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44 逸竜の狂踊-周期-小さな2つの影と1つの大きな影


 俺の口から出た竜の姿形について考え込んでしまった団長さん――ハフィニストさんだったが、俺がこの場にいることを思い出したのか、すぐに戻ってきた。


「失礼。少々考え込んでしまったが、話を戻すとしよう。

 それで、貴方の話では他にも、同じように竜に襲われた方が居るようであったが、そちらは?」

「俺に連絡役を任せて竜の攻撃を引き付けてくれてます。たぶん真っ直ぐにこの街に向かう訳ではなく、蛇行を繰り返しながら時間をかけてこの街に向かってると思います」

「そうか。この街に寄せ付けないのであれば最善であったが、それも仕方のないことか。いずれにせよ、その竜が過去の竜と同様の動きをするのであれば、ニンゲンの居るこの街を襲いに来るのは決定された未来であるだろうからな」


 やっぱり、今回の竜は以前までの竜とは違う点があるらしいな。


「因みに、その過去の竜の動きだったりは、どんなものだったんですか?」

「知らないのか?」

「はい。異邦人なので、この世界の事には詳しくないんですよ」


 そういえば俺が異邦人ってことを説明してなかったな。


「そうか、貴方は異邦人だったか。であれば知らないのも無理はない。

 こういった竜による襲撃がいつから始まった物かは定かではないが、1つ確かな事として、この襲撃は周期的に発生するもの、と我々は認識している。

 その周期だが、今現在までの情報で言えば50年。それが竜の群れから逸れ、ニンゲンの街を襲撃するようになる竜が現れる周期だ。なぜ周期的に竜の群れから()()が出るのか、は未だ解明されていないものではあるがな」

「成程。竜の姿についてはどうなんですか? 団長さんのさっきの言葉から考えるに、過去の逸れ竜は先の尖ったくちばしを持った竜、という事らしいですけど」


 さっきの慌てよう、というか考え込む姿から察するに今回の竜は色々おかしいんだろう。

 今回の竜の襲撃がその周期に当て嵌まっているかはまた訊かないとだが、それを抜きにしても。あの改造でもされたかのような竜は、イレギュラーであり、少なからずヒトの手が入り込んでいるのかな。


「そうだな。過去の周期で現れた竜はその全てが中の下に位置する竜、成竜であったと記録には残っている。

 その成竜だが、姿形は先ほど私が言ったように先の尖ったくちばしを持ち、その翼は体の全てを覆えるほどに大きく、その尾は所々に突起の様なものはあるが返しは無い。私が知っているのはこれぐらいだが、他の者に訊いても同じような答えが返ってくるだろう」


 いわゆる翼竜の姿を想像したらいいか。尾は違うようだけど。


 それにしても、アセヴィル達は竜の攻撃から耐えられているだろうか。

 どれだけ蛇行しながら逃走劇をしているかにもよるけど、もうそろ街に辿り着くころだと思うが。

 そう考えていると、扉からノックの音が鳴り、衛兵のヒトが入ってきた。


「失礼します! ご報告いたします!! 遠方に竜の姿を確認しました!」

「そうか、ではお前はそれをそのまま全ての騎士に伝達し、その竜を撃退する準備を整えてくれ」

「はっ! 了解しました。それでは失礼しました!」


 ハフィニストさんが指示を出し、それに従ってすぐに衛兵のヒトはこの部屋から出ていった。


「ではそういう事らしいので一度私は準備に向かう。貴方はどうする?」

「俺は……、そうだなぁ。あ、外に置いてきてるオロバムートを街の中に入れてきます」

「うむ。あぁそれと、逸れ竜に対して共に相対していただけるのであれば、この詰所の外にでも連絡役の騎士を置いておくので話していただければ一時的に貴方がたを我らの指揮下、が無理でも最低限の支援はしますので」

「了解です。ありがとうございます」


 どうやら、一緒に戦うことを許可してくれるようだ。もとより、竜と戦わないという選択を取るつもりはミリもなかったけど。

 取り敢えず、竜の姿がここから見えたという事はすぐにでもアセヴィル達が到着するという事でもある。竜を撃退することは決定事項ではあるだろうけど、そこで騎士たちと共闘したりだとかはまだ決まってないからな、それを話し合わないと。

 俺的には共闘しないっていう選択もないと思うからあれだけど。


 ハフィニストさんが部屋から出たのを確認して、俺もそれに続く様に部屋から出て一直線にオロバムートを待機させた場所まで戻る。

 俺の姿を確認したオロバムートは、すぐに立ち上がり近寄ってきた。


「どうした?」

「ブルルゥゥ」


 何か言いたげだったので聞いてみるが、ただ鳴いて俺たちが来た方向を目で示すだけ。いやまぁヒトの言葉を話すことができないから当たり前なんだけど……。

 オロバムートの視線の先をよく見てみると小さい影が2つ、とその上空に一際大きな影が1つ、遠くから近づいてきているのが確認できた。

 その影はあと数分もすれば今俺たちがいる場所に辿り着くだろうな。


「あれは、アセヴィルとスヴァさんか。特に何もなく竜からの攻撃とかには当たってなさそう、だな。

 よし、俺たちも準備するか」

「ブルゥッ」


 オロバムートにそう声を掛けて先導するように街に入る門のほうに歩いていく。


 今更だが、オロバムートの事はアセヴィルと同じでオロって呼んだ方がいいのか?

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