付、愛
デートの続きと夢パート
2人で飯を食べ終わり、また2人でショッピングモールを回る。
「そういえば、お弁当作ってもらうなら弁当箱とかないと割と迷惑だよね?」
「ん?…いや別に妹のがあるからそれを使おうかなって」
妹…は父親と母親が連れてった…とかではなく、単純にもう亡き少女である。もう過去に大事な人を俺は失っている。
「妹さん?どんな子?」
「どんな…明るくて、人懐っこい感じだったかな…もうたんまり思い出せないや」
「思い出せない?」
「ん、あぁ言ってなかったね、もう居ないんだ」
「居ない…?颯太くんは両親とは別々に住んでるんだよね?両親の方にいる…ってことでは無さそうだね」
「いつだったっけ…中学2年…だったかな、あんまり話した記憶ないや…、でもよく「お兄ちゃんは変わった」的なことは1週間に1回くらいは言ってたな…」
そういえば何故なのだろう。あんまり話した記憶は無いが親もよく「兄離れかしら」とか「もう大人になったのか…反抗期も近いのかもな」とか言ってたがあまり話した記憶が無いのにそんな兄離れと言われるほどだったのか?と子どもながらに疑問に思ったことがある。
妹の死の瞬間は立ち会ってない。
いやそんな話はどうでもいいのだ。過去のことだ精算はしている。
「気にしなくていいよ、昔の事だし」
「まぁ…颯太くんがいいならいいんだけど…」
暗い雰囲気に…いや仕方ないけど
「あんまりこういう雰囲気好きじゃないし、楽しいこと考えない?」
「…そうだね」
「そういえば弁当箱ってどうしてその話?」
「あぁ、お母さんが、じゃあ水曜日はお父さんが休みで弁当を作るの亜美1人だけだしその時に作ってもらえると助かるわって言ってて…、颯太くんが良ければ…だけど」
「あぁいいよ?なら折角だし弁当箱でも買おうか?」
「じゃあお願いしようかな?」
ということで次の目的地も決め、先程とは違うまた別の雑貨屋の方へと向かう。
彼女の足取りはこころなしかいつもより重そうに見えたがあまり深堀する必要もないので俺は何も言わずにそっと横で一緒に歩く。
沈黙が場を支配していたが不思議と居心地は悪いものではなかった。
少し進んだところで彼女が口を開く。
「颯太くんは強いね」
「…そう、かな?」
反応に困ることを言われ、返答が少し変になってしまった。
「そうだよ、私だったらツラい話はしたくないもの」
「……割り切ってるだけだから一概に良いとは言えないけどね、人に興味が無いって言われたら何も言い返すこと出来ないし」
「それでも…すごいと思う」
そういうものかな?と思ったが彼女はそう感じたのだからそうなのだろう。
彰人とかなら
「そうだな!お前は強いやつだ!間違いない!」
とか言いそうだな、と容易に想像出来てしまった。アイツは友人と彼女に甘すぎるからな
ただ正直に言えば、妹とはいえあまり記憶に無いのだ、小学校の頃の記憶なんて高2にもなれば、ほとんどを忘れてしまっているというのはあるのだろうが、あまりにも覚えて無さすぎる。
この喉の奥に引っかかった骨みたいな違和感がとてもムズムズする、がもちろん今は関係の無い話だ。
「あ、着いたね」
「そうだね、入ろっか」
その後、適当に2人で色々話し合いながら、弁当箱もそうだが色々と買ったりした。
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それからある程度回って時間を確認すると、もうかなりいい時間になっていた。
「もうこんなに時間経ったんだね」
「そうだね、あっという間だね」
「もう帰ろっか、電車も、ちょうど来る時間だし」
「そうだね」
と2人並んで駅まで歩く。
「楽しかったね」
「うん、すっごく楽しかった」
手元に感じる荷物の重さは今日の思い出も入っているような感じがした。
「そういえば、颯太くんは、私の事、どう思ってるの?」
「どう…って自分にはもったいない彼女が出来たなー、とは思ってるかな、自分の良さって自分じゃ分からないし」
「私の事、好きになって貰えてる?」
「…好きだよ?そりゃ、まぁラブかライクかはまだわかってないんだけどね…」
正直に言えば、「好き」という感情がどういうタチなのか分からないのでなんとも言えないというトコロはあるが、好きだと思われてるなら嫌われようとは思わないし、好きの反対は嫌いではなく無関心と聞くから、できるだけ関心を持とうとは思ってるけども
「そっか、ごめんね、変なこと聞いて」
「いや、俺はそういうのよくわかんないから、聞いてくれると助かる」
それから他愛も無い話をして帰るのだった。
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夢
「許せない」
「突然だな」
「許せないよ!私の颯太くんなのに!」
「夢の住人がそれ言ってもな」
というかなんだ、自分の中の見知らぬ少女は何故こうも嫉妬している、いや付き合いたいとか言っているのは知ってるがそもそも夢の中の少女と付き合うってなんだよとか思うんだが
「夢だろうが何だろうが関係ないでしょ!?愛に距離も世界も関係ないんだよ!」
「あぁ…そうですか……」
「ちょっと!?引かないで!?」
そもそも千歩という名前以外の何の情報もない少女といきなり付き合うのはおかしい…いやそれ言い始めたら亜美さんもそうだけど、リアルと夢はまた勝手が違うだろ。
「というかそれを言うなら、まずお前は何者なんだよ、ずっと夢に出てくる割に名前しか知らないんだが」
「……そっか」
突然かなり悲しそうな顔をする千歩に少し違和感を覚える、が知らないものは知らない。
「まぁ別に?まだ小学校とか中学校の頃とか私のこといっぱい話した覚えがあるんだけどなぁ?って思っただけだけど」
声の震えは怒りだろうか?
「夢なんて直ぐに忘れるものだろ、本来この会話とかを俺が覚えてる方がおかしいんだよ」
「…ま、いっか。折角だし私のことをしっかり教えてあげるよ」
と教室の教壇に立つ。黒板に向かいチョークで文字を書いていく。
「まず、私は斉藤千歩、可愛い名前でしょ」
「まぁそうだな」
「そして、見ての通り君と同じく高2だね」
「昔からどんどん歳を取ってくのは見てたからなんとも変な感じだな」
「更に、君の幼なじみです」
「幼い頃から夢の中にいるから、とかいう屁理屈だったらそこそこ暴論だけど」
「さて、どうなんでしょうね?」
そこは肯定をしないのか?と思ったけどこういう性格だったかと割り切る。
「まぁそんな可愛い千歩ちゃんですが、もちろん君と付き合いたい以外にも色んな夢があるんだけど」
「はぁ」
「夢の外で君と会いたいな、って」
「え?現実に存在してるの?」
突然の暴露に素直に驚いてしまう。
リアルに存在してるとは…。
「まぁ、君の場所も私の場所も遠いから出会うことはほぼ無理なんだけどね」
突然、現実に落ちる感覚が俺を襲う、彼女は軽く微笑み、
「もし出会ったら…私のお願い、一つだけ聞いて欲しいな」
夢から現実に…落ちる
現実から夢に落ちるなら逆もまた…
余談
「そういえば亜美さんは何が好きなの?」
「何が好きって、颯太くんとか?」
「んっ、ごめん聞き方が悪かったね好きな食べ物とかあったりする?」
「えっ、あぁごめんね、えーっと、何でも好きだけど辛いものが結構好きかな?」
「意外、甘いものじゃないんだ」
「そう?まぁお母さんとお父さんが辛いもの好きでよく食べてたから」