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19 腐人の行進-歩く血腐人-1

10分後にもう1話投稿です。


 森の方から不気味な雰囲気と強烈な腐臭が漂い始めると、周囲のプレイヤーが顔を顰め少しだけ後退った。

 かくいう俺も絶賛顔顰め中だが。


 少しすると森からハイゾンビとゾンビが今までの1.5倍ほどの量、現れた。遠目で見る限りだがその中にボスらしき姿はないな。

 だが、森の方からは未だ不気味な雰囲気と腐臭が漂ってきているから、ボスがいないなんてことはないはずだ。


 ゾンビたちが迫ってきてそれに対応するという、さっきまでの焼き直しのような光景となっている。

 少し違うところと言えば、迫ってきているゾンビたちの一部が何らかのオーラを纏っているという点だろう。

 何らかの術でその属性が付与されているのだと思うが、その属性が何なのかは分からなかった。オーラを纏っているゾンビを鑑定してみたが強化項目などの情報は一切なかった。


 取り敢えずこれまで通り、タンクの弾いたゾンビや他と距離のあるゾンビなどを各個撃破していく。

 普通のゾンビが強化された存在は、ハイゾンビよりは弱いがゾンビよりは強くなっているので、全体的に難易度が少し上がっている。が、それでもやっぱりハイゾンビよりは弱いので簡単に倒すことが出来る。

 ハイゾンビが強化された奴は、単純に身体能力が強化されているようで、安直に胸元の魔石を狙うことが難しくなっている。


 ただ、途中でそういえば、と武器とかに魔力伝導率とかいう項目があるのを思い出し、なんとなく剣に魔力を流してみた。すると魔力の色なのか少し黒い灰色が剣に纏わりつき、その状態で強化ハイゾンビの振り上げられた腕目掛け振るってみると、さっきまでの苦戦は何なのか簡単に、それこそ普通のゾンビと同じくらいの柔らかさと感じるほどに楽に斬れた。


 苦戦と言う苦戦はそれこそ初めのみで、次々とハイゾンビらを斬っていたが、まず前提としてこの攻撃力は魔力によるもの。となれば魔力に限りがある以上永遠にその状態を維持できるわけではない。

 魔力が数値化されていない以上、どのくらいの効率なのかは分からないが、感覚的に1回魔力を纏わせると20体ぐらいは倒せている気がする。普通に効率はいいとは思うが……。


 効率はいいが体感で3、4回魔力を纏わせるとその時点で魔力が底を尽くと思われる。

 現状の魔力回復手段はMP回復薬のみで、そのMP回復薬も無限にあるわけではない。俺が持っている分だと師匠に貰った2、3本のみだ。

 このままMP回復薬とそれにより回復する魔力にモノを言わせてこれをすると、この後推定ボスが出てきたときに魔力が無くなり、疲れ切っている状態かもしれない。

 それはちょっと楽しめないと思うので、剣に魔力を纏わせる奴はボス戦まで取っておくことにする。


 取り敢えずこの技術は覚えていて損はないと思うから周囲のプレイヤーに教えつつ、ゲーム内掲示板にも書き込んでおく。

 周囲のプレイヤーの中にはできていない人もいたから一定以上の魔力(聖力)操作技術が必要なのかもしれない。



     △▼△▼△


 魔力の温存をしながら、これまで通りに強化ハイゾンビらを相手していると、急に辺りの雰囲気が変化した。

 取り敢えず今相手しているゾンビを片付けて森の方を見ると、暗くてよく見えないがそれでも存在感のある人型が見えた。たぶんあれが今回のボスだろう。


「完全に雰囲気変わったなぁ」

「そうですね」


 すぐ近くでゾンビを相手していたスヴァさんが近寄ってきてそう言った。

 それに軽く言葉を返し、森の手前に出てきた人型を対象に鑑定を発動しようとしたが、距離の問題なのかきちんと発動しなかった。


「この距離だと鑑定できないですね」

「まぁ鑑定せずとも、あいつがゾンビどもの親玉なんは間違いないやろ」

「それもそうですね」


 そう話しつつ少しづつ近づいてくる人型に集中する。

 近づいてくるにつれて詳しくその姿形を見ることが出来たが、推定ハイゾンビからの進化とは思えないほどに全然違う特徴が目に入ってきた。


 その推定ボスは、頭から血を被ったように全身赤黒く染まっており、どこから出ているのかそれは今も体から垂れ、乾いていく様子がない。

 右手には何らかの骨で出来ていると思しき、所々赤くなっている白い剣を握っていて、その反対の左手には“誰かの肘から先”を握っていた。

 身長などは特段ハイゾンビと差はないが、それ故にか先に挙げた3つの特徴が強調されているのだろうか。


 そこまで俺が観察したところで唐突にその推定ボスは比較的近くにいたタンクに向かって走り出し、左手に持った“手”が独りでに動き、構えられた盾を掴んだ。

 “手”で盾を掴まれたタンクは急に盾を掴まれたことに驚いて、その力を弱めてしまったのか次の瞬間には盾が地面に落ちていた。それを持っていた腕と共に。


 それを為したと思しき推定ボスは、右手の白骨剣で落ちた腕を突き刺し、その状態で口元に持っていき、そこから流れるモノを飲み始めた。


「うわぁ、切り落とした本人の前で吸い取っとるやんか」


 敵が食事?に集中している間に攻撃を、という意識はあるもののそれ以上にその行為に対しての驚きの方が上回っていた。

 ただ、何かしないと、とは思ったので取り敢えずもう一度鑑定をするか。


「スヴァさん、鑑定してみます」


――――――――――


名称:ロ――・―ルー―ン

種族:ブラッドウォーカー

職業:――

状態:Active、飲血

Lv.26


そのモノは血を求む。血を欲する。血を飲むために、浴びるために歩く。

お気に入りの腕を持ち歩き、お気に入りだった腕の骨で剣を作る。

甘美な味わいだったモノは次のお気に入り(コレクション)となる。

お気に入りを破壊されると――。


――――――――――


《スキル鑑定のレベルが低いため一部のみ表示します》

《ワールドクエスト中につき、一部情報の閲覧を許可》


 ――ゾクッッ!!――


 それを鑑定をした瞬間、悪寒が走った。

 悪寒の正体であろう、血を飲んでいたボス――ブラッドウォーカーを見てみると相手もその眼窩に灯る黒い炎でこちらを見ていた。

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