第3話 「永遠の誓い」は突然に
2人に向けて爆薬を放ってきたのは青年ミシェルだった。
街の名士の息子である。
それだけではない。ミシェルは猟犬を放つ。
精悍な体つきの猟犬が、2人が連れてきた動物たちを追い回す。
大騒ぎでぶつかり合い、転びながら逃げ回る動物たち。
それを見てミシェルは大笑いする。
なんとか牛や豚の群れを立て直すピエール。
スザンヌが世話する羊たちのことも守ろうとしてくれる。
そんなピエールを頼もしく思うスザンヌ。
動物たちも落ち着きのある彼に従い始める。
しかしミシェルの横暴は続く。
「ガキども、待ちやがれ」
と追い回し、爆薬を投げつけてくる。
再び爆音が上がる。
必死に逃げる2人を見て、ミシェルは満足した表情だ。
勝ち誇ったように腕を組み、
「見たか! この村はこの俺のものだ」
とミシェルは言い放った。
ピエールとスザンヌは放牧地を離れてロコぺ川まで行き着いた。
「もうここまでは追ってこないだろう」
ピエールが言う。
「スザンヌ、怖かった?」
とピエール。
「でも、ピエールと一緒だから平気」
とスザンヌ。
ピエールがスザンヌを見つめて言う。
「僕、スザンヌをずっと守るよ。約束する」
このときスザンヌに前世の記憶がよみがえる。
前世でも、スザンヌはピエールにそう言われた。
そのとき、どう返事したかしら?
スザンヌは振り返って思い出す。
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「そんなの悪いよ。ずっとなんて大変でしょ」
当時のスザンヌは、そう答えた。
すると、ピエールの顔はあからさまに寂しそうになって、
「そうか……」
と力なく言った。
スザンヌはピエールの調子におかまいなく、こう続けた。
「大丈夫。自分でなんとかするから。心配しないで」
そう言われて、ピエールは明らかにがっかりした。
以来、ピエールの態度は変わってしまった。
いつもとかわらないように振る舞おうとする。
だが、よそよそしくなったのがわかる。
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スザンヌは当時、ピエールの気持ちを気にもしていなかった。
〈また、同じことを繰り返してよいのかしら?〉
このままじゃ、いけない。
スザンヌはピエールに微笑みかける。
そして言う。
「ありがとう。そう言ってもらえて、とてもうれしい」
それを聞いたピエールの笑顔は弾けた。
「うん」
すごく嬉しそうなピエール。
少し小ずるいかもしれない。でも、
〈いろんな人に味方になってもらわないと〉
とスザンヌは思う。
全ては火あぶり処刑の回避のためだ。
スザンヌは同時に、もうひとつの大きな問題を思い出す。
元凶は、さっきのミシェルだ。
こちらも前世の話。
もう少し時が経っと、
〈ああ、今でも思い出したくもない……〉
スザンヌはミシェルと婚約させられてしまうのだ。
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