表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/203

151 邪神の幻影


 黒いスライムが変化した人型は、会議の際にスタルディ様と圧を掛け合っていた存在と同じ顔をしていた。

 本体がどちらかはわからないが、少なくともさっきまでのスライムの状態よりは、今の人の形のほうがいいことでもあるのだろうな。


『……あ、あー。うん、大丈夫か』

『ペク、未だ疲れているだろうが、カーリとユニグから読み取った今回のことに関する記憶の全てを、簡潔に話してもらってもいいかな?』

『……いいけど、椅子ぐらいは用意してもらっていい?』


 ペク様のその言葉によって、再び机と椅子が設置された。

 全ての存在が椅子に座ったことを確認してから、机に伏した状態のペク様が口を開いた。


『……じゃあそうだね、まずはカーリの状態から話そうか。

 いつカーリがその魂に邪神の糸を付けられたか、だけど、どうやらノスリを封印した後みたいだったよ――』



 ペク様曰く、ノスリ様をユニグ様の手伝いのもと封印した当初は別に、カーリは邪神に操られていたわけではないのだとか。もちろんユニグ様が操られていたわけでもない。

 当時ノスリ様を封印した主な理由として、まずカーリとしてはノスリ様が邪魔だったから。どうやらカーリは、ノスリ様のその立場に取って代わろうとしていたらしい。

 ユニグ様がその封印の手伝い――封印自体は全て、ユニグ様の術によるもの――をした理由が、ノスリ様の魂に邪神の力の欠片が埋まっていたから。

 そう、ユニグ様はその本心としては、この場にいる神たち、ないしはこの世界を裏切ったわけではなかったのだとか。状況だけを見れば裏切りととれるものの、行動を見れば邪神を確実に滅ぼすためととれる、らしい。


 これを聞いたマテラス様とノスリ様は、素直に全て話して相談してくれたら良かったのに、と言っていた。

 実際、どうなんだろうな。俺からしたらマテラス様は勿論、メフィトゥル様なんかも反対自体はしていただろうなと思う。ただ、それでもこんなことにならないよう、何らかの代替案でも出したのではないかと、そう思う。

 時期にもよるが、その当時すでにアセヴィルが魂を操る能力を持っていて、その上でマテラス様たちと出会っていたのなら、そもそもこんなことにならなかったんだじゃないか? 邪神の操り糸を排除できるのなら、その邪神の欠片であっても取り除けると思うのだが……。

 いや、アセヴィルの能力の正式なところを知らない俺が考えても、希望的観測にしかならないか。



『――……で、肝心の、カーリが邪神に操られ始めた時期だけど。魔王国の崩壊のすぐ後、カーリのところへ邪神が訪れて、その時に取り付けられていたよ』

「魔王国崩壊のすぐ後?」

『……そう、だね。時期的にはその通りだけど……、それがどうかした?』

「……いや、なるほどと思っただけだ」


 伏せた状態のペク様の頭がアセヴィルの方を向いてそう問うが、アセヴィルはそれにはきちんと答えなかった。

 ペク様の反応的に、どうやら魔王国崩壊が邪神の手によって行われたとは知らないっぽいな。


『ふむ。確か、魔王国の崩壊は邪神の手によって行われ、その際の生存者はアセヴィルただ1人だったはず』

『……なるほどね、僕が感知できなかったのはそれが分体だったから、かな?』

「分体、いや、確か幻影と言っていたはず。分体未満だろうな」

『……それなら尚更わからないか』


 幻影、そういうのもあるのか。


『ペク、話の続きを』

『……あぁ、そうだった。……で、どこだっけ。えーと、あぁ、邪神に操られ始めたカーリを相手に、ユニグは対応を変えなかったみたいだね。勿論カーリが邪神に操られたことにはすぐに気づいたみたい』

『ちなみに、ユニグがノスリの魂の邪神の欠片に気づいたのは、どういう絡繰りかはわかる?』

『封印されてる風にしてた時、カーリとニグちゃんの会話が聞こえてきたけど、どうやらニグちゃんは豊穣を司るから、邪に属する力に対して強い感知能力があるみたいだよ?』

『ふむ、それならばハーリャ辺りが気づいていてもおかしくはないと思うけど。実際のところどうなの? ハーリャ』


 「豊穣を司るから邪に強い」、なんとなくわかるような、わからないような。

 てか、豊穣を司るというにしては鉱山なんだよな、国が。あまりにチグハグというか、掲示板とかを見てた限り、そこまで他の国との農業の差があるようにも思えない。

 むしろ他より劣ってるんじゃなかろうか。星降る荒野に隣接しているからには。


『さて、確かに今のノスリをよく見れば邪神の欠片があるとわかりますが……。しかしそこまで詳しく見ることもありませんでしたからね』

『それもそうか』

『じゃあさ、折角だしその邪神の欠片はアセヴィルに取り除いてもらおうよ。転生させた2人に私の欠片を埋め込むことだし、そのついでに。アセヴィルはそれも大丈夫?』

「見た限り邪に属する欠片ではあるようだが、確実に邪神とも言い切れはしないな。いや、まぁ取り除くことは可能だ」

『おー! じゃあこの後よろしくね』


 邪に属するというからには、それはつまり邪神の欠片と同義なのでは。

 が、アセヴィルの言葉的にはそうではない様子。

 俺が覚えてたら、この会議が終わってからでも聞いてみるとしようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ