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105 ヴィデュール


 その後も10分から15分おきぐらいで聖魔物に遭遇し、特に手こずることもなく撃退していった。

 そして森に入ってからちょうど3時間ぐらい歩いたところで、聖王国の街と似た雰囲気の場所が見えてきた。

 あれがたぶん水人族の国ヴィデュールだろう。


「あと少しでヴィデュールか。ウァラとムーちゃんは行ったことってあるのか?」

「ボクは流石に無いかなぁ。記憶に無いだけかもだけどね」

「それこそボクはラフェ様に連れられて聖王国に行ったから、その途中に寄ったけど、でも、その1回だけなはずだよ!」


 なるほどなぁ、意外と生まれの国、というか住んでる国からはあんまり出ることは無いのか。この世界の住民たちは。

 特に国家間で険悪ってこともないんだろうけど、それでも滅多に出ない、というか出るあれでもないのかな。

 それこそ出るとしても冒険者とかそういう職業の人が、なのか。普通の人は国から出る必要が無いというか、まぁ普通に聖魔物が強いっていうのも関係はしてそうか。



 とまぁそこからは何事もなく、水人族の国ヴィデュールへとたどり着いた。


 ヴィデュールは他に街とかは無い様で、この王都が唯一の街のようだ。

 街のつくりは聖王国とほとんど同じで、木に洞を掘ったり太い木の枝の上に木の板を敷いたりして、それを家としているようだ。

 偶に普通に地面に建てられている家もあるが、そういうのも店だったりするのだろう。


「ウスヴァートとイズホに訊くが、この世界に居られる残り時間はあとどれくらいだ?」

「残り、は、俺で2時間30もないぐらいだな」

「俺もそんぐらいやな」

「なるほど、じゃあそうだな、急ぎ気味で進んで丁度森を抜けるぐらいだと思うから、そのまま行こう。時間が勿体無いとは言わんが、使えるなら使った方がいいだろうしな」


 流石にゆっくりでもいいとは思うけど、そのゆっくりで時間が足りないとかになったら嫌だしなぁ。

 アセヴィルが言うならそうなんだろうし。


「分かった、あんまりこの国を見ることはできなかったけど、まぁまた来たらいいだけの話だな」

「そっかぁ、折角のヴィデュールだったんだけど、仕方ないね」



 ヴィデュール観光もそこそこに、一直線に西門から出て再び歩きが始まった。

 ここから約2時間30分、ログアウト以外の休憩無しで歩き続けるんだろうな。



 朝のログインとこれまでの戦闘ですでに分かっていたことではあるが、ウァラとムーちゃんが王女と錬金術師とは一切考えられないほどに強い。それこそ俺達に引けを取らないぐらいに。

 ……もっと言えば俺達よりずっと強いかもしれな――いやでもそれはそうか。俺たち異邦人よりはこの世界で暮らしてるし。


 そんな意外そうで意外ではなかったことを考えていると、森の切れ目から光が見えてきた。

 ついでにその手前に巨大な蛇も見えた。あれが本来ならヴィデュールに行く道で倒すエリアボスなんだろうな。


「ウスヴァートでもイズホでも良いが、時間もないだろうしサクッと倒してこい」

「了解」

「じゃあイズホに頼むわ」


 完全にスヴァさんに任せられたけど、まぁいいか。

 時間もないし、サクッと、一撃で倒すとするか。


 聖魔の双剣を構えてそれぞれに霊力を流す。過剰になるだろうけど、わざわざ調整する時間も惜しいな。

 相手の蛇が気付く前に片を付けるとしよう。


 足に力を籠め、一気に蛇に近寄る。

 未だ気付いた様子もなくとぐろを巻き続けている蛇へ、1つ斬撃を飛ばす。

 それによって初めて蛇は俺の事に気が付いたようで、その巨体に見合わないほどの速さで移動し、斬撃を尻尾で受けられた。


 トカゲの尻尾切りならぬ蛇の尻尾切りか。

 長い舌で攻撃をしようとしてくるがその悉くを剣で弾き、着実に近づいていく。この蛇の舌は今のこの剣よりも硬いようで斬ることはできず、弾くしかできないようだ。付与とかでもしかしたら斬れるようになるかもだけど。

 まぁ取り敢えず剣で弾けてる内は大丈夫だな。


 ゆっくりと、しかし素早く蛇に近づき、近いからか蛇の舌での攻撃が止んだ。

 が、代わりに水の術陣が展開され、思いもよらない速度で水の弾が発射されていく。

 完全に自爆に近いそれを剣で斬り付け、1つ大きく足を踏み込んでその身を斬り付ける。


 斬り付けた所から紫色の液体が飛び散り地面を溶かしていく。

 幸い俺の身体には奇跡的に当たらなかったけど、当たっていたらどうなっていたことか。

 蛇は身体が傷付けられたことで術での攻撃も止み、動きも止まった。


 これはチャンス、と剣に籠められた霊力を全て出しきる勢いで蛇の身体を斬り付け、やがて、その身が地面に倒れ込んだ。


 時間にして5分もないか。まぁ倍近いレベルでこれなら良い方、かもっと短くできるな。

 別にタイムアタックでも何でもないから良いんだけど。


「終わったな。時間的には丁度森を出てテントを立てたぐらいでいいところだろうな」

「そのはず」


 という事で、蛇の死骸を回収してから森の端まで歩き、そこでテントを立てて俺とスヴァさんはログアウトした。

 他3人がこれからどうするのかは知らない。

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