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116 魔王族の秘術-ウスヴァート


 ネモの一撃によって倒れたワームをアイテムボックスに仕舞い、再び進むこと2時間30分強。

 目の前には不気味なほどに静かな、アセヴィル曰く魔王国王都が俺達を出迎えていた。



 王都に入り、アセヴィルに付いて行くこと30分弱。


「…………」


 この王都に辿り着いてからというもの、アセヴィルから一切の生気が感じられなくなっていた。

 話しかけても反応は無く、しかし、脚は動き続けているから、確かに意識はあるはずである。

 どうしたんだろうか。何かをしても反応が無いから最終的に心配しかできない。


「どうしたんだろう、ヴィル君。目線は宙を見てるけど、そこに何かあるのかな? ボクには見えないけど」

「うーん、確かに、何かを見てる目ではあるか」


 本当に何だろう。思い出に浸ってるでもないだろうし、やっぱり俺達に見えない何かでも見てるのかな。

 まぁ取り敢えずはいいか。特に魔物が巣食ってる様子もないし、危険はなさそうだから。

 目的地であろう王城に着くまでは放っておこう。



「……よし。じゃあ、到着して早々ではあるが、ウスヴァートとアスムーテ、ウァラエルに対し、魔王族の秘術の試練を始めようか。誰からやる?」


 無言のアセヴィルに釣られてか道中では特に会話は無く、最終的に、聖王国で俺が試練を受けた場所と同じような場所に着くまで、足音以外の全ての音は発されなかった。


「そんじゃあ俺からにしとこうか。何かがあってもいいようにな」

「他2人も大丈夫か? 先にウスヴァートが受けても」

「うん、大丈夫だよ!」


 ……先にスヴァさんで、次にムーちゃん、最後にウァラの順番で魔王族の試練を受けることにしたようだ。

 あの時と同じような台座にはこれまた同じようで少し違いそうな術陣が刻まれており、そこにスヴァさんが立って準備をした。

 アセヴィルが術陣に魔力を流して詠唱を開始、する前に、いつぞやと同じようにアセヴィルの身体が末端から薄く光っていった。たぶん身体の構成が変わったんだろうけど、傍目には何も変わっていないように見える。


 身体を変えたアセヴィルが再度術陣に手を置き、魔力を流し、詠唱を開始した。


「『我らが魔なる神よ。新たなる眷属を迎え入れるため、我らに力を与えたまえ。この者は聖なる神の眷属であれど、異邦人故、精神的受け皿は十分である。最後に残されしは、肉体的受け皿の試練である。』」


 その詠唱は、確かにアセヴィルの口から聞こえはしたがしかし、アセヴィルの声ではなく。

 どこかアセヴィルの声質を残しつつより低くしたような、そんな声がアセヴィルの口から響いてきた。


「さて、これであとはウスヴァートが頑張るだけだな」


 試練の台座から少し離れた所で、どこからか机を出して休憩をしようとしているムーちゃんとウァラと一緒に、スヴァさんが戻ってくるのを待つとしよう。


 てか、スヴァさんが跳んだ先の状況って見られないのかな。

 見ることができたら暇つぶしにもなるし、楽しめそうなんだけど、無理そうでもあるんだよなぁ。そもそもどうやってスヴァさんの居る空間の状況を映し出すのかってのが難しそう。

 闘技大会の時はできてたけど、あれはたぶん神霊の力もあるだろうし。

 ダメ元でアセヴィルにできないか訊いてみるか。


「なぁアセヴィル、できそうならで良いんだけど、スヴァさんの居る空間の状況をここに映し出すことってできるか?」

「ふむ、無理をすればいけるだろうが、無理をしない範囲でという事ならできないな。ウスヴァートが今いる空間はこの世界とはまた別であるからして、その空間の認識ができない事には、そもそも光術で状況を飛ばすこともできないからな。

 まぁ、本当に無理をするとしたら、まずそうだなぁ、寿命を削ってでも“世界”から今回の異空間の場所の情報を取り出す。その後に空間術の転移でそこに跳んで光術でここに……、いや、無理だな。それをするには身体が最低2つは無いと駄目だな」

「ん、なるほど……?」


 よく分からなかったが、まぁ、つまりは無理という事だな。

 最後の、身体が2つ無いとってところも勿論よく分からなかったけど、それ以上に、世界から異空間の情報を取り出すってのがよく分からなかったな。

 まだまだこの世界のこと知らないんだなぁって思うと同時に、どこまでできるんだろうかって気持ちにもなるな。

 さすがに身体2つとかは人間のすることじゃないと強く思うけど。


 ……ん、? という事は、だよ。闘技大会の時の控室が異空間か普通の空間か分からないけど、異空間だった場合、映像を担当してたと思しき光の神霊は分身をたくさん作れて、しかもそれを正常に使いこなせてたという事か?

 それがどれだけ難しいことなのか考える事すらできないな。


 そういえばと、ウァラとムーちゃんをほったらかしにしてたな、なんて思いながら見やると、2人は2人で会話に花を咲かせていたようで。

 心配しなくても良かったようだ。


「ん~、いやぁ疲れたなぁ」


 少しだけ霊力に揺らぎがあり、揺らいだ方向を見てみると、ちょうどスヴァさんが返ってきたところだったようで、背を伸ばしてこっちに歩いてきていた。

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