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15 腐人の行進-準備-1

10分後にもう1話投稿です。


 1日中下級HP回復薬を作ると言ったな、あれは嘘だ。

 と言ってみたかったから試しに心の中で言ってみたものの、実際のところ下級HP回復薬を作るのに飽きてきているのは本当。

 ついでに魔力が底を尽きそうだから休憩をしたいという気持ちもある。

 という事で、休憩ついでで冒険者ギルドに行って、よさげな依頼を見繕って戦ってこようと思います、と店番をしていた師匠に伝えて冒険者ギルドにやってきた。


 何かよさげなのはあるかなーと依頼掲示板を見ていると、1つの依頼が目に入った。

 それには『D:南東の森のゾンビ討伐』と書いてあった。

 前回ログインの時に確か南東の森の怪奇現象が云々という依頼があり、下級狼討伐と迷った気がしたがそれ系列の依頼だろうか。


 それにこの依頼、前回俺が受けた下級狼討伐などの違約金の無い常設依頼と違う区分らしく、こう言ったら違う意味に聞こえるかもだが、期間限定依頼と言えるようなものらしい。

 まぁ簡単に言えば普通の依頼だな。

 下級狼討伐などの常設依頼は、その対象がその場所で常に複数確認されている場合などに限り常設となる、らしい。


 逆に期間限定――普通の依頼は、今までその場所で確認されてなく新たに確認された場合や、以前から確認されていたが単体ないし少数の場合などの依頼の区分らしい。

 普通の依頼はその場所で確認されなくなったら日を置いて取り下げられるらしい。

 まぁもちろんこれは討伐系の依頼に限った区分の話だが。



 閑話休題。

 取り敢えずこのゾンビ討伐を受けるか。

 依頼掲示板に重ねて画鋲で留められている内の一番上の1枚をひっぺ剥がし、受付に持っていく。


「すみません、この依頼を受けても大丈夫でしょうか」

「少々お待ちください。確認します。

 ……南東の森のゾンビ討伐……。はい……。大丈夫、ですね。早速受けていきますか?」

「はい」


 俺の質問に何らかの資料を見てから答えた受付の人の質問に肯定を返す。


「それでは職業カードの提示をお願いします。はい、ありがとうございます」


 受付の人は受け取った職業カードを蓋のある道具の中に入れて蓋を閉じ、その蓋の上から俺の持ってきた依頼書を押し付けている。

 前回の下級狼討伐の時にも同じ道具で作業していたが、依頼の内容をカードに入れているのか?

 カードに書かれてる情報はギルドランクと職業と名前ぐらいで、依頼とかの情報はなかった気がするが。

 そういうのを見る道具でもあるのかな。

 まぁいいや。こういうのに詳しくない俺がうんうん考えたところで、分かることはない気がするから。


「職業カードの返却となります。

 この森は先日から出所不明のゾンビが徘徊しています。十分に気を付けてください。

 そして、もしゾンビ以外の存在やゾンビの上位存在と思しき存在を見かけた場合は戦わず、報告に戻ってきてください。その場合違約金は発生しませんのでご安心ください」

「解りました。では行ってきます」

「お気を付けて行ってらっしゃいませ。無事の帰還をお待ちしております」


 トレイに乗せて返された職業カードを取り、忠告を聞き冒険者ギルドを出た。



     △▼△▼△


 早速ゾンビ討伐に行く、前に木の剣では心もとない。

 故に近くにあった武器屋で適当に50,000Fぐらいの鉄剣を2本買い、なんとなく双剣スタイルにしてから南門に向かう。


 南門に並んでいた人はおらず職業カードの確認だけで済み、スムーズに出ることが出来た。ちなみに今の時間は22時となっている。

 下級狼討伐の時はもう少し早い時間だったのかな。それとも南門だからなのか。

 そんなことを考えながら歩いていくと、暗くて見えにくいが遠くに森が見えてきた。



 森と草原の境界線付近に着いた。まだ森に入っていないにも関わらず、不気味な気配が漂ってきている。

 何処からともなく不気味な声も聞こえてきて、ゾンビか何かが確かにいると確信した。

 こんな所でつらつらと考え事をしても何も進まないので、早速森に入るとするか。



 数分後、森に入ったはいいが今のところゾンビとは一切遭遇していない。

 森の中の木と木の幅が意外とあるからか歩きやすくそんなに疲れていないが、これが続くと考えると。


 もうゾンビと遭遇してもおかしくないように感じるが、一向に出てこないな。今では複数方向からゾンビの唸り声のようなものが聞こえてきているというのに。

 まさか、ゾンビがいないなんてことは――


「――ヴァァ!!」

「うわぁ!」


 唐突に右方向からここにいるよ的にゾンビが襲い掛かってきて、よく確認することもなく咄嗟に右手でぶら下げるように持っていた剣で下から袈裟斬りにした。鉄剣にしててよかった。これが木剣だったらこうはならなかっただろう。

 鉄剣で右の脇腹から左の肩口まで斬り裂かれたゾンビは、斜めになった上半身と下半身に別たれた。

 その状態でも未だに動いていたが、胸元を剣で開きそこにあった魔石を引っ張り取り出すと、その活動を止めた。


 ゾンビは冒険者ギルドで討伐報告をする時は、特に体の部位などを提出する必要はなく、魔石の一時的な提出のみである。

 それを考えると肉体的には楽な相手である。精神的には人によるだろうが。


 それにしても、と今しがた倒したゾンビを観察してみるが顔の表面は皮が腐り落ち、肉がぐずぐずに溶けて眼窩では黒い炎のようなモノが活動を停止した今でも燃えていた。

 ゾンビの元となった人物が着ていたであろう服は、腐蝕したのか腰布のみだった。

 服がないから肌は丸見えとなっているが、こちらも顔と同様に、皮が腐り落ち、肉は一部溶けて内臓がはみ出している。


 そのように倒したゾンビを観察していると、さっきの俺の軽い悲鳴を聞きつけたのか数匹(人?)のゾンビがやってきた。が、鉄剣にした俺の敵ではなかったようで、すぐに片づけられた。

 その倒したゾンビたちも観察してみた。そのどれも殆ど初めに観察したゾンビと同じだったが一部、胴の肉が腐っておらず刃物か何かで斬り付けられたような傷が残っていたゾンビもいた。

 まぁそれがどうしたという事ではあるんだが。


 それから1時間ぐらい、声を出しては寄ってきたゾンビを倒し、声を出してはと繰り返していると魔力の大半が回復していたので一旦帰ることとする。

 今日は30分錬金をして魔力が無くなりかけたら1時間くらいゾンビ相手に戦うというルーティーンで行くとするか。



     △▼△▼△


 それから1回ゾンビ討伐休憩を挟み錬金をして、ルーティーンを決めた時間から2時間弱が経過した頃、錬金用の魔力が尽きかけゾンビ討伐休憩をしようと冒険者ギルドに行ったところ、何やらその付近が騒がしくなっていた。


 プレイヤーのすし詰め状態を何とか搔い潜り冒険者ギルドに入り、聞き耳を立てていると何やら南東のゾンビの出る森が騒がしいらしい。


 と、そこでギルドの2階に上がる階段から強面の男が降りてきた。


「冒険者ども! 俺はフレイトゥル冒険者ギルド、ギルドマスターのサウェトールだ。

 今ここにいる冒険者に対して特別依頼を出す! 内容はこの王都の南東にある森からのゾンビの氾濫を止めることだ! 報酬は弾む! 絶対に食い止めてくれ!」


==========


ワールドクエスト『腐人の行進』が発令されました。

世界各地の王都付近の森にてゾンビの氾濫が起こりました。

全てのゾンビは生者のいる王都に向かってくるでしょう。

これを阻止し、王都の平穏を守りましょう。


==========


 こんな所にもワールドクエストが転がってる!

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