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双剣の水術師~その仮想世界で1人の青年は既知感を蓄積させる~【未完】  作者: 銀骨/風音
第4節 W-4 『黎明の再演』-後篇:誰が望む世界へ
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146 黎明の再演-魅入られる言葉 S:A、M

【S:アスムーテ】


 うーん、ちょっとだけラフェ様の加護、強めに使いすぎちゃったかなぁ? メフィトゥル様の言葉についカッとなって解放しちゃったけど、ラフェ様に怒られないよね?


 それにしても、メフィトゥル様が言ってた『不死知』って、アセヴィル君の言ってた神伝図書館で知識を蓄えたって人の事だよね?

 その人とラフェ様は、同一人物だったってこと……?


 不死知の神と呼ばれる存在が本当にラフェ様だったとして、ラフェ様は何者なんだろう?

 ボクの中でラフェ様はラフェ様だけど、今後会った時にどう接したらいいんだろう。今までは普通のおばあちゃんの様に接してたけど、これを知っちゃったら、そんなことはできないよね。

 ……いや、ラフェ様なら前のままでいいとか言ってくれるかな……? そうだと良いな。



 ウスヴァート君の契約獣霊、デフィスキーナを先頭に、闇の神ペク様の指示する道を進んでいく。

 偶に進行の邪魔をしてくる吸血鬼を交代々で倒すようにしてるけど、皆強いね。ペク様からの支援もあるとはいえ、それでも苦戦するかもって話だったのに。

 ボクはともかく、他の3人もボクと同じぐらいに強化されるなんてね。他のみんなは毒術系以外での強化なんだけどねぇ。神様っていうのは万能なんだね。


「さっきのがヴァンパイアデューク、公爵やったから、あと少しで地の神ユニグか吸血鬼のカーリが出てくるんちゃうか?」

『……そう、だね。あと少し、この先の1体を倒せばユニグのところだよ。……ただ、その1体、これだけは今までの比にならないくらいの強さだよ。全員でないと勝てないかもね』

「ほな全員で戦うか」


 そもそもこの閉所で戦えるかなぁ? 1人2人が相対するぐらいならともかく、4人で、となると無理じゃないかな?

 まぁペク様が全員で、って言ってることだし、全員でも戦える広さなのかも?



『……この次の扉を越えた先に、さっき言った4人で戦わないといけないやつがいるよ』


 ここまで来ると、もう既にその圧を感じ取ることができるね。

 感じ取れるだけの圧で言えばだいたい、ウァラエルのお母さん、聖王と同じぐらい? いや、それよりはちょっと弱いかな? どちらにしてもボク達の誰よりも強いのは変わらないけどね。


 少し離れた所から無理やり扉を開けて、罠とかが何も無いのを確認して先へ進む。

 勿論その部屋の中央には吸血鬼が居て、ボク達の姿を見て敵意を募らせていた。


「やっと来たか、えー、聖王女に信奉者の創りし獣人に、……? なんだ、見ない顔だな、まぁいい。どうせ隠れているんだろう? 闇の神よ」

『……どうせ僕は力が無いからね』

「なればこそ、その力を更に高める機会ではないか。どうだ? 我らの力とならないか?」

『……いやだね、ノスリの力を奪った奴等の仲間に、僕はならないよ』


 信奉者……、(ワー)奉者(シパー)? 吸血鬼と繋がっていたなんて。

 ……いや、早まるのはよくないってラフェ様も言ってた。こいつは別に協力者とかじゃなくて、ただ知ってるだけかもしれない。

 でも、でも! でも!!


「あ? なんだ?」

『……あー、もう。君が余計な事を言うからだよ。……仕方ない、か。

 闇に棲まう者よ、(われ)の声を聞き給え。邪悪に染まりし血の鬼を討て。』


 ! 闇……? 包まれる、攻撃?


『……攻撃じゃないよ、僕の身体さ。……傍から見ていてようやくわかったけど、どうやら君はこの空間そのものに影響されてるみたいだね。吸血鬼の出すこの霧か、それとももう、この空間というもの自体に君を惑わす何かがあるのか。……どちらにしても、君自体にちょっとだけ手を加えさせてもらったよ。これでしばらくは不死知の加護を暴走させないだろうね』


 暴走……、してたの? ボクは。……いや、そうじゃないとラフェ様の加護をこんな短期間に、連続で使ったりしないよね。

 それで、手を加えたってペク様は言ってたけど、もしかしてこれかな? ふふ、良いもの貰っちゃったな。


『……君たちには悪いけど、先に片付けさせてもらったよ。あと一手遅かったらこの場所ごと消え去ってただろうから。……うん、見た感じ向こうも僕達と同じぐらいだね。先へ行こうか』



     △▼△▼△

【S:マテラス】


 さて、あと少し、もう少しでノスリのところまでたどり着く。

 思えばいつからだろうか、ノスリとの連絡が取れなくなったのは。そしてユニグが少しよそよそしくなったのは。


 いや、そんなもの、ここへ来たからには気にする必要などないか。


 “邪神に魅入られる”。なんて嫌悪の湧く言葉で、それでいてこちらからもまた、魅入られてしまいそうになる言葉だろうか。

 ユニグの本心は分からないけれど、カーリはその魂から魅入られてしまったのだろう。昔のカーリなら、そんなこと無かっただろうに。


『マテラス? どうしたの? そんなに考えこんじゃってさ。ほら、最後の部屋だよ』

『あぁ、いや、ユニグとカーリについて、ちょっとね』

『なるほどね。昔のカーリなら、みたいにね?』

『そうさ、だが、そんなことを思っても、今となっては転生させるしか(こたえ)はない』


 あぁそうさ。その答えだけになるまで待っていたのは誰なんだってね。

 いや、寧ろ運命なのかもしれない。こうも都合よく魂を操るという能力に目覚めた者が出てくる、というのは。

 私は、私たちは、アセヴィルが邪神によってその能力を目覚めさせるのを待っていたのかもしれないな。そう考えると、あまりこうは思いたくないが、邪神にも感謝ではある。


『さぁ、マテラス。ノスリが待ってるはずだよ』

『そうだね』


 その部屋へ厳重に張られた結界を簡単に壊し、その扉を開ける。

 私たちを出迎えたのは1つの結晶と、その下に描かれた封印の術陣。


 結晶の中にしっかりとノスリがいる事を確認し、術陣を壊そう、とそちらに目を向けるが――これは封印の術陣ではない? ……それにこれは、ノスリの――


『――あ、マテラス! ノスリ、ノスリが消えたよ!?』


 消えた。……消えた?

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