160 自ら行動する心持ち
《只今の生産行動により錬金Lv.37からLv.38に上昇しました》
《魔力操作Lv.57からLv.58に上昇しました》
《聖力操作Lv.43からLv.44に上昇しました》
《精神強化Lv.58からLv.59に上昇しました》
《霊力強化Lv.57からLv.58に上昇しました》
霊力関係のスキルは、何に於いても殆ど関係してくるからレベルが上がりやすい。戦闘と錬金、そのどちらでも基本的に使うから。
逆に、そういう補助以外のスキルは、当たり前だがそれに準ずる行動をしなければ上がることはない。というか霊力関係のスキルも同じく、その行動をしないと上がらないけど。
何が言いたいかと言えば単純に、霊力操作、強化系のスキルがそろそろ60になりそうだなぁ、という事。ただそれだけ。
ここ数日――と言っても2日、約16時間ほど――は自ら戦闘することなく生産、錬金をしていた。
MP回復薬がなくなりそうだから、というのももちろん理由としてあるが、それ以上に、なんだか戦う気になれなかったというのがある。
カーリに1つの傷しかつけることができなかったから、なのか、それともほかに原因があるのか。
アセヴィルとノスリ様の戦闘を見て、それはさらに深まったように思う。
その世界に俺が入っていけるのか、と。
もちろんこの世界に生きた時間の積み重ねが、アセヴィルやノスリ様、カーリの強さへとなっているのだろうし、それの足元にも及ばない時間しかこの世界に生きていない俺が、簡単に追いつけるはずもなし。
だからと言ってそれで簡単に、良し追いつこう、と気持ちを新たに持つことも、俺には難しい。
基本的に、俺という人間、イズホという人間、はたまた貝洲瑞保という人間は、自ら行動を起こすことができない。
小さな、それこそ自分の周りだけにしか影響のないものに関しては、自分から動くことはできるが、他の人にまで影響するようなものの場合、動くことができない。
傍から見ていて、アセヴィルもそのタイプだと思うことがある。ただ、それには少し違和感を覚える。
なんというか、他の誰かからの指示、意見を聞いてそこから動いていることがあるような。
実際のところは判らないが、大体の場面においてそんな風に見える。
アセヴィルの話はまたいつか考えるとして。今は俺自身のこと。
俺が自分から積極的に動くことができないのは、だいたい小学校中学年ぐらいからか。
それからゆっくりと、でも確かに、自分から動こうと思えなくなってきた。
それは今も残っている。
むしろこの世界にいる間は、より顕著に出ているかもしれない。
学校とかと比べるものでもないとは思うが、学校が、極端に言えば自分のことをしているだけで最低限は完結することがあるのに比べ、この世界ではパーティーで行動している以上、それを無視することはできない。
パーティーを抜ける、1人で行動をする、という選択肢はあるにはあるだろうが、アセヴィルがいる以上、アセヴィルの出しているクエストがある以上、それはできない。やるつもりもない。
矛盾しているのかもしれない。
1人で行動した方がいい、なのにパーティーで動く。
それが貝洲瑞保という人間なのだろうな。
アセヴィルに囚われている。
ふと、そう思った。
理由はない。
だが、それ以外に思いつくこともない。
「アセヴィルがいる以上」、自分で思ったこれを、囚われていると思ったのかもしれない。
でも実際、アセヴィルがいるうちはこの世界にできるだけいないと、と思う。
理由は解らない。理由なく、そう強く思っている。
アセヴィルに囚われているからこう思っているのだろうが、そうと思ったとしてもそれが崩れることはない。
アセヴィルに初めはそう思わされていたのだろうが、時が経つにつれて俺自身、心の底からそう思うようになってしまったのか。
それともそもそも、アセヴィルに囚われている云々が勘違いなのか。
何にしても、一歩踏み出さないことには、それも変化はしないだろう。
という事で。
急ではあるが、アセヴィルに剣を教えてもらおう。話はそこからだ。
「ふむ? ……ふむ。なるほど?」
「アセヴィルの時間を使うことにはなるけど……」
「いや、イズホに剣を教えること自体は大丈夫だ。ただ、その相手をどうしようか、とな」
「ん、アセヴィルに教えてもらおうかと思ってたけど、それは駄目なのか?」
「んー、駄目、というほどでもないが、俺は教えるのが得意ではないからな」
現実で朝、ログインして10分近く部屋から出ず考えていた。
で、結論が出てそのままアセヴィルの部屋に直行して剣を教えてくれ、と頼んだが、何か、というか俺の相手を決めようとしているらしい。
相手はアセヴィルでいいと思うのだが。
「……よし、そうだな、ベルに相手をしてもらうとしよう」
「え」
「ん、嫌か?」
「いや、嫌ってわけでもないけど、ベルよりかはアセヴィルのほうがいいんじゃないかなぁ、って」
「あぁ、いや、ベルはこれでもノスリの時は殆どその力に身を任せたような状態で、技術なんてものはなかったからな。折角だからイズホと共に技術を磨かせようとな。その過程でイズホも強くなれるはずだ」
ベル、正式名称ベルアルラビューナ。
剣が人の形を持った存在。
それ相手で、俺がより剣の力を身に着けることができるのだろうか。
お読みいただきありがとうございます。
もし『面白かった!』等、思ってくださった方は作品のブックマークや、このすぐ下にある星を1つでも埋めてくださると作者が何処かで喜びます。
よろしくお願いします。




