。

 しかし戦いの中、敵国の捕虜となる。

 敵国はスザンヌを魔女裁判にかけて有罪とした。


 魔女裁判は一度では処刑されない。

 二度目の有罪で処刑対象となる。


 敵国はスザンヌを二度目の有罪にするため罠をかけた。

 読み書きのできないことを利用したのだ。


 スザンヌは誓約書へのサインを求められた。

 これを破ると二度目の裁判にかけられる。

 しかし文面はスザンヌにはわからない。

 文字が読めないからだ。

 それをいいことに、口頭で虚偽の説明をされた。

 自分の名前をサインする。

 しかしその誓約書には、


〈神の教えに反するから、女性である私は、男用の服は着ません〉


 と記されていた。


 スザンヌ裁判の後、牢に投獄された。

 牢には誓約書どおり女性用のドレスが用意されていた。

 美しいスザンヌがそれを着ると、男たちが目の色を変えた。

 スザンヌを欲望の対象として見てきたのだ。

 看守をはじめ、周囲の男たちは何度も襲いかかってくるようになった。

 スザンヌは純潔を守るため、必死に抵抗して撃退するしかない。


 やむをえず、男装に着替えた。

 すると、


〈神の教えに反する〉


 として二度目の魔女裁判にかけられてしまったのだ。

 その結果、火あぶり処刑!


 ああ、いま思い出しても腹が立つ。

 スザンヌは怒りに震える。


 この運命、自分で変えるしかない!

毎日、20時過ぎに更新します♡

明日もよろしくお願いします♡♡

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