87 神前の闘技-1回戦第7試合
第1試合から数えて計6回。順調に試合が消化されていき、俺の番、第7試合となった。
すでに行われた6試合は初めの一撃で終わったことも、逆にそれぞれで有効打を与えることができず上限5分で終了したりもあった。
まだ6回しか試合は行われてないけど、なんとなく、ある程度以上の強さの人は離されてるような気がする。それこそ、上限5分一杯まで試合してたの1回しかなくって、それ以外は数回の攻撃でどちらかが倒れてたから。試合が白熱するぐらいまではもう少しかかるだろうな。
まぁ仕方なくはあるだろう。たまたま弱い人が決勝とかそこらまで行くのも面白くはあると思うけど、それ以上に、強い人同士で戦った方がいいと思うからこういう篩は必要だよな。
前の試合で一部削れた床の修復作業を、控室に展開された光術系のスクリーンで見ながら今か今かと待ちわびて、唐突に、足元に術陣が展開された。
どうやら修復作業が終わったようだ。次元術か何かの転移にて舞台の出入り口に飛ばされた。
反対側には同じように飛ばされたであろう対戦相手がいる。
いつもは俺の肩に常駐しているネモだが、今日は取り敢えず聖王国王城の俺が使わせてもらってる部屋に置いてきた。ルテリアとネモのどっちを召喚するかはその時になってみないと分からないしな。
対戦相手の“ゼル”とやらは見たところ剣士のようだ。術の有無は分からないけど、使ってきたとしてもそんなに脅威ではなさそう。だけど油断はしない様にしよう。
『1回戦第7試合“イズホ”対“ゼル”、双方入場』
目の前にあったバリアのような透明な壁が消えたので、舞台の中心に進んでいく。
審判であるメフィトゥル様を挟み、10メートルぐらいの位置に目印があったのでそこで止まる。
『ではこれより神前の闘技1回戦第7試合、“イズホ”対“ゼル”を始める。互いに礼。……試合開始!』
対戦相手と特に言葉を交わすことは無く唐突に試合が始まり、この試合の初撃はゼルの剣での攻撃となった。
深い踏み込みからの魔力などを纏った様子の無い剣での斬り込みを、軽く後ろに下がりながら聖魔の双水剣を宛がう事により難なく回避し、今度はこちらから、と素早く術陣を展開し剣伝いに魔力を流し術を発動する。
「全ての水を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。全てを貫く、貫通の水の力を。」
――水矢陣――
様子見感覚で放った水の矢に対し、聖纏を発動したようで剣に灰色のオーラが纏わり付き、その状態で数本の矢を斬り飛ばされたが、1本だけ足元を狙った矢が刺さった。
「なるほど。意外とやれるみたいだな」
「意外と……? まぁいいか。
全ての火を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。触れる全てを燃やす、防御の火の力を。」
――火壁陣――
お相手さんは会話をご所望かもしれないが、少し反応するに留めて気にせず時間稼ぎ及び目眩ましとして同じ術を2つ発動する。
相手の目の前2メートルの位置に幅15メートルほどの壁をずらして現出させ、その後ろで次の術を準備する。
もちろん相手もただされるがままなはずもなく、壁を迂回して俺の元まで来ようとするだろう。それを阻止するべく、この一手とする。
重なる術陣が出ないようばらけさせて同じ術陣を5つ展開し、それぞれに均等に魔力を流し込む。
「全ての水を司る神よ。この矮小なる身に力を与えたまえ。ただ大量の水を、叩き付けるだけの力を。」
――水打陣!――
火の壁を使ったことによって相手から俺の姿は見えるはずないが、その逆に俺からも相手の姿を見ることはできない。ではどうやってどこにいるか分からない相手を攻撃するのかと、その答えは単純明快、避ける隙間を作らず攻撃すればいい。
もちろん少なからず隙間はできるだろうし、攻撃対象に当たらなかった水はその結果が確定した瞬間、溶けるように消え去る。はず。
故に、この5つのハンマーの攻撃対象は対戦相手ゼル、でもあるがこのフィールドの地面も対象とした。2つを攻撃対象にできるか確証は無かったけど、何の問題もなく発動したことから大丈夫だろう。
「うぇっ!? 上!? 避け切れるわけないだろっっ!!――――」
壁の向こうから何やら怒ったような声が聞こえてきたが、次の瞬間には水のハンマーが振り下ろされ、水以外の音が消え去った。
ハンマーが崩れ、水が溢れ出したことで火の壁が消化されて相手側が見えるようになったが、残念ながらゼルを見つけることは不可能に近いな。
……というか水が消えないな。いつもならこのくらいで溶けて消えるのに。
やっぱりフィールドの地面は対象にしたら駄目だったか? そのせいだよな、これ。
どこまでが闘技場の地面判定なのかにもよるけど、最悪地下深くまで掘り下げられることになりそう。
『水の神が命ず。この場に溢れ出した全ての水よ、消滅したまえ。』
開始の号令をしてから少し離れたところで見守っていたメフィトゥル様が何やら呟くと、フィールドに溢れかえっていた水が全て消え去った。
そして、水の中に居たと思われるゼルは、この闘技大会特別仕様であろう『Dead』の表示を出して倒れ伏していた。
『神前の闘技1回戦第7試合、勝者イズホ!!』
その宣言と共に観客席からは溢れんばかりの歓声が響いた。




