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37 vs聖水大熊-中


 一筋の1人だけが通れる道が見つかったはいいが、それを具体的にどう行動に持っていくか。

 剣に魔力を籠めて物理と共に攻撃を与えるのが一番いいか?

 それとも、水術だったり魔術だったりで遠距離からチクチクと攻撃するか?


 いや、取り敢えずスヴァさんに言うか。


「スヴァさん! 思い出した! この熊の弱点は魔力だ!」

「魔力!? ほな、イズホだけが攻撃せな時間がかかるやんけ!」

「そう! だからどうしようかと!」


 スヴァさんの知恵を借りつつ、俺も再び考える。

 水属性が土属性に対して弱いというからには、火属性は水属性に弱いという事で、スヴァさんはこの熊に対して攻撃手段が殆どないな。

 ……今考えるとあの初めの一撃の炎を消したのは、聖水属性を身体に纏ったから消すことができたのか。


 で、俺たちの中で聖属性及び水属性に対抗できるのは俺の魔属性のみだな。

 これはもう俺が頑張って魔術か水術連打するしかないか?


「そうやなぁ、イズホの負担になるだけやけどイズホが魔術で攻撃するしかないかもなぁ」

「でもそうするとしても魔力が持つかどうか」

「そうよなぁ」


 熊との追いかけっこが疲れてきたので考える頭半分、剣を振るう事を考える頭半分で熊と相対しながら考える。

 考えるが、どれだけ時間をかけても結局は、俺が術を連打する答えしかないように思える。

 仕方ないか。


 ん? いや、俺の負担を増やすというか、スヴァさんとの位置の交代が一番いいか?


「スヴァさん! 俺と場所変えませんか!?」

「場所? ……あぁ! 成程な。分かった! でも1回その熊を抑えてからや!」

「了解!」


 半分の頭で動かしていた剣をすべての頭で動かし、熊の振り下ろされた状態にあった左手目掛け、両の剣を振り下ろす。


「グゥォォッッ!!」


 それは吸い込まれるように、何にも邪魔されることなく熊の左手に2本の大きな傷を刻み込んだ。

 熊が手を振り上げて威嚇のような何かをしている間に後退し、スヴァさんの近くまで移動する。


「スヴァさんって短剣以外も使えましたよね? 最近短剣と弓しか見てないからあれだけど」

「そうやな、長剣も一応使えるで。まぁイズホほど使えるわけじゃないからそんなに役には立たんやろうけど、時間稼ぎくらいは出来るんちゃうか?」

「じゃあ、剣で熊相手の時間稼ぎをお願いします。俺は後ろで水術、いや魔術を撃ちます。

 スヴァさんはたぶん熊の攻撃を避けたりするだけになっちゃうけど」

「まぁ大丈夫、……あ、いや、イズホの魔術でこの剣に付与してくれたら俺も少しはダメージ与えられるやろ」

「あ、確かに。じゃあ早速付与します」


 そういえばそうだ。魔術にも付与はあるからスヴァさんもよりダメージを与えることができるようになる。


「全ての魔を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。魔を司る神の力の一端を、一時的に与える力を。」


 ――魔与陣(マジックエンチャント)――


 その祝詞で、杖の先に展開された術陣から魔力の色をした球体が現出し、スヴァさんの持っている剣に向かって飛んでいく。

 その球体は剣に溶ける様にして消えていき、剣が魔力の色を纏う。


「じゃあ、様子見ながら俺は魔術と剣で、スヴァさんは所謂魔纏状態の剣で」

「りょーかい。また何かあればその都度、やな」


 そう言ってスヴァさんは未だ混乱している様子の熊の方に走っていった。

 俺はそれを取り敢えず見送り、短杖を構えて術陣を展開する。

 選択するのは魔術の魔柱陣だ。


「全ての魔を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。足元から魔の奔流を、噴出させる力を。」


 ――魔柱陣(マジックピラー)!!――


 杖の先の術陣はその術の名を紡いだ瞬間その場所から消え、発動場所に目線で指定した熊の真下に現れ光が溢れ出す。

 術陣から溢れ出した光はそのまま熊に向かって集まり、瞬間、地から天へと貫く柱となった。


 熊を飲み込みながら噴き出した魔力の奔流は熊の頭の高さで止まり、10秒で消えた。

 術の見栄え的には立派なものだが、威力は下級規模だ。もちろん籠める魔力の量によって変わりはするけど、それもせいぜい中級まで。

 今回は普通に発動した。


 術の発動を確認してすぐさま下級MP回復薬を1本飲み、次の術陣を展開する。

 次はスヴァさんの邪魔にならない様、少し控えめなやつにするか。


「全ての魔を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。全てを貫く、貫通の魔の力を。」


 ――魔矢陣(マジックアロー)!――


 普通に発動するなら今の総魔力の1割消費のところを6割消費まで引き上げて、その矢の数を6倍、つまり30本にする。


 現実世界で2日前ぐらいに見つけたこの技術だが、術に限って言えば基本的に際限なく魔力ないし聖力を籠めることができる。まぁその術のランクを超えた威力は期待できないけど。

 このゲームこういうところは自由なんだよな。


 まぁそれはさておき。

 6つに増えた術陣がスヴァさんを避けて熊の周りを囲むように動き、5本ずつ矢を現出させ撃ち出される。

 計30本の矢が熊の正面以外から飛んでいき、次々に刺さっていく。


「グォォォッッ!」


 その咆哮と共に聖力を纏ったのか突き刺さった魔矢は消えたが、少し熊の動きが遅くなった。

 その隙にスヴァさんが更に近づき、その1本の剣を熊に向かって振り下ろした。

 俺も短杖をアイテムボックスに仕舞い、下級MP回復薬を2本飲んでから剣を取り出し、魔纏を発動し熊に向かって駆ける。

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