28 監視
結局、師匠の店への裏路地ショートカットは調べることができなかったな。
あの後、そのまま師匠の店があるであろう方向へ歩き出し、その途中でこの禍々しい腕輪を鑑定してみた。が、レベルが足りないわけでも、そもそも鑑定できないわけでもないのに正しいであろう鑑定結果が表示されなかった。
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【腕・防具】悪魔による監視用腕輪 品質:そんなものあるわけがないだろう？ レア度10
耐久もあるわけがない 重:視監 属性量1 力魔伝率導0％ 聖伝導力率0％ 邪力伝導率200％
神創りし腕輪悪魔の腕輪。水晶にはガミズルクスが埋め込まれており、情報伝達にはその中に優れた封印が悪魔されている。
悪魔から時に封印されている干渉のしれないがあるかもが、その悪魔にそれは戯れとってのである。
「この――の全ての開放を能力したければ俺を通り、地邪門のところに来い」
by腕輪の俺より。
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数か所だけ伏字があるけど、それ以外は並べ替えられているかのような、読めるけど読めない文章だ。
それにちょっとうざったい文言が2つ。この2つはちゃんと読ませたいのか並び替えられてないし。
ちょっと面白くなってる部分はあるけど基本的には読めるな。確か人間には文章の中身を並べ替えられても、読み取れる力があるんじゃなかったっけ？ 違うっけ？
タイポ何とか。だった気がするけど、それは違うやつだったかな？ どうだったっけ？
確かタイポ何とかは、文章の最初と最後以外が並べ替えられても読める、だった気がする。
あ、でもこれだとこの腕輪のやつは違うか。
ただ、タイポ何とかじゃなくても頑張れば読める気はする。たぶん――
『神創りし悪魔ガミズルクスの腕輪。腕輪には水晶が埋め込まれており、その中には情報伝達に優れた悪魔が封印されている。
時に封印されている悪魔からの干渉があるかもしれないが、それはその悪魔にとっての戯れである。
「この腕輪の全ての能力を開放したければ地邪門を通り、俺のところに来い」
by――の俺より。』
――という文章なんじゃなかろうか。
実際にあっているかは分からないが。
と、その様に腕輪の確認をしながら歩いているといつの間にか師匠の店にたどり着いていた。
現在時刻は16時5分。いつもの大通りを行く道なら境界線から20分弱の道程が裏路地で5分伸びたか？ いやでも途中ハプニングがあったから、一概には伸びたとは言えないか。
まぁそれはさておき今日も今日とて錬金作業をしていくとするか。
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師匠の店には表からは入らず裏手に回り、裏口から直接作業部屋へと入っていく。
勝手知ったるという風に作業部屋に入るが、そこに師匠はいなかった。たぶん店番をしているか倉庫に居るのだろう。
取り敢えず使う予定の設備を確認する。
見た限り『合成』の機具は大丈夫そうなので、素材を取りに行くとする。
俺の今のアイテムボックス内の素材でもいいけど、師匠の倉庫にある素材の方が品質が良く、錬金のレベル上げに適しているからな。師匠も自由に取っていいって言ってたし。
アイテムボックスに詰められるだけイムリル草を詰める。それを1往復分として魔力が尽きるまで作業する。
倉庫には師匠はいなかったので店番で確定だ。
作業部屋に戻り、必要な道具を近くに用意して準備完了。
まずは思い出すように、いつもより丁寧にやってみるか。
「よし。まず両手鍋に水を入れて、穴の開いて鍋みたいなやつを入れて、そこにイムリル草を投入。
火を点けて沸騰直前まで放置」
下級HP回復薬に使う水は、初めの頃は特に気にしてなかったけど、何と無く鑑定してみるとただの水ではなく、魔力の籠った水、魔水と出た。
これは所謂霊力水と呼ばれるもので、回復薬などの霊薬に使われるものらしい。
こういう霊力水は普通に流れていることは珍しく、だいたいは魔石などに魔水属性の付与をして出すらしい。
この時水属性の付与だったら普通の水が出てくるらしい。
そんなこんなで沸騰しそうなので火を止め、穴の開いた鍋と一緒にイムリル草の残りを取り出し、『合成』を発動し錬金術陣を展開する。
そこに慎重に、そして素早く魔力を流し込む。初めのころは思うように満遍なく魔力を流すことができなかったけど、今では殆どの場所でムラがない状態を作れるようになった。
やがて、術陣の全体が斑のあるスレートグレーになり、術陣が鍋に吸い込まれた。
術陣が吸い込まれた鍋の中身もスレートグレーに染まり、少ししてその色は溶けるように消えていった。
魔力の色が言えた回復薬は少し緑がかった色味で、師匠が初めに作ってくれたものに近いような気がした。
《只今の生産行動により錬金Lv.6からLv.7に上昇しました》
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【回復・HP】下級HP回復薬の入った鍋 品質:良 レア度3
重量10 属性:回復
Lv.1～Lv.50までの存在が使用した場合、最大HPの28％を回復する。
Lv.51～Lv.150までの存在が使用した場合、最大HPの12％を回復する。
Lv.151～Lv.200までの存在が使用した場合、最大HPの3％を回復する。
・正式な手順で作られ、魔力が込められている。
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《只今の行動により鑑定Lv.11からLv.12に上昇しました》
俺が今まで作った下級HP回復薬の中で、一番の効能を持った物が出来たようだ。
鍋に入った下級HP回復薬が冷めるのを待つ間に、作業部屋に取り付けられている棚からHP回復薬用のガラス瓶を取ってきて近くに並べて、そのうちの1つに漏斗を設置する。
手で鍋を覆い覚めたのを確認して、これまた慎重に瓶1つずつに入れていく。
鍋1つで瓶15本ぐらいの量になる。大体5分弱でこの量か。時給126,000Fくらいになるかな。
頭の中で余計な事を考えつつも、手際よく鍋から瓶に入れ替え15本の下級HP回復薬を作り終わったところで、作業部屋の出入り口に気配を感じた。
そちらを見てみると店番をしているはずの師匠が立っていた。
「……まぁまぁな回復薬が作れるようになったじゃないか。これは次を教える時期かね」
そう言った師匠は倉庫のほうに歩いて行った。
27話の後の閑話の様なものを「廻り巡る無限の旅路-記憶」に投稿しています。そちら、悪魔の側の話となっております。
