79 姿の認識
ネモを肩に乗せて延々と中級MP回復薬の量産に勤しんだ昨日の夜から一夜明け、現実では朝7時、こっちでは深夜1時。聖王国王城の一室にて体を起こす。
今日も今日とて、特にアセヴィルからは何も言われていないので用事は無い。
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お知らせ:神前の闘技について。
開催までちょうど2週間となりました『神前の闘技』ですが、詳細な日程が決まりましたのでお知らせいたします。更に試合におけるルールに改訂が入りましたのでこちらも併せてお知らせいたします。
まず開催の日程ですが、現実日本時間で明後日、朝7時より開場となります。
試合開始はこちらの時間で深夜1時30分ごろを予定しております。
試合はトーナメント形式とバトルロイヤル形式の2種を予定しております。
それぞれ会場が異なりますので、開場してから移動する際に表示される仮想ウィンドウから選択していただくこととなります。
開会式はトーナメント形式で使用される闘技場にて行われます。
バトルロイヤル形式で使用される闘技場でも開会式の様子は観戦することが可能です。
ここからは試合におけるルールの再度の説明となります。こちらは神炎霊の招待状からも確認することが可能です。
まずはどちらにも共通するルールから。
・パーティーでの参加は原則禁止です。プレイヤーとプレイヤー、プレイヤーとNPCの組み合わせ、など。
・一部使用不可、禁止のスキル及び術陣が存在します。当日、該当のスキル及び術陣は参加者のステータス画面においてグレーアウトとなります。
・試合中、必要以上に相手参加者を痛めつける行為が確認され次第、即失格となります。
・回復薬系のアイテムは1試合につき、1種類3個まで使用可能です。
・その他通常アイテムは1試合につき、1種類2個まで使用可能です。但し、一部使用不可となるアイテムも存在します。
・一度使用したアイテムは次の試合でも変わらず同じ数使用可能です。神前の闘技が終了した時点で開始前の状態に戻されます。
・試合時に獲得されるはずだった分の経験値については、神前の闘技終了後にまとめて反映されます。
これより先はそれぞれの形式のルールの再度の説明となりますが、このメッセージの送信より前にすでにどちらかへ参加申請を行っている方へはその形式のルールのみ説明いたします。
以下、トーナメント形式の詳細なルールとなります。
・トーナメント形式への参加申請と同時に参加者のブロック分けが行われます。
・契約術などで契約した聖魔物は1体まで参加させることができます。聖魔物はこの場においてはNPCの区分ではありませんので、パーティーでの参加ではありません。
・プレイヤーとともに参加する聖魔物は一定の強さまで制限されます。
・試合時間は基本5分までとなります。5分を過ぎても決着がついていない場合、その時点での残りHPで、割合の多い方の勝ちとなります。
・準決勝、決勝のみ試合時間の上限はありません。どちらかのHPが全損するまで戦ってもらいます。
最後に、トーナメント形式とバトルロイヤル形式の優勝者への贈呈品ですが、50以上のスキルポイントと称号となります。
それぞれの全行程が終了した暁にはそれぞれの優勝者同士の試合も予定しております。ぜひこれを目指して頑張ってください。
これからも『The world of infinite permanence』をよろしくお願いします。
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この部屋から出ようと扉に手を掛けた瞬間に、今までに見たことの無いぐらいの長文のアナウンスが飛んできた。
どうやら面倒くさい手順を踏まずにでも詳細を確認させてくれる感じのやつだ。ついでに詳細な日程を添えて。
まぁ最初からこうしてくれればという気持ちもありつつ、しかし俺はもう昨日のうちに申請してそのついでに読み込んで大体は解ってる内容なんだよな。
だけどまぁ招待状の方に書いてなかったこともあるから、本当に最初からこれを飛ばしてくれよと、そう言いたい。
それほど読まれていなかったのかもしれないな。招待状の方が。掲示板でもちょくちょく見かけたし。
まぁいいや。
取り敢えず追加の情報も殆ど理解できたし、殆ど俺にはそんなになあれっぽかったから。
閑話休題。
……今日はどうしようかな。
本当にアセヴィルからは何も言われてないし、こっちは深夜だし……、まずスヴァさんに連絡してみるか。ちょうど数秒前にログインしたみたいだし。
という事で、メッセージを送ってみると向こうも何の予定もなかったらしいので、冒険者ギルドでの待ち合わせとした。
『今からはどちらに向かいますか?』
「お、えーと、冒険者ギルドだな」
そういえばネモって誰でも姿を見られる状態なのかな? 姿を消せるとかできるんだったらそれが一番いいような気はするけど。
「ネモって今の状態だと他の人とかには認識されるのか?」
『そうですね、イズホさんのみに姿を認識させることも可能ですが、そうした方がよろしいでしょうか?』
「どうなんだろうな。精霊っていう風にネモの事を認識するのか、それともただヒトの肩に乗ってる小さい聖魔物の感じで認識するのか。で、精霊って認識したとして、何かが起こるのなら認識できないようにはした方がいいと思うんだけど」
『どうなのでしょう。そもそも今の人々が精霊を認識できるのかも私には分かりませんし…………、いえそうですね。どうなるか分からない以上、私の姿は認識できない方がいいですね』
そう言ったネモは小さく何かを呟くと、少し雰囲気が変わったような気がする。本当に少しだからそっちに目を向けてなかったら後からは気が付かなかっただろうな。
「俺にはそんなに変わったように思えないけど、それで大丈夫なんだよな?」
『はい、今はイズホさんのみ私の姿を認識できるはずです。なのでヒトが居る近くではあまり私へは話しかけない方がよろしいかと』
「ん、分かった」
ちょうど城を出たところなので、ここからは基本無言で行くとしよう。
……いやでもそんなに気にはしなくて大丈夫か。こんな深夜に出歩いてる住民なんて数えるほどしかいないだろうし。




