第11話 覚悟のリベンジマッチ
スザンヌはいったん、カミーユとともに村に戻る。
ほどなく、グランド国軍は新たな作戦を開始した。
セーヌ国の重要都市・パビリオンの包囲である。
国土を横断する川に面しており、セーヌ国にとっては防衛の拠点。
軍事上でも経済上でくも重要な意味を持つ都市だ。
ここを攻め落とせば、グランド国は一気に内部まで攻め込める。
さらにセーヌ国には内部でも対立があった。
セーヌ国内に古くから存在する「シニョーラ派」勢力である。
彼らが支配する地域は「シニョーラ公国」と呼ばれ、スコット皇太子と敵対してきた。
今回の戦争でも、グランド国と同盟を結んでいる。
そしてセーヌ国土の北部と東部を続々と占領。
王位継承のための聖地クレバさえ、グランド王国勢力が侵攻していたのである。
天からの声が、あらためてスザンヌのもとにやってきた。
〈一刻も早く、スコット王太子に謁見して、パビリオンの解放に向かいなさい〉
スザンヌは前世を思い出していた。
再びラファエル司令官の邸宅があるエルドラ町に向かったスザンヌ。
故郷へは、二度と戻れなかった。
旅立ってしまったら、もう帰ることはできないかもしれない。
戦いに向かえば、パパにもママにも、もうほとんど会えないだろう。
〈それでも……私は天の声に導かれて生きなくてはならない〉
スザンヌは決意を決めた。
「もういちどカミーユ叔父さんのところに連れてって」
スザンヌが母シャルロットに切り出すと、シャルロットも娘の心の中を察したようだった。
なにも言わず、スザンヌの体を抱きしめた。
スザンヌも母を抱きしめた。
何も言わず、二人は抱き合ったまま涙を流した。
朝早く家を出るとき、父と兄3人、妹が見送ってくれた。
何も知らない無邪気な笑顔だ。
スザンヌとシャルロットは必死で涙をこらえて、笑顔で手を振った。
「行ってきます!」
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「また、おまえらか……」
エルドラ町のラファエル司令官邸宅。
スザンヌとカミーユが部屋に入ってくると、ラファエル司令官は呆れたような表情を見せて、こう続ける。
「何の用だ?」
「グランド国勢力が今、パビリオンを包囲しています」
こう口火を切ったのはスザンヌだった。
1回目はカミーユに任せっきりだったが、今度はスザンヌが話を進める。
「セーヌ軍も対抗していますが、まもなく起こる決戦で、グランド国軍に破れてしまうでしょう」
スザンヌは確信を持って言った。
天の声がスザンヌにそう予告していたからだ。
それを聞いたラファエルの顔色が変わった。
「なんだと!? そんなはずは……」
セーヌ国軍はパビリオン防衛のため、特にこの地の戦力を手厚くしていた。
負けることを予想する者は、セーヌ国軍の中で誰もいなかった。
「この前も申し上げましたが、このままではグランド国に国土を占領されます」
と訴えるスザンヌ。こう続ける。
「ですがら私を、仮王宮マルカのスコット王太子のもとへ向かわせてください」
ラファエル司令官の顔に怒りの色が浮かぶ。
隣の叔父カミーユの体は恐怖で震えている。
誇り高き軍の幹部・ラファエル。
まだ幼ささえ残る小娘が、目の前でセーヌ軍の敗戦を予告する。
そんなことをされたら、冷静でいられるはずはない。
怒鳴り声を覚悟したスザンヌ。
だが、ラファエル司令官はその怒りを押し殺した。
そしてこう言う。
「ふざけたその予言が当たったら考えてやろう。しかし外れたら、そのときは軍を侮辱した代償を覚悟しておけ」
「わかりました」
スザンヌは冷静に答える。
この前の訪問では、スザンヌは最後にラファエル司令官をあえて挑発した。
〈セーヌ国を救えるのは私だけ〉だと。
ラファエル司令官は感情のままスザンヌを平手打ちした。
〈でも小娘相手に本気になって、後悔したに違いないんじゃないかしら〉
おかげでラファエル司令官の記憶にスザンヌのことは強く残ったはずである。
しかもグランド国に攻め込まれる展開も、当時スザンヌが予告した通りになっている。
ラファエル司令官は、もう怒鳴り声を上げなかった。
「今日は下がっていい」
と落ち着いた調子で言う。
2人は一礼して、ラファエル司令官の邸宅を後にした。
明日は18時過ぎに投稿します♡




