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175 新たに学習するには重く


 おさらいと行こう。

 まず、術を発動する際に展開する術陣の形は、特に何も詠唱や霊力を流し込むなどしていない最初期であれば、複数の真円という状態である。そこから詠唱や霊力によって、真円から文字や記号のようなものが連なった円に変わっていく。

 色はグレーで始まり、流す霊力によってその属性の色に変わる。例えば火術、火属性であれば赤、水属性であれば青、といった風に。


 詠唱や霊力によって術陣の中に現れる、文字のようなものや記号のようなものが神象文字と呼ばれるもので、これを操れるのは基本的に神の位についた者のみ。極稀に才能ある者が自身の力のみで理解し、操れるようになることがあるらしい。

 俺の周りで言えば、ナールがその極稀な才能ある者にあたる、事になるかもしれないか。現時点では神象文字を操って自由自在に術陣を創り出す、といったところまではできていないから。


 そう、この神象文字を操れる者は、自身が望んだ時に自由自在に新しく術陣を創り出すことができるらしい。既にある術陣の一部を弄るだとか、完全にゼロから新たな術陣を作るだとか。

 ただ、神でもない存在が神象文字を操り新たな術陣を創ったところで、その術を自由に使えるかというと、そうでもないらしく。本来であれば神のみに許された技術だという事。


 なぜ自由に使えないことがあるのかといえば、その新たに創った術陣が神、ないしは世界の定めるルールから逸脱していた場合抹消され、逸脱していなかったとしても神によって適切でないと判断された場合、削除されるのだとか。大体の場合、神の定める適切なラインというものを理解していない存在の創る術陣は、即座に削除されるらしい。

 もっと正確に言うならば違うらしいけど、まぁ大体はそんな感じという事。



 と、そういった風な展開でナールの資料は始まり、そのあと本格的に神象文字の説明に入っていったが、残念ながらそこで俺は脱落した。

 “神象文字”という言葉からもわかるように、神象文字は1つの言語体系のようなもののようだ。日本語や英語のような。

 その文字を知る、理解するという事は、新たに言語を1つ習得するようなもの。残念ながら優秀ではない俺の頭では早々にパンクし、以降、膨大な情報群を俺の頭は受け付けなくなった。


 自室に戻って独りナールの資料を読み進めていた俺だったが、数分もせずに城の地下に戻り、ナールに脱落を伝えた。

 それを聞いたナールは特に落胆もせず、しかし俺の要望は聞いてくれた。

 俺が手伝うという事は何か目的があるのだろう、と質問を返され、素直に幻想術について説明をし、ハーリャ様に関する壁についても説明した。幻想術を取得するにはハーリャ様の加護が必要で、しかしそう簡単に出会えることはなく、そこで術陣を使って呼び出せないか考えている、といった風に。


 神伝図書で本を探す前に訪ねた時は、ハーリャ様や幻想術のことは話さずただ神と連絡を取る手段はないか、とだけ訊いたが、それと今の話とで点と点が繋がったのだろう。

 納得したように頷くナールは、快く了承してくれた。


 そして、今も試練に使う術陣の写しを取っているファントスを呼び出し、今俺がした説明と同じものをファントスに説明し、協力を要請していた。

 ファントスの方はその説明ではいまいち情報が足りていない様子だったが、それでも、未知に挑戦するというそれそのものに惹かれたようで、ナール同様快く承諾してくれた。



 そのようにして、光の神ハーリャ様への呼びかけのための術陣作成へ一歩を踏み出し、と、そういった時にアセヴィルからパーティー全員へ招集がかかった。招集理由は、今一度全員の直近の目的の再確認、とのことだった。



     △▼△▼△


「作業をしていたのも居ただろうが、集まってくれてありがとう。今日の主な話は、これからの目的を全員の間で統一することだ。具体的には、これから何かを成そうとする者がいた場合、その目的をこのパーティーにおける主目的とする、といった感じだ」


 会議を開いたアセヴィルが、この場に集まった全員を見渡してそう言った。

 つまりは、アセヴィルから提供できる行動理由が直近では一切無いため、誰のものでもいいから、その誰かの目的をパーティーとしての行動理由としよう、みたいな感じだろう。

 といっても、今何かしら外への目的があるのは、たぶん1人しかいないんじゃなかろうか。ナールやファントスは基本的にここで完結することだし。


「うーん、ボクは今のところは特にないかなぁ?」

「俺もないなぁ」

「私もありませんね。あるとしても神象文字の解析ですし、それはここで十分できますから」

「ナールに同じく、俺もそれぐらいですね」

「俺は、あるっちゃあるけど全員の目的とするには、な感じだな。もうナールとファントスには話したし」


 ムーちゃん以外の全員が発言し、必然、全員の目はムーちゃんに向き、当のムーちゃんは何かに悩むように目を閉じている。何か、というかまぁ、研究所のことをどこまで話すか、みたいな感じかな。


 しばらく目を閉じて考えていたムーちゃんだったが、結論が出たのか、悩みのポーズを解き、話し始めた。

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