149 黎明の再演-終-転生の法
今回の首謀者2人を転生させるという案への、ノスリ様の結論は賛同だった。
てっきりユニグ様はともかく、カーリだけは転生させないとするかと思ったんだけど。
『いや、勿論カーリだけ転生させないようにしようかとも思ったけどね。折角ならそこのアセヴィルに手伝ってもらおうかな、と。今回呼ばれた目的の半分が消えてなくなっただろうし』
「具体的には?」
『カーリとニグちゃん、両名の魂へ私の欠片を埋め込んでほしいのさ』
「ほう、支配の意思を持った欠片、ということで大丈夫か?」
『まて、それは“世界”の決めたことへ反することとなる』
『まぁ落ち着いてよ、メフィちゃん。私は一言も支配するだなんて言ってないでしょ? やるとしても監視までだよ』
つまり? アセヴィルの言葉を借りるとするならば、その監視の意思を持った欠片、魂の欠片かな?をカーリとユニグ様の魂に埋め込む、融合するということかな?
てか、アセヴィルと俺たちが神霊と一緒に戦ってる理由を知ってるのか。
『だがそれでも、転生させる者の自由意思を無視するような条件は、“世界”が禁じているぞ』
『だーかーらー! もう少し考えてからモノを言ってよ。私は一言も、アセヴィルに転生の法自体へ干渉してほしいなんて言ってないよ?』
『……あ? あ、あぁ。いやなるほど。すまんな。だが、そんな穴を突くようなことを“世界”が許すか?』
『どうだろうね。でも、“世界”のことだから、本当に駄目だったら今にでも何かしら反応してきてるとも思うよ』
世界……、あれか、スタルディ様の首に紋様を付けてたやつか。
その現象がない今、世界が禁止しているという事には当たらないと見ているのか。
「解った。では、その転生の法を行うときにでもまた、声を掛けてくれ」
『あれ、もう帰っちゃうの?』
「落ち着くまではいると思うが、それがどうかしたか?」
『ん? いや、帰りそうな言葉だったからさ』
「あぁ、いや違うな」
何やらノスリ様とアセヴィルが話しているのを横目に、霊力の気配がしたほうを見るとそこには黒いスライムがいた。
気配からするにペク様かな?
『……あれ、ノスリ。その身体は、降霊系の術でも誰かが使った?』
『ん、ペクじゃん。頑張ってるねぇ~。あ、これ? そうそう、そこに浮いてるでしょ、異邦人の子が』
『……あぁ、ノスリの力に身体が耐えられなかったのか』
『そうなんだよねぇ、折角ならこの身体で意識だけでも残ってくれたらよかったんだけど、その状態になるとどうやら異邦人は“世界”によって強制的に放出されるみたい』
ん、ん? 強制的に放出される?
ということは、本来なら俺は死亡判定ではなく、ただノスリ様に身体を貸している状態だったってことか?
いや、死亡している状態なのはそのままなのか。力に耐えられなかった、とか言ってるし。で、その状態であっても本来なら、その身体に俺の意識、魂と呼ぶべきものは残っていたということか。その状態だと何かができたのか、それとも何もできなかったのかは、わかんないけど。
『……あ、そうそう、ユニグのほうも無力化はできたよ。今はマテラスたちと合流してここに向かってるところ』
『何から何まで、私のためにありがとね』
『……まぁ丁度よかったから』
『ん? 今何か言った? ペク』
『……い、いや、なんでも』
ノスリ様とペク様の間で何やら不穏な気配が漂っているが、大丈夫だろうか。
一見、スライムと少女が言い争っているようにしか見えないが、その力は圧倒的だな。
『……それはそうと、ノスリを召喚した降霊系の術は封印から無理やり出せるものだったの? マテラスたちが焦ってたからさ』
『それ含めてみんなが集まってから説明するよ』
『……それはカーリが気絶してる理由含めて? ……なるほど、わかったよ』
ペク様の質問にノスリ様は笑みを深めながら頷いた。
△▼△▼△
一定の範囲内なら自由に移動できると言っても、せいぜいこの部屋の端まで。この部屋から外、廊下のほうへは移動できない。
不便不自由極まりない。が、俺が情報を知るにはあとからアセヴィルとかから聞くか、今こうしてリスポーンせずに見ているくらい。
後から聞くぐらいだったら自分の目で見たほうがいいだろう。
『――なるほど、つまりノスリは自ら餌となったわけだね』
『そう、まぁちょっと楽しそうだったってのもあるけどね』
『大体はわかったよ。じゃあ、ちょっと狭いけどもうここで転生の法を発動させちゃおうか』
マテラス様に率いられ残りの人たちが集まり、ノスリ様の口から事の顛末が簡単に語られて、今。
縛られて連れてこられたユニグ様と、いまだ意識を失ったままのカーリへ、転生の法を掛けるようだ。
『と、その前に記憶だけど、どうしようか。誰が視る?』
『ネクロファラルはいないんだっけ? だったらペクにしとこうよ』
『……え、僕?』
『うん、記憶閲覧の権限の行使は得意でしょ?』
『……得意だけど、代わりに意識を失っちゃうよ?』
『読み取れるならいくらでも私が後で起こしてあげるから』
『……ノスリのそれ、あんまり好きじゃないというか、苦手なんだけど。強引というか、無理やり意識を覚醒させてくるから。…………まぁいいや。
……じゃあ、始めるよ。我、闇の神ペク・ツァプが今ここに、記憶閲覧の権限を行使すること、“世界”へ宣言する』
その宣言と同時に、黒いスライムは2つに分離し、それぞれユニグ様とカーリの頭へ取り付いた。
しばらくその状態だったが、記憶の閲覧、吸い取りが終わったのか分かたれたスライムは元に戻り、溶けるようにして地面に消えていった。
『ありゃ、寝ちゃった』
『まぁここからはペクがいなくとも大丈夫でしょう』
『えーと、ここにいる4柱で転生の法を発動する気?』
『そうだね、それぞれ2柱。ストハスちゃんとノスリが得意だったと思うからそれぞれを代表に、私がストハスちゃんと、メフィトゥル君がノスリと発動しようか』
『ん、わかったよ』
『メフィちゃん、ちゃんと合わせてね』
『あぁ、大丈夫だ』
それぞれ転生させる相手の前に立ち、主導する神が術陣を展開した。
『『我ら神の位を持ちしモノが今ここに、転生の法を発動することを宣言する。対象者ユニグへ、この生で得た記憶の一部削除と転生後の一定期間の行動の不自由を求む。輪廻の輪へ取り込まれ、新たなる生を得たまえ。』』
その術?権能?が発動すると、カーリとユニグ様の身体は術陣へ取り込まれるようにして分解され、直前までそこにあった気配は、1ミリたりとも感じ取ることができなくなった。
術陣へ取り込まれる直前、ユニグ様が何やら慌てたような表情をしていたが、本当は不服だったのだろうか。
これにて双剣の水術師篇、第4節完。
次話より第5節となります。
お読みいただきありがとうございます。
もし『面白かった!』等、思ってくださった方は作品のブックマークや、このすぐ下にある星を1つでも埋めてくださると作者が何処かで喜びます。
よろしくお願いします。




