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174 神への儀式

200エピソード目


 結論から言えば、王族の2人であっても、神に直接連絡を飛ばす方法なんてものは知らないようだった。

 ただ、似たようなものはあるらしく、それは、儀式によってその地の神を呼び出すというもの。


 これは、例えば聖王国であるならば、特別なその儀式用の場所に描かれている術陣、その上で術陣へ聖力を流し込みながら神へ語り掛けるという。この語り掛けは、単純に術における詠唱のような祝詞であったり、はたまた舞踏であったりと、地域によってさまざまなのだとか。

 その術陣を介し、術者の呼びかけが神へ届けられ、気まぐれに神が降臨するという。その様は、正に普段の術と同じに見える。

 神伝図書の術の構成のなんちゃらにも、術は神への語り掛け、とかなんとか書いてあったから、本質的にはこの儀式と術は同じものなんだろう。神の技が届けられるか、神自身が渡ってくるか、という違いはあるものの。


 つまりは、その儀式でハーリャ様を呼び出すことができるのではないか、という事。

 問題は、その儀式に使用する術陣が千差万別らしいということと、その神に適した場所が用意できるかどうか、というもの。しかも、術陣にはカモフラージュなんかも掛けられているらしく、正確な構成は2人も知らないみたいだ。

 1つ言えるのは、今回で言えば確実にハーリャ様、光の神への語り掛けの為のパスの部分が、術陣に必要という事。


 ウァラとナールの話を総合してそう考えた俺は、一直線に神伝図書館へと向かった。もう一度術の構成のなんちゃらを読むためと、他に神や術に関する本がないか確かめ、あればそれも吸収するために。

 そして今、俺の目の前には5冊の本が置いてある。内1冊は前にも読んだ、「術の構成及び発動手順について」という本。他4冊は、今回初めて読む本。


 今一度思い返すためにも「術の構成」から読むが、確かに術、術陣とは、神へ人の声を伝える門と書かれている。

 完全にできるかわからない話だが、この、「神へ人の声を伝える門」の部分がきちんと術陣にあるのならば、そこだけを抜き出し、新たに作り出す術陣へ移すことができるのではないかと思う。

 もちろん、術陣の中にきちんとそういう構成をした部分が無いとできない話で、術陣全体を通して「伝える門」の役割ならば、この話は始まる前から頓挫しているように思う。


 そして、仮にそれができるのだとして、その技術が俺にはないんだよな。術陣を1から展開する技術というか、術というベース以外で術陣を展開する技術というか。


 因みに、術を発動するための術陣に元からその機能があるのなら、と試してみたが残念ながら、術陣は詠唱するまで見た目上は真っ新だが、正しい詠唱以外を受け付けるという事はないらしい。詠唱の始まりである「我らが」から始めず、適当に言葉を発すると、その瞬間に術陣は崩れて消えてしまった。

 そういう事で、既に形あるものを使用することはできない。



 他に関連しそうな本も読んでみたが……、術に関してはどの本にも「伝える門」と同じニュアンスのものが書かれている。

 そして、その中で術陣の構成、成り立ちというものについて書かれた本もあった。それによるとどうやら、術陣とは神象文字というもので構成されており、複数の効果が入り混じっているようだ。ただ、基本的に術陣はその大部分が「神へ人の声を伝える門」の効果を成しているとのこと。

 それ以外の部分は、術陣が崩壊しないようにしたりだとか、変に人へ干渉しすぎないようにしたりする効果で、発動する術に直接の関係はない。術へ直接の関係があるのは「伝える門」の効果のみ。


 術陣の効果を変えたりするには、神象文字を操れなければならず、しかしてその技術は神と呼ばれるものしか基本的には習得できないらしい。基本的、とのことだから、頑張れば俺のような一般人にも操れるという事だろう。その頑張り、努力がどれほどになるか想像はできないが……。


 取り敢えず、光は見えた。

 これから具体的にどうするかは、ナールやファントスに相談してみるとしよう。


 因みに、神について書かれた本ではその神が好む場所などが書かれていたが、それによると闇の神ペク様は闇の広がった場所を好むらしい。つまり混沌は、ペク様にとって絶好の場所で、あの時出会ったのは偶然でもなんでもなく、普段からあそこでああして暮らしているという事だろう。



     △▼△▼△


 場所は変わり、魔王族の試練のための空間である城の地下。

 そこでは、アセヴィルとナール、ファントスが熱心に術陣をのぞき込み、手元の紙へなにやら書き込んでいる様子が広がっていた。


 ナールとファントスは、アセヴィルからの情報共有が終わると、今やっているように、試練の術陣を解析したいとアセヴィルに伝えたようだ。それをアセヴィルは了承し、そしてアセヴィル自身も興味があったようで、手伝っているらしい。

 この3人のやっていることは、俺の考えていることの助けに十分なるだろう。と、そういう事でここへやってきたわけだ。


 ぶつぶつと、何かを呟き続けているナールの元へ近寄り、話しかける。


「ここのこれは、こういった意味か……。という事はこっちのこれは、この意味となり、こっちがこの意味か」

「ナール、ちょっと質問というか相談があるんだけど、今大丈夫か?」


 俺の声に驚いたようで、ビクッと肩を震わせてからこっちを向いた。その際に手元の紙の束が手から離れたが、どうやら1つにまとめられていたようで、一枚一枚が散らばることはなかった。


「どうされましたか? イズホさん」

「いや、術陣の、神象文字?を解析しているならちょうどいいから、何か手伝えないかと思って。まぁ俺が手伝う場合、知識はないから1からになるだろうけど」

「なるほど、まぁそう言う事ならば手伝ってもらいましょう。前提知識などについては、私の纏めた資料があります。それをお渡しするので、頭に叩き込んでください」


 あんまり勉強はしたくなかったが、仕方ない。

 貴重であろう資料を渡してくれるという事だし、手伝い手伝ってもらうからには、できる限りはしよう。

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