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4 表情ループ


 ワールドクエストの詳細確認は後回しにして、25分ほど歩いて辿り着いた場所は、貴族街の立派なお屋敷だった。

 道中では人に対して無闇に鑑定してはいけないと注意された。それと他人の持つ武具なども同様。


「ここはどういう場所で、俺は何を手伝えばいいんですか?」

「ここまで付いて来てもらってから聞くのはあれだが、最終確認だ。本当に手伝ってくれるか?」

「はい、まぁ報酬があるって言うんなら手伝いますよ」


 そう言いながら連れてこられた部屋を見渡す。


「そうか。では、これから話すことは極力口外禁止とする。

 まずはそうだな、自己紹介から。俺の名前は『アセヴィル・――――・――――』という。気軽に『アセヴィル』と呼んでもらって結構」

「ん、わかった、アセヴィル。俺は『イズホ』だ。俺も呼び捨てでいいぞ」


 そう返し、出された手を握る。名前で聞こえなかった部分はいつか訊けばいいと思いつつ。

 握手をした後、アセヴィルは自分の椅子に座り、俺は空いていた椅子に座った。


「何から話そうか。じゃあそうだな。まず俺の出身からか。

 俺はこの国の者ではなく、ここから西にある砂漠の更に向こう、魔砂漠(まさばく)の中央にあったユトゥル魔王国の元王子だ」

「元?」

「そうだな。今となっては全ての国民が消え去り、もぬけの殻となっているから元なんだ」


 そう話すアセヴィルの顔が一瞬だけ泣きそうになるも、すぐにスンと無表情になった。

 この顔、出会ってからここに来るまでも同じ無表情だったが、無表情の中でもとりわけ感情がないように感じた。例えば、そう心の中で抑え込んで(かお)に出さない様にしているかのよう。

 道中では少しは感情のある顔をしていたように思う。それでも無表情には違いないが。


「国がもぬけの殻となった事件については後で話すとして、その前に俺の能力の話をするか。

 お前が俺を鑑定した時に見られたかどうかは判らないが、俺には一般的な能力と少し違うものが2つある。

 1つは、……いや確か、異邦人に対して過ぎた情報は“世界”により消されるとかいう話をどこかで聞いた事があったような? じゃあ…………。

 コホン。気を取り直して、1つ目の能力は感情を霊力に変換するというモノだ。

 これはそのまま()の感情を対価に霊力として変換するという、ただそれだけの能力だ。名称はない」

「今まで無表情だったのはそれのせいか」

「まぁそうだな。表情を作ろうと思えば作れるが、気力が要る。だから普段は表情を作らず能面の様な無表情としているんだ。

 それに表情を作ると、顔に合わない仮面を着けているようで嫌な気分になってしまう」


 そう言って嫌な気分の表情を作ったのか顰める様な表情になったが、この表情も仮面をつけているかのような気分になったのか、すぐに無表情になった。

 でも、さっき泣きそうな表情になったのは仮面には見えなかったが。何だったのか。


「次いで、2つ目だがこれは先の能力程知らなくていいから軽く説明する。これの名称は『さいかい』というが、名称通りの能力ではない。それだけしか今は言えない。

 いつかきちんと説明するときが来るだろう」


 さいかい、再会? でも名称通りではないらしいから意味も違うんだろうし。

 なんとなく、この“いつか”は来ると思った。


「で、魔王国消滅事件を話すか。

 これは唐突に起こった。魔王国建国3500年記念の日に、唐突に。

 魔王が国民に向けて話をしていたんだ。これからもよろしくとかそう言った感じの言葉を言っていたな。で、その話がひと段落して国民が拍手をした瞬間、それを合図にしたかのように、魔王国に居たニンゲン全てが肉体のみ消え去った。この俺の身体を残して。

 すぐに実行犯を探したさ。そして奴はすぐに見つかった。魔王国王都の上空で宙に座る様な状態で足を組んでいたんだ」


 そこまで訊いて思い出した。PVで最後に映されていた状況と同じだと。そして良く良く見ればアセヴィルはあのPVで初めから映っていた青年だ。

 それと、少し口調が変わってきてるな。なんでだろう。


「そこで胡坐をかいて居た奴に訊いたんだ。『なぜこんなことをした!?』と。それを奴は無視した。

 だが、代わりにこう答えた。『生き残った幸運な君には僕の名前を教えておこう』と。奴は聞いてもいないのに自己紹介を始めたんだ。そしてその名を俺は一生、忘れない。

 奴の名前は『終末』、邪神だ」


 『終末』、あのPVに出てきてた浮いてる少年のようなのが『終末』か。

 それにしても、今の説明をしている間のアセヴィルはなんか当事者ではなくそれを他所から見てた感じの言い方だな。話を聞いている限り当事者のはずなのに。


「そして奴が消え去った後、城に残っていた使えそうな武具を拝借して、フレイトゥルへと旅に出たんだ。まぁこのフレイトゥルは中継地点だが」


 そう言ってアセヴィルは話している間に自身で入れたお茶を一口飲んだ。

 それにしても壮大?だな。


「ん? 中継地点?」

「そう、ここフレイトゥルは中継地点だ。現在の行き先は『ムークォ聖王国』だ。

 お前にはこれの手伝いを頼みたかったんだよ」


 聖王国? 名前からして主に聖力が使用されている国か? この世界何かと対称的になってるから、そうなんじゃないかと思うが。

 それにキャラクリの時の聖力の云々で東方面で、って言ってたし魔王国からこっち東方面だから。


「ただ、お前に手伝いをしてもらうとしても今の強さでは、俺に追いつくことすら難しいだろう」

「じゃあどうすれば?」

「そうだな、しばらくここに滞在し、イズホがある程度の強さに成ったら出発するとしよう」


 アセヴィルが俺の事を“お前”じゃなくて“イズホ”って呼ぶときなんか違うところを見てる気がするんだよな。

 まぁ、いいか。

 取り敢えず俺がある程度強くなればアセヴィルの手伝いになれるという事だな。


お読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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