S:T-2-1 アグニア防衛
ゲーム内掲示板などでワールドクエスト『逸竜の狂踊』についての情報が飛び交っている中。
僕はパーティーメンバーと共に、北の火山の麓のアグラストゥア王国に辿り着いた。
フレイトゥル王国王都の冒険者ギルドでパーティーメンバーの募集をして集まった、剣術士のライルと盾術士のドラン。僕と同じく術師のアルティと1匹の鷹を連れた契約術師のプルモリアスで、アグラストゥアへと行くためのエリアボスを倒してここまでやってきた。
正直このゲームでプレイヤー同士のパーティーを作ったとしても、その予定を合わせることが難しいから意味の無いものになりやすい。けど、僕たちにはそれは当て嵌まらなかった。
パーティーを結成してから数日が経ってから判明したことだが、このパーティーの全員が学生だったらしい。
同じ学生だからといって夏休みまで完全に同じ日にちとなるわけじゃないけど、不思議と同じ日にちで取れる時間もだいたい同じ。だから他のプレイヤーと比べると、少しはスムーズに進むことができたんじゃないかなと思う。
「タクマ君、どうします? 今回のワールドクエスト、順番的に最後の方に敵が来るらしいですけど、時間合いますかね」
「うーん、どうなんだろう。今竜がどこに居るのかさえ分かってないらしいし……」
ワールドクエスト『逸竜の狂踊』のアナウンスでは、一番初めに襲われるのは聖王国というところらしい。
その国にプレイヤーはいないのか、ゲーム内掲示板では竜の目撃情報などは出ていない。もしかしたら目撃情報はあったかもしれないけど、僕たちは見つけることができなかった。
アナウンスでは、東、南、西、北、中央の順で竜が襲ってくるとなっていた。つまり、僕たちの居るアグラストゥアは4番目に襲われるという事になる。因みにヴィデュールの街は過去に1回も襲われたことは無いんだとか。
鷹を肩に乗せたプルモリアスが訊いてきたのは、これに対して街を防衛するのか、というのも含まれているんだろうけど、防衛前提でいつまでにそれの時間が、時期が判るのかという事かな。
「まぁ南のグラムストゥールだっけ? そこを竜が襲ったっていう情報が出たら、ある程度は時間を合わせることは出来ると思うよ」
「そうだな。まぁそれまでのんびりこの近くの敵でも倒したりして、様子を見よう」
僕の言葉に同意したのはドランだ。
まぁドランの言う通り、いつもの様にしていればいいかな。
竜が逃げることはない、いや逆に向かってきてくれるんだから。
それに合わせて時間を調節するだけだね。
△▼△▼△
冒険者ギルドで依頼を受けつつ聖、魔物の討伐をして、現実で1日が経過した。
昨日の昼過ぎくらいにグラムストゥールの街が竜に襲われて、夜のうちに西のドトゥラーユ王国の街が襲われたらしい。
少し時間の齟齬ができるかもだけど、今日の朝8時、ゲーム内でも朝8時くらいにアグラストゥアの街、今僕たちが滞在している街に竜が来るとゲーム内掲示板で考察が書きこまれていた。
僕たちはその情報を見た昨日のうちにこの街『アグニア』に移動し、すぐに宿を取ってそのままログアウトした。
そして今日。ログインした瞬間に街の警報の鐘が鳴り響き、竜の襲来を告げていた。
取り急ぎアイテムボックスから武器防具を取り出して装備して、宿の1階に降りる。
すると僕が一番最後だったのか、他の4人はすでに準備を終えて僕を待ちながら話し合っていた。
「お、来たか」
「待たせてごめん」
それほど時間は掛かってないと思うけど、待たせたのは事実だからね。
「そんなに待ってないよ。1分ぐらい前に君以外の4人が集まったから」
「そう? でもまぁ待たせたのは待たせたから、ね」
「そんな事はどうでも良いから、とっとと竜の姿を見に行こうぜ」
そんな事ではないと思うけど、それがライルなりの気にしていないという姿勢なのかな。
「それもそうだね。僕の準備は済んでるから皆が大丈夫なら行こうか」
僕の言葉に皆それぞれ了解の意を返してくれたので、会話もそこそこに、宿から出て竜が来ると予測されていた西門の方へ向かう。
……特にリーダーは決めていないけど、僕がリーダーみたいになってる。なんでだろう。
比較的西門に近い宿を取っていたからすぐに辿り着き、門近くの片隅に陣取る。どうやら竜はまだ、望遠鏡などで見えたぐらいで、それほど近くに来ているわけではなかったようだ。
「取り敢えず、ここで竜が来るまで待とうか」
「そうですね」
その時が来るまで各々で暇を潰してもらって。僕は僕で過去2回、ゲーム内掲示板に書かれた竜に関する情報を纏める。
まず第一に竜は風系統の術を使うらしい。下級の風術と中級の烈風術とそれ以上の術と思われるもの。
これにより戦場をかき乱し、風により飛ばされたり風の壁で防御したりするみたいだ。
今現在のプレイヤーのレベルでは中級までの術なら当たったりしても生き残りはするかもだけど、それ以上となると即死するかもしれない。
第二にというか一番の竜の特徴はその姿かな。
そっち方面に耐性がなかったら気持ち悪くなるかもしれない。それほどまでに奇妙な姿だった。まぁ僕は掲示板に投稿されてたSSを見ただけだから、実際に見るのとは違って見えるかもだけど。
少しは耐性があると思ってる僕で気分が少し悪くなったからなぁ。全然耐性がなかったらと想像すると、――
――キュオォォォッッッ!!!
唐突に耳をつんざく程の音が響いてきた。
音のした方向を見ると、その上空に歪な竜が飛んでいた。




