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124 霧に隠されし門


「もう大丈夫か?」

『あぁ俺がすべきことは終わった。あとはお前とヴァラナスが契約を交わすだけだ』

「ほなさっさと終わらせようか」


 言うが早いか、契約術の術陣を展開しそれぞれに魔力を籠め、少しの詠唱の後、スヴァさんとヴァラナスの契約が交わされた。



     △▼△▼△


 俺達をここに呼んだガミズルクス様の用事は終わったようだが、どうやら帰りの脚の用意はしてくれていなかったようで。

 今は廃城から出て真っ直ぐ、道なき道を進んでいるところだ。目的地は地邪門と呼ばれる、この世界と俺たちの居た元の世界を繋ぐ、いわゆる転移門だ。


 本来この地邪門を通って出る先は、もとの世界の“混沌”なんて呼ばれる場所らしいのだが、今回だけ特別に、俺達がこの世界へ来る前に居た、魔王国王城の最上階の扉の前に出るようにしてくれたのだとか。

 わざわざそんなことをしてくれるくらいならもっと簡単に、それこそ空間術だか次元術だかで直接戻してくれてもいいのにな。

 なにかしらそれをできない理由があるんだろうけど、でも、初めに俺達をここに飛ばすことができたのならその反対に、返すことも容易にできるんじゃないかとも思う。


 まぁ言っても詮無きことだな。もう俺たちは城から出て、今後ガミズルクス様と話す機会はそうそう訪れないだろうから。

 今からでも城に戻るっていう選択肢もあるにはあるけど、向こうでどれだけの時間が経過してるか分からない以上、ここで無駄に時間を潰すのは得策じゃない。



 ヴァラナスの案内でしばらく歩き、目の前一帯が濃い霧で覆われ始めた。


『あの霧に覆われた地帯のどこかに地邪門が現れているはずです』

「現れる?」

『ええ。この地の、ガミズルクス様の支配する地の地邪門は、あの霧を纏い基本的にどの生物も生息していない地を転々としているのです。偶に悪魔が近くを通るような事があった際も同様に、姿を消し移動するのです』


 門が移動するって、その地邪門とやらは生き物なのか?

 あと、ヴァラナスの言い草的に地邪門とやらは1つじゃ無いっぽいな。少なくとも3つはあるんじゃなかろうか?

 今いるここに1つと、邪神の支配する地に1つと、あと他の悪魔神が支配する地に1つはあるんだろうな。


 悪魔神は、大罪を司る悪魔神とかって言ってたような気もしなくもないけど、よく覚えてないな。

 もしそう言ってたとしたらこの世界に9つ、地邪門があるってことだな。大罪の悪魔神ってのが何人いるか知らないけど。


「ほな今これ近づいたら同じようにどっかに消えるんちゃうんか?」

『通常時はそうですね。しかし今はガミズルクス様のお力によって、門としての最低限の能力以外が封印されている状態です。今の地邪門には転移の能力しか扱えるものがないでしょう』

「しかもその転移の能力も、移動先が限定ないしは固定されてる状態、と」


 そんなに自由に、というか強制力を働かせられるんだったら、今の状態を通常時にしたらいいのにな。その方が今回のような面倒な手間も省けるだろうし。実際面倒かどうかは知らないけど。

 まぁでも、面倒かそうじゃないかは置いて考えたとして、これまでやってこなかったってことはやらないなりの理由があるんだろうな。例えば悪魔を向こうに渡らせないためとか。


「霧が出とるんは門としての最低限の能力なんか? あんまり門として必要な能力って風には思えんけど」

『さぁ……、詳しいところまでは私も分かりかねますね』

「ほーん、まぁ視界を制限する以外で特に害は無さそうやからええけどな」


 確かに、言われてみれば普通の門に霧は必要ないよな。地邪門は普通じゃないだろって言われてもそれはそうなんだけど。

 まぁそもそもとして門の能力じゃないかもしれないしな。

 例えばこの惑星、この土地が、門のある所に霧を出してる可能性とか。


 ……なんか城を出てからというもの、考察ばっかしてるような気がする。これを考察と言っていいのか分かんないけど。

 なんだろう、変に会話するよりも、人の会話を傍観してその内容について考える方が性に合ってるような気がする。

 気がするじゃなくて実際合ってるか。会話苦手だし。



『少し進行方向を右に逸らしましょう。あと少しです』


 その言葉の通り、体感10分もしない内に地邪門の前へ辿り着いた。


「おっきいな」

「ほんで禍々しいな」

『こちらが邪界、その内ガミズルクス様の支配する領域と混沌の世界とを繋ぐ、地邪門となります。こちらから見て右の扉には邪神が、左の扉にはガミズルクス様が描かれています。

 私は召喚される以外の方法で向こうの世界に渡ってはいけない決まりですので、案内はここまでとなります。ウスヴァート様、いついかなる時でも召喚していただいて構いません』

「了解。存分に戦闘とかで呼ばせてもらうわ」

「ん、カラヴィは大丈夫なのか?」


 召喚以外で渡ってはいけないってことは、カラヴィも今のままでは駄目ってことだよな?


『いえ、デカラヴィネアは大丈夫です。抜け道のような形にはなりますが、最低限封印されているという状態であればこの門を通ることも許されるのです』

「抜け道も抜け道だな」


 抜け道だけど、まぁそれで行けるならいいか。特にステータスとかに影響も出ないっぽいし。


 ――ズズズズ…………


 地邪門が独りでに開き、深い闇を覗かせている。

 その闇へ踏み入ると視界が真っ暗になり、1つ瞬きをすると次に見えていたのは邪界へ飛ぶ前に居た魔王国王城の、最上階の光景だった。

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